戦友【一伯】5

Shino Nishikawa 作

戦友 【一伯】5
落下傘訓練の後、19才や二十歳の男達は、一伯を不気味がった。
一伯を見捨てたことに罪悪感を感じた、高選手と日比野が、同じ部屋になり、面倒を見ることになった。

「一伯、大丈夫か?」
高選手は、二段ベッドの二段目から、声をかけた。
「はい。」
「上じゃなくていいか。」
高選手は、聞いた。
日比野は、布団をひいて寝ることになっていた。

一伯はうなずいた。

「代わりたくなったら、いつでも言え。」
高選手は、優しく言った。


「一伯って少し変わってるよな。」
一伯と同じ年の兵士が話していたので、高選手と日比野は切なくなった。

2人に、一伯は笑顔を見せるようになり、一伯の思い出話などを、聞いたりする仲になっていたのだ。

一伯は、ご飯をぽろぽろ落としながら話した。

ふとした話の流れから、落下傘訓練の時、一伯がどこにいたか、高選手は一伯に聞いた。
「船の見えない所です。」
「えっ、そうなの?」
「潜って泳いで、船につかまっていました。」
「そうだったんだ‥。」
「心配したよ。」

「はい。」
一伯は、きょとんとした目で、2人を見た。

別のテーブルでは、若い男達が笑っている。

一伯はうつむいてしまった。
「どうした?」
「別に‥。」
「仲良くしたいなら、俺が頼んでやるぞ。」
一伯は、黙っている。

日比野は、ため息をついて、目をそらし、自分のことを考えた。
高選手と日比野は、未来から、タイムスリップして来ているのだ。

2人で、いろいろなことを話し、キャッチボールしている時に、2人に雷が落ちた。
2人はプロレスラーだ。
高選手も一瞬、未来のことを考えたが、すぐに首をふってやめた。
一伯の顔をのぞきこむと、一伯は後ろを向いて、泣きだしてしまった。

ちなみに、他のテーブルの男達が笑っていた理由は、高選手と日比野と一伯が、父母と息子に見えたからだった。

「おいおい、どうしたんだよ。」
「一伯、大丈夫?」

一伯はぐずぐずと泣いている。
「ダメ。」
一伯は立ち上がり、行ってしまった。

「おいっ。」
高選手は立ち上がったが、日比野はお茶を飲みながら、高選手を小突いた。

1年後。
一伯は、死んだ。

「あ‥。一伯いねぇな。」
午前2時。
高選手が言った。

日比野は、完璧にいびきをかいていたが、ちゃんとした声で答えた。
「トイレ、じゃないですか。」
「そだな。きっとそうだ。」
高選手も右向きになり、眠りについた。

日比野は、ぱっちりと目を開け、天井を見上げた。
悪寒が全身を襲った。
なんと、一伯も、未来から来た人間だったのだ。

一伯は未来の世界で、海外の悪質テロ事件に関わっていた日本人であり、かなりの霊感の持ち主であった。

でも、一伯はとても弱い人間だった。
服毒自殺するために、理科室に行った。
基地は、廃校になった中学校を使っている。
前に調べたら、致死量の薬を調合できる分の薬剤が置いてあったのだ。

でも、怖くなり、うずくまった。

午前3時半。
誰もいないはずの理科室の奥から、1人の男が歩いてきた。

伸である。

伸は伸でも、この時代にいる伸ではなく、未来から来た伸だった。

伸は優れた霊感の持ち主で、タイムスリップは、雷なしでもできる。

伸は物音一つ立てず、近づいたので、伸が一伯の頭に、拳銃を当てるまで、一伯は気づかなかった。

一伯が、伸の目を見るか見ないかの所で、伸は撃った。

何も一伯は覚えていない。

伸も未来に戻った。

しかしまた、未来の一伯を見た。
いまだに、複数の女性へのストーカーを続けている。
テロもまた、起こすかもしれない。

伸は、現実の一伯がしたことを想像すると、夜、眠れなくなる。
それはテロと、女性にしたことだ。

一度、果物ナイフと一緒に寝た時には熟睡できたが、そのことを周りに話しても、誰も理解できず、みんな伸を止めた。

高選手と日比野は、まだ、戦争の時代にいる。

戦友【一伯】5

戦友【一伯】5

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • ミステリー
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-03-19

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