無線的なエゴ

 人間は普通一般的に、モニター、画面の向うから何をくみ取れるだろう。たとえば古い文明でのことなら、それはしぐさと表情、その人固有の顔や顔つき。みだしなみ。カメラや動画、インターネットにテレビジョン、いくつかの方法でそれを理解しうる。
 しかし、現代は違った。誰もが用意に機械的ボディを手に入れる事のできる昨今。その手軽さからまるでテレビゲームの“アバター”のような感覚で、容姿さえも変えてしまう、前時代的なファッションはとびこえて、もはや皮膚にまで装飾を施す時代だ。そこにきて“個性”さえも、簡単に日々の暮らしで消化されていく、そこで、“個性”とは何か、を考える人々がいた。
 彼らは失われた文明の、国際倫理的に禁忌とされる技術を復活させ、アマチュアの知識と経験で、その技術を発達させた。彼らはその国—―パンドラ―—において、ひときわ際立つ存在だ。
 【このモニターを通して、人は、自分の考えを、脳波を発信できます、しかし受信できるのは、そのための回路を、自分の機械ボディに物理的に導入した場合においてのみですが……】
 実験は成功した、反骨精神の固まりの、アマチュア技術者たちの集まり、通称“モグラ”定住せず、常に国内の、特に治安の悪い区域ををさまよいあるく流浪の民、しかし技術は本物だった。
 【受信の技術は、古代文明のブラックボックスを利用していません、ですから、合法です】
 実験は成功した。しかし、それは小規模な無線電波でしか成立しなかった、なぜならもっと大規模な“ハッキング”を行うまえに、その実験の首謀者たる人物は逮捕されて、今牢獄にいるのだ。その人は、牢獄にてこう語る。
 「とらわれたのは、俺じゃない、あれがあれば、人は古代文明のもっていた、“人間の個性”と“真の豊かさ”を取り戻す事ができるのだ、それは老いないからだや心よりも、重要な事だったんだよ」

無線的なエゴ

無線的なエゴ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-08

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