拡声器

香草を捩れ
  花瓶をなげうて
      恐らくそれが最終の脂粉 
             衝かれた錨を引き上げよ
  船渠と蜜蟻の吻合が瓦礫の根を遅く及ぼし
            悪魔と天使の徒競走を遁走してゆく
                  森と森が螺旋の屑星より今撃ち落とされ 
    山鳩の輸血車が文法の調律家に蝶の死体を磔けた
         焼け焦げた麺麭どもの讃美歌よ 
                  丹い薔薇窓がふたつの厩舎に対立し
  鞦韆の運動靴に一匙の砒素の礎を押流す瞬間を
                     縷々たる幌附の風車建築は押し留めえないだろう
                  しかし
     きみたちは十一輪の花轍こそを撃て
        譜面の無いピアニストの花束が                      
           窃視される総合病院の大廻廊より
             給水塔より各々の蛇口に
                その脈拍を打つ地球流刑地に於いて
            間断無い扉の一瞬間を潜れ 
    顕たれた解剖医の検死鏡を潜れ 
              無限格子とでもいうべき
                       青空とは一枚の地図なのだから

拡声器

拡声器

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-15

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