流転
答えは一つと誰が決めたのだろう。
あと何度繰り返せば良いのだろう。
生きてる内に、あと何度鬱ぎ込めば良いのだろう。
具体策も無いままに独り歩きする夢には
一体いつになれば追い付くのだろう。
右を見ても左を見ても、同じ顔、同じ服、同じ匂い。
個性は死んだ。
いや、殺された。
いやいや、君が殺したんだよ、その手で。
鏡の中で男が笑う。
君は、僕に真似されてるのか。
はたまた、僕が君に真似されてるのか。
君が求めてる答えは、それと同じさ。
大方、何処ぞの夢見がちな詩唄いに知らぬ間に刷り込まれちまったのさ
馬鹿者め。
そうやって、一切合財の真似事を個性だなんだと勘違いし続ければ良い。
世界が君の為に何をした?
自惚れるのもいい加減に止そうじゃないか。
自分の不幸を誰かのせいにしたい?
君の言う誰かさんも、たった今同じことを考えてるよ。
下ばかり向いていて、首が疲れないかい?
いや何も前だけを向けなんて無責任なことは言わないさ。
君が幸福なら、僕も幸福だって?
馬鹿なこと言わないでくれ。
君と僕は違うんだ。
逆に聞きたいね、何処が同じなのか。
君が右手を挙げれば、僕は左手をあげる
これほど迄に明確な違いを、君は認められないのかい?
先程君は、僕を差して"鏡の中の男"と言ったね。
では答えてくれないか?
どちらが外側で、どちらが内側なのかな?
僕は知っているよ、君が誰か。
けれど、君はと言えばそんな事にさえ気を回せぬ程毒されてしまっているんだよ。
常識と言うなの猛毒に。
はははっ
僕が憎いかい?
奇遇だなぁ、僕も君が憎い。
ガシャッ
君は今右手から血を流した。
僕は左手から血を流す。
ほらね、侵せやしないんだよ。
だって
ボクトキミハチガウノダカラ
・・・
流転
今回は鏡を題材に書きました。
普段、何気なく目にしている景色が語りかけてきたとしたら・・・
もし、自分自身から裏切られたとしたら・・・
自分に対しての自分、それは本当に自分なのか
もしかすると、既に他人なのではないか
そんな事を考えながら書きました。