光の街
ああ、暖かい光だ
・・・・・・・ああ、暖かい光だーーーー
東京駅に降りた時、そう感じた。友達は危ない街とか煩わしい街だなんてカカオトークで言っていたが、私には暖かい光に思えた。そりゃあ私の住んでいた田舎町に比べりゃ断然人はいっぱいだし、車だって。ましてや電車の数なんて本数すら多いことに驚いたし、迷子になったけど・・・でも、暖かい光に変わりはない。
ああ、自己紹介してなかった。私、河口燈。この春長野県の高校を卒業して東京の大学に進学することになって、同時に音楽をやりたくて上京してきた。まあ、具体的にはまだ何も決まってなくてただ勢いもあって来てしまった感じかな。
山手線っていう奴に乗って移動中。なんだか長野の電車と違い、賑やかだ。あっ人もそうなんだけど、車内広告がすごいなって。大学だったり、週刊誌だったり、鉄道会社のお出かけを促す広告だったり。あと液晶テレビに映し出された広告だったり。これが衝撃だったり・・・田舎者・・・はずいね、はずいけど、素直な気持ちだ。初めての場所だもん、驚かないでどうするんだ。周りを見るとみんな都会人ですっていう感じで気取ってんのかな?無関心なのかな?慣れてしまったのか、誰も見てないんだよな吊り広告。見てると言えばスマホ。みんな下向いて無我夢中でいじっている。何見てるんの?私に見せてよ。なんか寂しいというかなんとも言えない気持ちだ。まあ、長野の電車でも変わらずの光景だけど。
流れる街の風景は輝かしい。本当光の街だ。ここから私はこの大都会でいろんな人と出会い、いろんな経験をして、街に飲み込まれていくのだろう。
姉の影響
音楽がやりたくてやりたくてたまらない。そう思ってたのは姉の花菜の影響かもしんない。小学生だった私は中学生ながらバンドを組んで歌っていた花菜にくっついて長野市にあるライブハウスに足を運んでいた。そこで見た花菜は普段と違い、かっこよく、歌声だってそこにいるライブ出場者とは違って勢いがあり、迫力があり、輝いて見えた。
終わった後、ステージ袖に行って
燈「花菜!」
花菜「あっ燈!来てくれてたんだ」
燈「すごい良かったよ」
花菜「ありがとう燈」
メンバーでギターの鮫島満春(なぜかミッキーって呼んでる)も来て
ミッキー「お疲れ様はるちゃん、今日はまた勢いづいて」
花菜「声張り上げすぎました。アハハ」
燈「あっミッキー」
ミッキー「よぉ燈。またギターのレッスンするか?」
燈「やるやる」
ミッキー「よしじゃあやろうぜ」
燈「うん!」
私とミッキーは別室でミッキーのレッスンを受けた。ミッキーは私にとってギターの師匠だ。そして、そのあと花菜の歌のレッスンを受けるのが日課でびしばし鍛えてもらった。遊びながらだがね。
秋葉原駅に着いた。時間はもう夜8時半を過ぎていた。ネオンがここは異常だ。なぜかって電気屋の嵐だから。ここで私はある人と待ち合わせしている。彼氏?えっ?違う違う。まあ男の人ではあるけど。これも音楽に携わる人だから。バンド加入のスカウトなのかな?それとも何か目的があって私に近づいたのだろうか?まあ、今はそんなことはどうでもいい。音楽が出来ればそれに越したことはない。
時間はかなり過ぎた。スマホの画面を見るが、着信やラインはない。
さらに時間は過ぎ、もう帰ろうかと身構えていると走る足音がだんだんだんだん近づいてくるような気がした。
そちらに視線をさ迷わせると膝に手を載せ疲れた様子の男性が一人いた。燈は男性に声をかける
燈「・・・・・あの、もしかして・・・・・」
須藤「お待たせして申し訳ありませんあかり、、さんですよね。はじめまして須藤康太と言います」
燈「あっはじめまして燈と言います。よろしくお願いします」
須藤「お、遅れたのには理由がありまして。ついうっかり寝てしまいまして。約束の時間に遅れてしまいまして大変申し訳ありません」
燈「あっあの・・・謝らないでください。私の方は大丈夫なので」
須藤「申し訳ない」
燈「いえ。あっえっと場所移しますか?」
須藤「ああ、そうだね。そこのファミレスに入ろうか」
頷いてついていく燈。二人は近くのファミレスにはいり、席で話始めた。
須藤は音楽を始めたきっかけ、好きなグループやソロアーティストなどの話。
燈も音楽にひかれたきっかけや好きなアーティスト、今こういうことを目指しているという話を食事を交えながらしていた。いったいどれくらいの時間がたったか、結構話込んで気づけば終電の時間が迫っていた。
須藤「あ、いけないこんな時間だ。燈ちゃんごめんね。送っていくよ」
燈「いえ、漫喫に泊まるので大丈夫ですよ」
須藤「いや、それはいけない。今の東京はかなり危ないから。泊まるならちゃんとしたホテルがいい。僕ともし良ければ、泊まるかい?」
燈「えっ」
須藤「実は家がこの辺なんだ。泊まる所決めてなかったよね?」
燈「は、はい。でも初対面の人の家に行くのは」
須藤「大丈夫。それに僕には妻子がいる。妻しか愛してない」
燈「お、奥さんいらっしゃるんですか?意外かも」
須藤「一応プロフィールには記載してたけど」
燈「はっごめんなさい。詳しく見てなかったです」
須藤「そっか。まあ、いいや。とりあえず今日は遅いから妻と渚は明日紹介するね。行こうか」
椅子から立ちあがり、会計を済ませる。とりあえず、この須藤という人は音楽関係の仕事をしているということと奥さんとお子さんがいるということはわかった。なんていうか素敵な人って思ってしまった。
外に出ると秋葉原の街はすっかり静まっていた。
須藤と燈は静まる秋葉の街を歩く。歩きながらもいろいろ話をした。あのアーティストはなんであんなすごい声が出せるんだとか、SNSでこういうことを呟いて、ちょっとえっというような写真を投稿してるから二人で意見をぶつけたり。私は僕はあの行動は好きとか嫌いとか些細なことを会話しながら神田界隈にある須藤の自宅マンションに到着した。
マンション前に到着した二人。すると気配を感じふとある方角を見ていた。そこにはこちらを寂しそうに見つめる少女の姿が。
少女はなにか物言いたげな動作で燈の方を見ている。だが落ち着かなそうな素振りでその場をそそくさと去って行った。
燈「・・・・・」
須藤「あの子どうしたんだろな」
燈「ええ」
須藤「まあ、中に入ろう」
燈「は、はい」
見ると少女はもう遥か遠くに行ってしまったようだ。なんだか不思議な気持ちになる燈。長野ではそんな不思議な気持ちに駆られることはなかったから、なんか本当なんとも言えない。普通ならこんな夜中にあんな可愛らしい女の子がうろついていたら怪しいヤツって思うのだ。だけど不思議と東京では日常な光景なのかも。わからない本当わからないけど。上京したての素人には。
翌朝、カーテンから差し込む朝日で目覚める燈。そうだ自分は須藤のマンションに来て、それで・・・
するとドア付近からタタタタっと足音がしたかと思ったら勢いよくドアが開いて須藤の娘渚が来て。
燈「ッ!」
渚「歌歌うお姉ちゃんだ!」
喜びながら抱きつく渚
すると聞きつけた須藤が来て渚を燈から離そうとする。
須藤「こら!ダメだぞ渚。燈さんから離れなさい。すみません燈さん」
燈「だ、大丈夫ですよ。お気になさらないでください」
光の街