拡声器
香草を捩れ
花瓶をなげうて
恐らくそれが最終の脂粉
衝かれた錨を引き上げよ
船渠と蜜蟻の吻合が瓦礫の根を遅く及ぼし
悪魔と天使の徒競走を遁走してゆく
森と森が螺旋の屑星より今撃ち落とされ
山鳩の輸血車が文法の調律家に蝶の死体を磔けた
焼け焦げた麺麭どもの讃美歌よ
丹い薔薇窓がふたつの厩舎に対立し
鞦韆の運動靴に一匙の砒素の礎を押流す瞬間を
縷々たる幌附の風車建築は押し留めえないだろう
しかし
きみたちは十一輪の花轍こそを撃て
譜面の無いピアニストの花束が
窃視される総合病院の大廻廊より
給水塔より各々の蛇口に
その脈拍を打つ地球流刑地に於いて
間断無い扉の一瞬間を潜れ
顕たれた解剖医の検死鏡を潜れ
無限格子とでもいうべき
青空とは一枚の地図なのだから
拡声器