初めてがいっぱい

出先の公園で
凄く良いものを見ました。

一目で心を射たれました。

この光景は
相当な絶景…。

今までの人生でも
十指に入るほどの。

さて、
では説明して参ります。

女の子の双子ちゃんですかね…

四歳、いや五歳かもしれません

この二人の幼な子達が
それぞれ色違いの小さな自転車に

様子から察して
おそらくは
初めてでしょう

【乗る練習】をしていたのですよ。

黄色と桃色の色違い

ヘルメットも其々のカラーリングが
カッコカワイク
とてもお洒落さん

二人には
これまた
それぞれ

お母さんとお父さんが
ひとりづつ
マンツーマンで指導に当たっています

公園には早咲きの河津桜が満開

その下で
なんと仲の良い家族

素晴らしく
微笑ましい光景

さて、
練習の進む中

私の目には
双子ちゃん本人より

むしろ
お父さんお母さんの争いに
発展しているように
見えてきました。

お母さんが連呼していたので
実名も判ってはいますが

こちらでは仮名で
桃色ちゃんと黄色ちゃん、としましょう。



『桃ちゃん!どうして前をちゃんと
見ないのっ!グッとペダルを踏むのっ!
もっと!もっと強く!』

お母さんは
習得に遅れ気味な
桃ちゃんにかなり
エキサイトされているご様子

(キー)ちゃん♪上手い上手い!!
天才だね!ちょっともう乗れてるよぅ♪』

お父さんはご機嫌で
黄ちゃんも得意げです。

その様子をチラ見し
ますます苛立つ
お母さん

貴女がまず
落ち着きましょう

この様子を眺めていた私は
そう言いかけそうになってしまいました。

桃ちゃんだって
そんなに
鬼のような剣幕で捲し立てられては
たとえ乗れそうでも
萎縮してしまいます

そうそう

私自身は双子では無いので
その矜持や内面は判りませんが

こうして見ていると

同じ顔をしていても
けっこう
その性格やコツの掴み方、得意な事が
違うようです。

これは
不思議な話で
ほぼ同じDNAを持つ一卵性双生児で
同じ境遇で育っても
いつの間にか
それぞれの役割を決めてしまい、
そして担い
個性を確立していく、という話を
聞いた事があります。

と、いうより
むしろ
まったく違う家庭で
双子が幼くして別れ
育った場合の方が
かえって
似たような性格になるのだそう。


そうこうしているうちに
黄ちゃんが父の手を離れ
1人で単独走行を始めました。

この様子に
『ほらっ黄ちゃん、先に行っちゃうよっ!』

お母さんは
嫌がる桃ちゃんを
ピンクマシンに強引にのせ
いよいよ
自らはターボエンジンの如く
後ろから
突き押しています。

【マッドマザー・ターボカスタム】

私はそう
名付けました。

まさに
ヒステリックホイール状態

あっ!

その
高出力モンスターエンジンに
ハンドルを支えきれなくなり
制御(コントロール)を失った
桃ちゃんが大転倒

お父さんも
さすがに
ドヤ顔を止め
慌てて
お母さんと桃ちゃんの方へ
駆け寄ってきました。

すっかり
やる気を無くし
大泣きをはじめた桃ちゃんは
倒れた自転車もそのままに

お母さんに向かってダッシュ

泣き叫びながら
お母さんの足に
パンチのラッシュを浴びせていました。

『ももちゃんのじてんしゃあ、よごさないでぇ
きずにしないでぇぇっっ━━━━っ』

そう、
桃ちゃんは
己が転んで痛みを受けるより
むしろ
そのピカピカのピンク自転車が
転倒により汚れる事を
恐れていたのです。

ハッとするような
顔で
桃ちゃんを抱きしめるお父さんと
後悔し、懺悔するような
顔でうつむくお母さん

私はベンチでため息

これだから
夢を失った古い地球人は嫌なのです

時が止まったかのように
佇むこの三人をよそ目に

人知れずコッソリと
いつの間にかスティールし

なぜか

ピンクの自転車に乗った
黄ちゃんが
まるでサメのように
三人を囲いこみ
見せつけるように
グルグルと回っています。

━━━ちょっとダメ!
それ桃ちゃんの自転車!!

