卒業式
マチミサキ
ああ
卒業式で泣かないと
冷たい人と言われそう
どころではなく
私は
泣く友人達を見て
肩を震わせていました
心の中は大爆笑
駄目なんですよ
ああいった雰囲気
笑ってはいけないと思うと余計に。
今は大人になりましたが
あの頃は
あの年齢の頃は特に駄目
お葬式も鬼門でした、
卒業式…
送辞、答辞って
あるじゃないですか
「私達は、」
「「「「わたしたちはぁ!」」」」
オウムの群れみたいなやつ
申し訳ないですけど
もうあの時点で
我慢の限界です
挙げ句
繋いでいくのも
リズム悪い人がいたり
声が裏返っちゃたり
それと
校長先生が
まあ、よくて三人くらい?
は、一応読む卒業証書
後は
「以下同文!おめでとう!!」
みたいなの。
いやいや
ブロイラーですなぁ
むう、いわば
オウムブロイラー
君達
そんなんで
この先やっていけるのか?
よく
そんな扱いで泣けるな、
って。
それが
本当のところです
一番
覚えているのは
中学の卒業式ですかね
前半は出ていません
屋上で卒業記念の喧嘩に
付き合わされていたので。
私は喧嘩していません
誤解なきよう
流れはよく覚えていませんが
どういう訳か一緒に
連れていかれたんですよね
たしか。
屋上にいたのは
私を含め三人
二人は
三年間を通して小競り合いを繰り返していた
因縁の対決
一番
覚えているのは
屋上の手すりを鞍馬みたいにして
くるんと回り
もはやグロッキーだった
相手にケリを叩き込んだシーン
大技炸裂
もう一度、重ねて言いますが
私ではありません。
それは
私以外のふたりのやりとり。
鞍馬みたいにしたときに
やられていた方も
死力を振り絞って
ここから
突き落としてやれば
大逆転なのに!
そこまで
出来ひんから
このありさまやねん
と
考えていました。
まー、余程の覚悟でなければ
普通はしないと思いますけど。
相手の人生と一緒に
自分も終わりますからね
とてもオススメは出来ません。
真っ当な人生を送りたいなら
やはり
やめておくべき。
でもそれなら
最初から
ケンカなんてしなければいいのに。
あの時
とにかく
私の頭は卒業式どころではなく
それから先の新生活に向け
いっぱいでしたから。
私と同じ高校を
同じ中学から10人以上
受験したのですが
受かったのが
私とあと1人だけだったのですよ
幼なじみ達も
全滅でした
オマエら
なにしてんね~ん
なにしてくれとん
それが感想
軽く言ってはいますが
これは本当に悔しかった。
優越感など
微塵も感じませんでした。
ただでさえ
県外校なのに
ウチひとりやんけ
あと1人はまったく
喋った事のない子でしたので。
なんでちゃんと
勉強しないのさ、と。
皆、頭の悪い連中では無かったので
今でも
真剣味が足りなかったとしか
思えない
本番で
あがっちゃったのかなぁ
挙げ句
合格通知の時に
先生に烈火の如く怒られてしまいましたし…
と、いうのは
私はうっかり
聞き漏らしてしまったのですが
この高校を受けた全生徒達が
合格発表の際に
と、ある小部屋に集められ
まずは廊下に待機し
教師から
ひとりづつ
部屋に呼ばれ
合否を告げられるシステムだったのです
事前の話をよく聞いていなかった私は
カバンを持たずに
小部屋に入ってしまい
ファイナルアンサー的に
『・・・・、おめでとう!合格だ!』
そこまでは良かったものの
『オマエ、…カバンはっ、?!』
ここで先生大激怒です
『不合格だった者の気持ちを考えろ!バカッ!』
なにか
受かった者にのみ渡される書類があったらしく
それを隠す為の入れ物を用意しておくよう
通告があったのですって。
いやいや
バカは・・
などと言おうものなら
さらに
油を注いでしまう…
冗談として場を取り繕ろう…
にも
とても
言えない凄い剣幕でした。
そして
私は
その書類を全員の通告が終わったあと
一度校門を出てから
取りにくるよう
厳しく伝えられ
たのしい筈の合格も台無し気分でした。
ここで
小部屋&廊下シーンに戻ると
『どうだった?!どうだった!?』
と、いうお約束的な
やりとりが
友人達により
あるわけですが
ただひとり
私は
何も持たずして入り
そして
また
何も持たずして出てきた挙げ句
悲しげな笑みを浮かべ
無言を貫いたので
友人一同は
何を言っていいのか
まったく
わからない不可思議な空気となり
うーん、でも
きっと
聞いてはいけない結果だったのだろうナ…、
それまでの
『ひみつ♪ひみつゥ』
的なものは鎮火され
かなり
しんみりとした感じに
なってしまいました。
あれだけ
よくよく
注意された筈の入れ物さえ
わすれる
この娘が受かれる筈もない…
それか
最初から
自己採点などで
判っていたか…
だから何も持たずに行ったのだ…
きっと
そんなところですかね
そして
私は
いまだ
発表を控えている
不合格メンバーから
励ましの言葉を執拗にきかされ続け
とてもやりきれなくなり
逃げるように
あまり
人のこないトイレに
駆け込み
全員
下校するのを
ただ待っていたのですが
不合格となってしまった幼なじみの数人が
私のこの行動パターンを
読んでいたらしく
しつこく
トイレから出てくるのを
延々と急かすことなく
待ってくれていたという…。
本当に悪い事をしました。
でも
この時の友人達とは
未だに何人か付き合いがあり
みんな
幸福になっていますよ。
もし
こちらをお読み頂いている方の中に
残念ながら
健闘実らず
試験に合格出来なかった方が
居られましたら
何も悲観する事はないです。
人間の未来なんて
その先でどう発展していくのかなど
まったく判りませんからね!
ちなみに
私以外のもう1人の子は
1学期の
三ヶ月経つか経たないかで
早々と学校を辞めてしまいました。
あれ?
たしか
夏休みまでは居たのかな?
よく覚えていませんが。
かなり
顔立ちの整った子だったので
芸能界にスカウトされただの
モデルになっただのとかの
噂は聞きましたが
入学以降も
ほとんど話さなかったので
真相は私も知りません。
お互いに
最初の数日は
ひとりきりで
昼食をとるのもなんだな…
といった感じで
何回か
同席したのですが
私は
早々に
学園内でも
内部生としては一部で有名であったという
かなりパンチの効いた
【ケッコーキツイトリオ】
に取り込まれてしまったので
彼女としては
そこには
入りたくなかったらしく
バラバラになってしまいました。
お互い
もともとあまり
気の合う同士でもありませんでしたから。
このトリオに
外部生であり
私を含む新入学のふたり
のち
ひとり加え
最終的に6人のグループとして
【魁!!女塾】
と呼ばれるものへと
変貌を遂げることになるとは
まだ
想像さえしていない
そんな桜の季節の出来事でした。
卒業式
その後のことは
小説
【いつつの鐘】
へと繋がっていきます。