I am happy?5
「なぁ。」
「ん?」
「………したい。」
初めてじゃないって分かってても、その一言にドキッとした。
「………うん。」
先生は長いソファに私を押し倒した。
首筋に落とした唇は、生温かさがあった。
私はふと、アマミを思い出した。
自転車を漕いでいた。
あの時、耳の裏は真っ赤で、きっとあの告白だって、オーケーしないことは分かっていたんだ。
甲高い音が部屋に流れた。
私の携帯の着信音だった。
「ちょっと。ごめん。」
確認すれば、それはアマミからだった。
先生が画面を覗き込む。
不安そうな私の顔を見て、ふぅとため息を漏らした。
そして頬にキスをした。
先生は慣れた手つきでブラウスのボタンを、一つ一つ丁寧に外していった。
まるで、私に電話に出て欲しくないような表情で。
「先生。待って。電話…。」
手を止めて、唇を噛む。
「頼むから………でないで。」
幼い子供が、母親にねだるようだった。
私は断ることは出来なかった。
ブツリと切れる音が、どうしようもない不安と絡み合う。
用は終わったのに、先生は進めようとはしなかった。
「どうして?」
「………お前のこと好きなんだろ。アイツ。」
「えっ?」
「こんなに近くにいるのは俺なのに、なんでアイツのこと考えてるの?」
先生?
「………マコトがどんどん、俺から離れてくみたいでさ。
怖いんだよ………。」
私はぎゅうと先生を抱きしめた。
「好き。ちゃんと先生が好きだよ。
何にも、怖がることなんて、ないよ。」
先生は、ぎゅうと返事を返した。
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