思わずそう叫びたく
なりました。

黄ちゃんは
驚愕の表情を見せる桃ちゃんに向け

『ももちゃんの
のりやすいよ♪
こーやってのるのぉ♪』

いやいやいやいや

一見すると
優しさから
そうしているように
見せ掛けてはいますが

黄ちゃんは
双子の姉妹に
アドバイスをしたいわけではなく

ただ
得意になりたいのと

ピンクにも乗ってみたいだけです。

この心理はよく
解ります、

私もそういう子供でしたから。

ただ
それはあまりにも
掟やぶりの行為

桃ちゃんは
この光景に
公園の芝生の上で
のたうちまわり
いよいよ
発狂したかの如く泣き叫んでいます。

しかも
ご丁寧に
黄ちゃん専用
自分のイエローマシンは
物置小屋の影に隠してあります。

代わりに乗られるのを
危惧しての用意周到な行為…。

手にとるように
黄ちゃんの心理が解る

まるで
幼い頃の私を見ているよう…

ピンクシャークの幼女と化した
黄ちゃんは
止めようとした
お父さんを掻い潜り

公園を縦横無尽に走り回っています。


しかしね、
私には
桃ちゃんの考え方も
とても良く解るのです。

ようやく
買って貰えた宝物

可愛く綺麗なピンクの自転車

親としては
自転車なのだから
早く乗せて
その可愛らしい様子を
目にしたいものでしょうが

そんなに
慌てて乗せなくても
良くないですか?

まさか
このご時世に
幼児を自転車で通園させる考えでも
ないでしょうに…

桃ちゃんとしては
乗るより
先ずはじっくりたっぷり
目で楽しみ
語らい
慈しみ
ピンク自転車との関係を深め
互いの信頼関係を築いた上で

大事に大事に

そのうち
乗ろう♪

くらいに
考えていたのかもしれませんよ。

技術、体力ともに
コンディションを整え

来るべき時を迎え
万全の態勢をもって。


私なども
その昔

憧れであった【マッハ500】
H1を手に入れた時

ボロボロであった
車体から
エンジンを下ろし

フレームから手直しして
電装も見直し…

ほぼ一年がかりで
レストアしたマッハを
なかなか
乗る事が出来ませんでした。

ピカピカのH1

週末にカバーを外し

エンジンをかけて
各所をチェック

暖まったところで
軽く吹かし

あの独特の排気音と
もうもうと湧き出る白煙

うーん、なんとフケが良い!

なんとも
ご機嫌です。

そして
エンジンを止め
改めて
細かいところまで
埃を払い

付着したオイルを
徹底的に拭き取り

全体にワックスや各種ケミカルで
お手入れし

その輝くばかりの車体を
うっとりと眺め

充分にエンジンが冷えたのを確認し

けして
走り出すことはなく

またカバーを掛けていました。

だってほら

乗ったりしたら
汚れちゃうし…

まして転倒など
しようものなら…

チャンバーも
海外ワンオフなのです。

壊せば
たぶん
もう
手に入らない。

だから
乗らない。

乗るのは
いずれ
いつか
万全の時に。


こうした経験から
桃ちゃんの気持ちも凄く
良く解るのです。


そして
私は
その公園をあとにしましたが

結局
桃ちゃんは
あのあと
どうしたのでしょうか?

気になります。

あとで
帰りの電車の中で
閃いたのですが

桃ちゃんの自転車、
あれ、
6輪にしてしまっては
どうでしょうかね?

実は

桃ちゃん
黄ちゃん

ピンクマシン、イエローマシン
共に
補助輪がついていました。

あの年齢で
初めての自転車では
それでも
転ぶのでしょう

なので

いっそ
フロントにも補助を設置し
6輪タイプにしてしまっては
どうでしょうか?

黄ちゃんには
もはや
必要ないかもしれませんが

桃ちゃんは
その方が喜ぶかも。

自転車で転んでしまうのなら
リスクを冒し
乗れる技術を身につけるより
その先にあるゴール、
目的の為に手段を変える

けして
ピンクマシンを傷付けることなく

それでいながら

風を切って走れる

どうでしょうか?

6輪ピンク

ちょっと
昔の【ティレル】みたいな
雰囲気ありません?

だめかな。

初めてがいっぱい

読んでくれた皆様、
それに
いいねをくれた方々様々

ありがとうございます。

1日経ったいま
実は
仕事場で交通標語の公募ポスターが
貼り出されていまして

職場の皆は
休憩中
この事で少し盛り上がりを
見せていました。

特賞は結構な賞金があるみたいで。

ホント
日本人は
こういった言葉遊びといいますか
俳句的なものといいますか

こういうのが好きですよね。

『マチさんは?何かない?』

━━私はそういった才能は・・ちょっと。

そう
その場を濁しましたが

すぐ思い浮かんだものを幾つか
こちらに記しておきます。

口には出しませんでしたが。


①気をつけて 目配り 気配り 馬鹿ばかり

②谷底へ カーズ飛び込む 事故の跡

③飛び出すアホウに 轢くアホウ 同じ阿呆でも
クルマが損々♪♪

ねー、
絶対採用されませんよね。

きっと。

性格が出てしまっています…。

ともかく
運転をされる方、
それに
道路を行き交う方々

小さな初心者自転車乗りもいます。

お互い
気をつけましょう。

初めてがいっぱい

加筆しました。

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-24

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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