夢の描写

水...海....光..熱...船...一輪車...太陽... 壁にかかったカレンダーとアサヒビールのポスター........

からくりくると景色がまわり、気づけば子供になっていた私は砂浜にたっているのです。
これだけ暑いということはあぁおそらく今は夏なんでしょう、そう思った瞬間から太陽が強く照りつけはじめました。

私はなんでここにいるのでしょう。あたりを見回しても誰もいません。ふらふらとするような熱気の中で私はぐらぐらと倒れそうに歩きだしました。海は青く静まり返り井上陽水の歌を思い出して私はくすくすと笑います。海は死んだようにすましていて私はアハハと笑ってしまいます。

そうしてあるいていくうちに向こうから人がやって来て言いいました。「お嬢ちゃん ここから先はハマの国ですよ」「ハマの国では傘がなければいけないのですよ」「傘がなくては彼に会えないのですよ」困ってしまう私に彼は「アハハ嘘ですよお嬢ちゃんお詫びにこれを」といってりんごをひとつほおるとガラガラ音のする自転車でハマの国のほうに消えてしまいました。するとわたしはまたひとりでもってでたらめな歌を歌いながら踊るように笑いながら歩くきだすのです。

側溝の上を歩く私を無数の目が見上げています。「クスクスアノコッタラキヅイテナイワネ」「アハハソウダネオバカダネ」「クスクス」「アハハハ」あまりにうるさいので側溝の蓋を開くとそこにはぎちぎちと太った男が挟まっていました。「ひとつ言わせてもらえるならね あれなんだよ ぼくはほんとはこんなに太っているわけじゃなくてね あのね ぼくはね....」男はぶつぶつとなにかをつぶやいたかと思うとふぅとひとつ長いためいきをつきました。そしてそれを合図に男のからだは細く煙のようになり溶けて消えてしまったのです。私はひどく恐怖をおぼえて遠く遠くへ走りはじめました。

商店街とビルの通りショッピングモールと見覚えのある知らない街を走り抜ける私を何者かが追いかけはじめています。通りすがりの本屋の少年に声をかけると彼は「気をつけていきなさいよ」とだけいうとまたなにかの作業に戻ってしまいました。あぁなんでこんなに寂しいのでしょう。相変わらず後ろから何かが追いかけてきているというのに。私は止まることもできずに生暖かい涙を流しながらだんだん洞窟のようになってきたショッピングモールの中を駆けていきます。

あぁ疲れた追い付かれてしまうのだろうなと思った瞬間肩をつかまました。振り替えると叔父です。「君なにをしてるんだい?」そして私は思い出しました。私は今ハハと喧嘩をして叔父の家へ泊まりにいく最中であったのですね。安堵した私は叔父とともに叔父の家へ行こうと思いました。気付くとショッピングモールの下の方がだんだん水底に沈んでいきます。「あぁついにここまで縦貫水路が来たんだね」叔父はそうにこにこと言いながらどこかへ歩いていきます。どこへいくのときくと叔父は「ボートを買いにいく。君はどうするんだい?」といいそのままずんずんと先へと行ってしまいました。ショッピングモールの下の方ではどこからか流れてきたボートに人が乗りこみはじめています。途方にくれて座り込む私を人の波がつつみこみ、だんだんと気づけば私は水の中にいるのでした。

水の中は真っ暗で何も見えず上も下もわかりません。あぁ私このままさまよいとけて金魚になってしまうんだなぁ。後ろを覗いてみると大量の赤い熱帯魚とともにクジラのように巨大な鯉のぼりが悠々と泳いでいるのが見え、私はだんだんと意識を失い底へそこへと沈んでいくのです。

気付くと私は水の外にいました。私が沈んでいたのはただの神社の浅い池でしかなく鯉のぼりの姿はもうありません。ただ夢の名残のようにあたりを熱帯魚たちがさまよっています。上の方から若い頃のハハとアニの声がします。私を引き上げると彼らは「これからお祭りだっていうのにどこをふらふらしてたの」と怒りながら私をお祭りへ連れていきます。私もいつのまにかさらに昔の姿にかわっているのでした。

