リセット

完全なる以心伝心なんてありはしない

言葉にしなきゃわからないことだってあるものだ



そう言ったらそのくらい察してよなんて言われて

僕の頬にできた紅葉が落葉する頃には

この部屋はすっかり広くなって

空間を切り裂きたくて叫んだ声は

彼女の耳に空いた穴を通り抜けて










僕の知らないイヤリングが
彼女の耳で艶めかしく輝いていた










苦しみに紛れて放たれた現実は

悲しみに暮れてぼやけて滲んだ



可視化されるくらいの哀しみなんて

さほど僕の中では大きな問題ではない

目に見えない痛みこそが

原因不明の傷みこそが

この身体を 静かに侵食して壊していった











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気付いた時にはもう手遅れで

酸性雨に濡れた銅像のように汚らしく

それでいて美しく きみの足を止めた





虚ろに微笑む僕の眼球は何も見てはいない
冷たく座った僕の身体は何も感じていない
無様に破れた僕の鼓膜は何も拾っていない
呼吸を忘れた僕の鼻腔は何も匂っていない






ただそこに在るだけだった

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-10

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