卒業

常識の交差点で
唯一無二になりたかった
憧れの歌手は
人生の意味に気付いていた
良く夢を見ていた
世界が幸せになる様に
誰かの何かになりたかった
あわよくば
僕が僕である理由を知りたかった

幼い頃は真面目に生きた
思春期で道化師に化けた
十八になって悪さを知った
傷付かなければ罪だとも思わなかった

ふと風が吹いた時
忘れていた記憶が過ぎた
居ても立ってもいられなくて
沈んでしまう夕日を
人目も気にせず追い駆けた
それでも近くに行けば行くほど
段々とそれは見えなくなった

掌で踊る前に
何かをしていたかった
真実は永遠に
純粋な心を嘲笑っていた
同じ事を繰り返した
良い事も悪い事さえ
それが自分だと開き直った
結局は
自分自身の利に正当化した

殆どが途中で諦めた
必死に生きる人を馬鹿にした
死ぬ寸前に悟ったふりで
終わりが良ければいいんだと泣いた

今学校を出る時
忘れていく記憶を覚えた
そんな僕を何とかしようと
夜を怯える月が
深く暗い脳裏を照らした
すると大嫌いだった太陽も
隠していた夢を照らし続けた

僕は何を言われても変わらない
お前の様にはなりたくなかった
周りは当たり前に歩いて行く
式の意味さえ考えずに卒業する
僕は何故この世に生まれてきたか
一秒たりとも考えずにはいられなかった
卒業という言葉に卒業させられたくなかった
僕が僕である理由を証明するには
苦手だった計算式が必要だった
近くにそういう人が居ないから
僕以外にそれをする人は居ないから
これが理由なのか 誰が決めるのか
そこで僕は卒業させられた

卒業

卒業

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-18

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