リセット
完全なる以心伝心なんてありはしない
言葉にしなきゃわからないことだってあるものだ
そう言ったらそのくらい察してよなんて言われて
僕の頬にできた紅葉が落葉する頃には
この部屋はすっかり広くなって
空間を切り裂きたくて叫んだ声は
彼女の耳に空いた穴を通り抜けて
僕の知らないイヤリングが
彼女の耳で艶めかしく輝いていた
苦しみに紛れて放たれた現実は
悲しみに暮れてぼやけて滲んだ
可視化されるくらいの哀しみなんて
さほど僕の中では大きな問題ではない
目に見えない痛みこそが
原因不明の傷みこそが
この身体を 静かに侵食して壊していった
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気付いた時にはもう手遅れで
酸性雨に濡れた銅像のように汚らしく
それでいて美しく きみの足を止めた
虚ろに微笑む僕の眼球は何も見てはいない
冷たく座った僕の身体は何も感じていない
無様に破れた僕の鼓膜は何も拾っていない
呼吸を忘れた僕の鼻腔は何も匂っていない
ただそこに在るだけだった
リセット