お日さまと闇
お日さまと闇
小さな花がおりました。奇形の花びらをふるせて、葉を伸ばしたり縮めたり、自分の醜さに怯えて地べたを這う不安な弱い花でした。
お日さまがおりました。暖かくて、ほわほわ不思議な匂いでした。自他の不器用さに心を痛め、ときにふと翳りながらも、決して消えない明るい光が心の芯にありました。
その光はまぶしすぎ、しかしぬくもりは憧れで、自分で立てない小さな花はお日さまの方へ伸びたいと、必死に首をもたげておりました。
美しい花がおりました。自分ですっくと立ち上がり、心地よい香りを漂わせる、凛とした花でした。
その美しさと香りに小さな花は恥ずかしく、しかしあんな花になりたいと憧れて、気づかれぬよう息を潜めてそっと見上げておりました。
お日さまと美しい花は愛し合っておりました。お日さまのぬくもりと優しさの本当に大切なところは美しい花のものでした。それを知って、小さな花は、どこかほっとしながらも、すうっと冷えていきました。
闇がおりました。閉じていて、静かにしかし断固として周りを寄せつけない。触れてはいけない何か。
得体のしれないものが潜んでいる。でも小さな花は、優しいと感じました。美しいと感じました。闇の中に、微かな光を見た気がしました。
破滅の予感、恐怖。
小さな花はうすうす感じながら、気づかないふりをして、どんどん魅かれていきました。
愚かな。
花は散りました。種さえも死にました。
花が見たもの。可聴域外の叫び。
凍結された悲しみ、憎悪、悼み、沈黙 …愛、優しさ?
何もかもどうしようもないこと
どうする必要もないということ
誰も何も知りません。
花のその後も、闇のその後も
誰も何も知りません。
お日さまと闇
2019年登録になっていますが、実際はpと同時期に書かれたものです。(pは2015年登録となっていますが、実際はさらに前に書かれたものです。もはや記憶も記録も明確に残っていません)
手放すために、非公開からの供養。