多久さんの事件簿【マロの涙編】18

Shino Nishikawa

多久さんの事件簿【マロの涙編】18
「冗談じゃないぜ‥。」
マロは、食品スーパーの魚売り場の前で立ち止まった。
「小杉さんじゃねぇか。」


この事件は、赤木之道が、プロボーリングの世界から、退くことになったきっかけの事件である‥。

「どうしたの‥?」
偶然通りかかった、ナツが話しかけた。
「いや、知り合いがいて‥。」
「そうなんだ、こんにちは。」
何も知らないナツは、挨拶をした。

マロはその場を離れた。

「こんにちは。」
現れたのは、多久だ。
「ああ‥。なんか、久しぶりだな。最近、お前と顔を合わせてなかったから。」
「時間が、合わないですから‥。家は同じでも、仕事が違うので。」
「そうだな。なんで、ここにいるの?」
「買い出しです。夕食は、それぞれでって、決まりじゃないですか。」
「でも、このスーパー来ないって言ってたじゃん。」

「実は、先ほど、近くの病院で、脳の検査を受けていたんですよ。今までもたびたび、受けていたのですが、今回のは精密検査で、僕の脳に、特別な周波が見つかりました。やはり僕は、霊能力者のようです。」
「そうか。」

『気持ち悪い。』
マロは後ろを向いた。

「僕が、小杉さんに、ひと声かけてきますね。」
そう言って、多久は駆けだした。
「え、ちょっと。」

「小杉さんっ。」
魚を並べていた小杉さんが、振り向いた。
「あの人のチームメイト、どこに隠しましたか?」
その場にいたみんなが凍り付いた。



山口章大と出会ったのは、2月の末の出来事だ。
少し変わった男だった。
ノリが、ボーリングクラブにたどり着くと、リンチルが一人で練習をしていた。
「早いんだね。」
「うん。新しいシューズを買ったんだ。」
「そうなんだ。」
リンチルは座り、ドーナツを食べだした。

「んちわっす。」
章大が入ってきた。
「あっ、新人さんですか?噂に聞いてました。」
リンチルが言った。

「はい、今日から、お世話になります。山口章大(ショウダイ)です。
よろしくお願いします。」

「うん‥。」

マロも来て、昼頃から、ノリとマロとリンチルと章大で練習をした。
章大はトロくさい。3人からしてみれば、まるで小学生のようだった。

大切な試合の日。
団体のメンバーに選ばれないと思われたが、章大は選ばれた。
3人は右利きだが、左でも完璧に出来る。
章大は左の練習をしていなかった。

章大は試合の前日に、左腕の練習を始めた。
「ねぇ、左はまたにすれば?使わないでしょ?」
ノリは言った。
本当は、マロもリンチルも、ノリも、大事な試合では必ず、左を使う。
それは、プロとしてのパフォーマンスで、当然の事だった。

それを、章大は知らないと思った。

でも違った。
「俺、昨日、録画を見返したんですよ。先輩達、左を使っているじゃないですか?」
「いや、今回は使わないつもりだよ。」
マロも言ったが、章大は練習をやめなかった。

章大は全然ダメだった。

「なぜ、章大さんは死んだのか、知りたいと思いませんか?」
多久はにこやかにマロに聞いた。
「いや、いいよ。死んだなんて、まだ分からないじゃないですか!!」

「いや、死にましたよ。‥あの、兄弟なのになぜ、僕に敬語を?」
「それはあなたが先に使っているからですよ。」
マロは泣いた。


真実はこうだ。

山ノ内日々子はかなり可愛い。
黒髪で、真っ白な肌。
章大は日々子の虜だった。

日々子は女子短大に通っていて、平凡な子と思われた。
もしも日々子と一緒になれるなら、章大は掃除屋だってペンキ屋だって、なんだってよかった。

でも日々子は違った。
日々子は、中学生の時に、劇に出ていた。
章大は劇と言ったが、本当は違う。日々子が出たのは、映画である。
二十歳になった日々子は、仕事を再開した。
「なんで‥。」
初めてのキスを、日々子と交わした章大は絶望した。

