戦友【ムティ】

Shino Nishikawa

戦友【ムティ】10

毎朝ムティ、佑ジャン、ミツジ、ナツは、馬に乗って遊んでいた。
名目上は、乗馬練習だったが‥。

2月8日の午後4時。

夕日が綺麗だ。
「あの、突然の報告になるけど、俺、明日行くから。」
「ええっ。」
「そんな。」

「嫌ですよぉ。」
佑ジャンは、ムティに、もたれかかった。
「大丈夫だって。生きて戻ってくるから。」
3人は、無言で、ムティを見つめた。

「それって、突撃してですか?不可能ですよ、そんなこと。」
佑ジャンが言うと、ムティは下を向いた。

「落ちるのは、太平洋の真ん中なんですから!」
佑ジャンは言った。

「そうだけど‥、俺は一応、燃料の節約の仕方知ってるから。」
ムティは答えた。
「でも、突撃したら終わるよ。」
ナツが言った。

「わかった、突撃しない。」
ムティは言った。

「行って、しないで戻ってくる。」
「ホントですか?」
「また乗馬できますね!」
佑ジャンは笑った。

「明日の朝も、6時から30分、乗馬練習な。」

朝、佑ジャンは隠し持っていた、イギリス風の乗馬服を着た。
戦争が始まる前、大阪で買ったモノだ。

「どうしたの?それ。」
「ずっと前に、大阪で買ったんだ。」

ムティは、馬に乗り、イギリス風の乗馬ゲームで遊んだ。

「アハハ!」
ムティもなかなかの腕前だが、小柄な佑ジャンが一番うまかった。

お別れの時。
ムティのことがスキだった者達が、一列に並んだ。
3人はまだ後ろにいる。

トウナが言った。
「歌でも歌いますか。」
「歌?なんの歌、歌うの?」
アハハハ!

ミンクが、車椅子に乗せられてきた。

「ミンク、ちゃんとしろ。」
ムティが言った。
「うん‥。」
ミンクの足の痛みは嘘だったが、ミンクはよろよろと立ち上がった。

「手紙。」
「ありがとう。」
ムティは、手紙を開けた。
「コンペイトウだ。」
ムティは、コンペイトウを口に入れた。

「何も書いてないじゃん。」
「裏に書いてある。」
ミンクが言った。
「死ぬなよ、今までありがとう。」

「こちらこそ、今までありがとう。」
「うん。」
ミンクは、ムティを見た。

巧が来て言った。
「お気をつけて。」
ムティは笑った。
「なんなんですか、お気をつけてって。」
「ムティ君、君は戻ってきてもいいから。」
「言われなくても、そうしますよ。」

大西が、花を持ってきた。
ムティが、言った。
「隊長。今までお世話になりました。」
「ムティ君。君は本当に、軍の花だった。」
「そんなことないですよ。」
ムティは笑った。
「じゃ、行ってきます。」
操縦席に乗り込むと、一瞬、空気の中にヤマが見えた気がして、ムティは凍り付いた。

扉を閉めた。
「あっ、なんだかんだ言って、俺達、何もしてないじゃん。」
佑ジャンは言った。
動いていくムティの飛行機を追った。

「おーい、おーい!」
「ムティさんっ。」
ナツも叫び、みんな駆けだした。

「みんな、ちゃんとしなさいよ。」
ムティは、空に飛び立った。

ムティは節約飛行をし、空高くで、敵の軍艦を眺めた後、また戻った。
帰る途中、敵の大型飛行機に出くわしたが、落下飛行をして、免れた。

『無人島があったら、そこで降りればいいんじゃん。』
佑ジャンの言葉を思い出した。
「無人島では、1人では暮らせないかな。」
ムティは、日本を目指して飛んだ。

神戸港で降りた。
神戸の人達は、カミカゼを喜んで迎えた。

2週間後、ムティは軍に戻った。

戦友【ムティ】

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