お題スロット詰め合わせ
決別と誓い
「魔王を討伐してこい」
驚きに顔を上げるとニヤニヤと気持ちの悪い顔で笑う領主・イヴァン=エティンガーの顔が見えた。
イヴァンの娘のニコラ=エディンガーと俺は恋人“だった”。
なぜ過去形なのか、それは数日前に遡る。
ーーお父様が婚約者を決めたから貴方と別れろって…
いきなり彼女にそう告げられた俺は衝撃で頭が真っ白になった。
ただ一つ覚えているのはいつも強気な彼女の泣き顔だった。
それ以来彼女とは会えていない。
そんな出来事が記憶に新しいうちに、下された命令はどう考えても理不尽なものだった。
世界平和という大義名分を盾にし、俺を村から追い出したい、あわよくば道中で魔物に襲われて死んでほしいという思いが透けて見えるものだった。
明日はいよいよ出発の日だ。
剣一本を持ち、そろそろ村を出ようとしたその時、後ろからニコラの声がした。
「間に合ってよかった」
そういって笑った彼女の姿はとても見送りに来たとは思えない服装をしていた。いつものドレス姿ではなく、腰のところにベルトを巻いたワンピース姿だった。
「ニコラ、なんでここに…それにどうしたんだその服装は」
驚きながらも尋ねると
「貴方の冒険についていこうと思って!私の意見を聞かないお父様の元にいるのなんて嫌だもの」
そう言った彼女の顔はあの日見た泣き顔ではなく、見慣れた太陽のような笑顔だった。
「危険な目にあうと思うよ」
「貴方が助けてくれるんでしょう」
「もう村に戻って来れないかもしれないよ」
「いいわよ、こんな村」
「私は貴方と入れるならどこにいても幸せなの!だからつべこべ言わずに連れて行って!!」
はっきりと言い切った彼女を抱きしめた。
「わかった、一緒に行こう。何があっても俺が守るから」
この村を出たら2人は名前もない冒険者になる。
勝利を望まれなかった勇者と愛しいものを愛し続けたお嬢さまとはお別れだ。
そんな気持ちを込めて2人は最後のキスをした。
お題「勝利を望まれていない勇者」「強気なお嬢様」「最後のキス」
マイヒーロー
私は今、危機に陥っていた。
いつものように歩いていただけなのに、不良と思われる人とぶつかってしまったのだ。
それだけだったらまだよかった。
「ご、ごめんなさい…」
「あ゛ぁ゛?…ねぇちゃん可愛い顔してんなぁ。一緒に遊ぼうぜぇ」
…とまぁこんな感じでカツアゲになると思いきやナンパされている、という状況になってしまったのだ。
「や、やめてください…」
こんな時になると自分のこのおどおどした性格が嫌になる。
どうしたらいいのだろう…
そう悩んでいると、急に腕を掴まれた。
振り返るとそこには同じ歳くらいの少年が立っていた
「この子僕と約束してるので」
そう言った少年は私の腕を掴んだまま走り出した。
しばらく走り不良たちの姿が見えなくなった頃、少年が止まった。
「急に走っちゃってごめんなさい。なんか困ってたみたいだったから…」
しゅんとしながらそう言った少年はさっきまでのかっこいい印象とは打って変わって可愛らしい印象だった。
「ありがとうございます。助かりました」
堪え切れなくて笑いながらそう返した私に彼はいじけた顔をした。
「なんで笑ってるんですか…」
「すいません。ヒーローがこんなに可愛いとは思わなくて…」
「…ヒーロー?」
私の言葉に彼は疑問そうな顔をした。
「だって、不良から助けてくれるなんてまさにヒーローじゃないですか!…嫌でしたか?」
「…僕ヒーローになるのが子供の頃からの夢なんで、すごく嬉しいです…!」
本当に嬉しそうな顔をした彼にそう言われて、彼に助けてもらえて良かったと実感した。
彼はまた絡まれそうだから、と言って
私を目的地まで送ってくれた。
お礼にその道中にあったコンビニでアイスを買ってあげた。
彼が選んだアイスが私の好きなアイスと一緒で2人で顔を見合わせて笑った。
一緒に食べるアイスが美味しくて、彼と話すことが楽しくて。
この時間が続けばいいのになぁ
お題「ヒーローになりたい少年」「おどおどしてる女子高生」「コンビニ帰り、アイスを食べながら歩く」
お題スロット詰め合わせ