お祭りはとても賑やかですがなにか恐ろしいものが潜んでいる気がして落ち着かないものです。アニが話しかけてきます。「オマエとボクは橋の下に捨てられた子供だったらしいね」「嘘でしょう?そんなことは聞いたことありません」「オマエが聞いたことがないことが嘘ならボクが毎晩蝶になるのも嘘ということになる」「アニは毎晩蝶になっているのですか?」「そんなわけないじゃないか」「ならさっきのはなんなんです?」「ただの例えじゃないか アハハハオマエは冗談が通じないね」「いじわるは嫌いです」「アハハハハ」アニはいつのまにかどこかで買ってきたひょっとこの仮面をかぶっています。ハハは狐の仮面です。あたりを見回すとこのお祭りは仮面をつけた人であふれているのでした。ハハの手を握るとそれは鉄のように固くなっています。とまどう私をよそにハハとアニはどんどん歩いていきます。いつのまにか周りの人もハハとアニと同じ方向へ歩きはじめているのでした。

人の流れのはてになにやらお寺のような建物が見えます。どうやら人はあそこを目指しているようです。お寺の上にはなにやら雲のようなものがうずまいており、そこから時折ヂリリ ヂリリという音とともにかみなりのような緑色のひかりが飛び出しているのです。それを見た私は恐怖を覚えハハをとめようとするのですが、ハハはびくともしません。見上げるとハハの顔はすでに仮面を残してまっ黒にそまり、隣のアニを見てもまた同じなのでした。そうこうしているうちに私はお寺のようなもの(近くでみるとそれは六つの面をもつ門とわかります)までつれてこられてしまいました。手の中のハハのての感覚がだんだんとなくなっていきます。見るとハハの手はだんだんと黒い塵になり、上の渦へと吸い込まれていくのでした。そしてそれを目で追いかけている私はその渦の正体を見てしまったのです。渦の中心から異様に巨大な目でもって私を見下ろす歪んだネズミの顔、それは醜く老い果てた龍の姿なのでした。

圧倒的な存在を前にしただ私は龍の体において唯一ひかり輝く目の玉に魅いっているのでした。龍の目の色は常に変化し続け、あるときは螺鈿細工の踊り子たちまたあるときは流星を捕らえたランタンなど様々な幻影を私に見せるのでした。そこに写る幻影は龍となった人たちの記憶であり、いま私が見ているものは龍の走馬灯なのだ、いつしかそう私は知るのでした。そして最後にその目は私を写したのです。そして龍の目は曇りひびがはいりはじめ、それと同時に龍の中の私もはじけ内側から水と赤い熱帯魚へと変化していくのです。やがてそれは龍の目を砕き私の方へとあふれてくるのでした。薄れていく意識の中で私が見たものは私と同化していく熱帯魚たちと、大きな口をあけ私を飲み込もうとするめしいた龍の姿なのでした。

次に私が目を覚ましたとき、私は妙にごちゃごちゃとしたボートの上にいるのでした。無理やり取り付けられた屋根とそこから吊るされた大量の赤や黄色と色鮮やかな飴細工。隅の方では飴を煮詰めているであろう鍋がグツグツと煮たっているのです。起き上がると足元からしゃりしゃりと音がします。見ると足元にまで飴が敷き詰められているのでした。ふとポケットに違和感を感じて探ってみるとどうやらガラス玉のようです。それを光に透かしてみると幾重にも歪んだ像のなかに私はあの龍の目のなかにいたもう一人の私を見るのでした。「あ、起きたのかい?」背後から急に声がして振り替えると、そこにはいかにも怪しげな風体の男が立っているのでした。「怪しげって君失礼じゃないか。これでも君の命を救った恩人なんだ」そういいながら男は私の持っているガラス玉を覗きこみます。「すごいじゃないかこれは本物の龍の卵だぜ」「その証拠にほら」男はどこからか取り出してきた錐でもってガラス玉をつつきます。するとガラス玉の表面に緑色の稲妻がはじけ、そして同時に私の体の奥でも同時に鈍い痛みが起こるのです。「君これを譲ってくれないか?悪いことはいわない 君の言う値段で買い取ろう」しかし私はこれを売ることができません。なぜならもはや私はこのガラス玉と一体となってしまっているからです。「ねぇきみどうなんだい?」だんだんと男の声がおおいかぶさるような調子を帯びてきました。 「おい飴売りあんまり私の甥をいじめてくれるな」叔父の声に振り替えると彼は恐ろしく趣味の悪いアロハシャツを来てこれまた恐ろしく趣味の悪いバナナボートにのっているのです。そしてそれを見ている内にわたしはめまいのような感覚に教われ、叔父の話しかける言葉を断片的にしか解読することができなくなってきます。そうして私はこの夢の終わりの近いのを知るのでした。

夢の描写

夢の描写

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-15

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