章大は昔、ボーリングをやった事を思い出した。
日々子のために本気になれば、プロになる事が出来るであろう。
章大は、華やかな世界にいる日々子に追いつくために、
危ない薬に手を出していた。

少しだけ、章大は日々子と離れた。

久しぶりに日々子に会いに行くと、日々子は少し大きなマンションに越していて、男数名をマンションに連れ込んでいた。

日々子の体は欠点一つない。
何百万もかけて、エステに通っているし、強い薬を飲んでいるからだ。
男数名に日々子は抱かれた。

ある日、日々子は具合が悪かった。
コン
「大丈夫?」
男は聞いた。
「うん。」
「今日はやめよう。」
「うん‥。」

日々子は止めたくなかった。

「それが一番気持ちいいの。」

「1人で我慢できる?挟まれた方が、リラックスできるの。」
「え?」

日々子はスタバで突然、知らない人に向かって語りだした。
麻薬のせいである。

でも日々子は、我に返った。
そして恥ずかしくなって、赤くなった。

でも、神様は、日々子を助けた。

「大丈夫?」
帰り道、日々子の手を引いたのは、章大である。
「ショウちゃん。」
「うん、ねぇ、大丈夫?」

「うん‥。」
日々子は章大の優しさに触れ、男数名と縁を切った。

でも、日々子は、章大との初々しい物だけで、我慢できるはずがなかった。

麻薬のせいである。全部、麻薬のせい‥。


「ショウちゃん、ご飯作ってくれる?」
日々子は、ベッドで章大に頼んだ。

「うん。」
章大は喜んで、ベッドから出た。

30分後。
「日々子、できたよ。」
章大はフライパンを持って、日々子の寝室に行った。

日々子は動かない。
章大が日々子の布団をめくりあげると、日々子は大便をしてしまっていた。

「ええ!!」

章大は部屋から飛び出した。

章大は意味が分からなくなり、日々子の薬を飲んだ。
その後の行為は不適切だった。

意味が分からなくなり、宇宙に行った章大は、日々子の尻を拭いた。

拭いたりなめたりした。

その後も、麻薬でイカレタ章大と日々子は、そのような行為を繰り返した。

数か月後、章大は、章大の事がスキで、日々子が嫌っていた女と、章大の男友達を呼んだ。
自分が、刺殺したばかりの日々子を見せた。

「ええっ!」

残酷な光景なのに、女の目には、章大の姿がかっこよく思えた。

章大はいい男だった。

章大の男友達は、朝一で、警察に行ったが、日々子のマンションからは、日々子の遺体は消え、なんの痕跡もなかった。

このイリュージョンを、一体どうやって‥?

簡単な事だ。
部屋をずらしてあった。
隣人に現金1億円を渡したのだ。
日々子の遺産である。

「さよなら、日々子。」
日々子の事がスキだった、小杉に殺されるさい、
章大が最後に言った言葉がこれだ。

小杉は、日々子を抱いた事は無い。
なのに、スキだった。
愛していたわけではないのに、なぜ‥?

力をありあましていた。それだけの事だ。

ボキッボキッ
章大はボキボキにされ、箱につめられた。
ウイーン、ウイーン
木の箱には、ねじが止められた。

でも、章大は生きていたのだった。

章大は詩をよんだ。

「どこで会った?
さよならはいつ?
どこでいかれた?
また会えるのはいつ?
好きだった?
愛していた?
愛という言葉を、君の口から聞いていない。」

日々子は愛なんてない。

「おばあちゃん、もう死んでね。」
日々子は笑顔で、よくしてくれたおばあちゃんに、何度も言った。


「もしもあの時、出会わなければ。
好きにならなければ。」

もしも‥。
だけど、もしも‥。

日々子以外に、好きな物があれば‥。

あの時、もしも‥。

もしも‥。

でも、章大の世界に、日々子以外、美しい物は見えなかった。

何も‥。
何一つない。

きっとそうだ。
そうにちがいない。

日々子以外、美しい物なんて、
僕が生きていない世界に、見せないでくれ。

あるなら、なぜ、僕に見せなかった?


それはなぜです、神様。

いるなら、なぜ、あの人には渡して、僕には渡さない。

多久さんの事件簿【マロの涙編】18

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