僕はホストだ (1:1)

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■キャスト
葵 あおい(女) 
冬馬 とうま(男)

■本編

葵:いらっしゃいませ、ようこそホストクラブ ホワイトローズへ。それではお席にご案内いたします。お荷物はお預かりしておきますね。へえ、素敵な鞄ですね、これ新作ですよね? すごくかわいいなあ! ええ、今日の服にとてもよく似合ってます! 申し遅れました僕はホストの葵(あおい)と申します。今日始めての出勤なのでよろしくお願いします。 え、指名? 光栄です! ……では、今宵だけは僕のお姫様になっていただけますか?

冬馬:葵……ちょっといいか?

葵:はい、冬馬(とうま)先輩! ごめんね、ちょっと行って来るね。

冬馬:お前、どういうつもりだ?

葵:え、僕の接客なにか問題ありましたか? 容姿を褒めるのはよくないって聞いたから持ち物を褒めてみたんですが。それとも、席に案内するタイミング早かったですか? あ、もしかして、笑顔がぎこちなかったですか? 確かに今日初出勤でちょっと緊張してたかも……。

冬馬:……そうじゃない! お前、そもそも、ホストじゃないだろ!

葵:はい、残念ながら面接に落ちました! でも、心はホストです! お客様を心からおもてなしして、ひと時の癒しを与えたいって気持ちに変わりはありません! 大丈夫です、お給料はいりませんから!

冬馬:……そうじゃない! 面接落ちた理由、わかってるだろ?

葵:わかってます! 面接に一分遅刻したからですよね? いや、でもあれには理由があるんです、駅で迷子になってるおばあさんがいて……

冬馬:そうじゃない! お前が「女」だからだ!

葵:え、そこ?

冬馬:そうだ! さらに言うなら、お前……俺の「彼女」だろ!

葵:うん、そうだよ。それがどうしたの?

冬馬:どうしたのってあのなあ……

葵:ダメですよ先輩。店にそういうプライベートな関係を持ち込んじゃ。

冬馬:いや! 持ち込んでるのはお前だから! 俺じゃないから! だいたいお前はいつも……ってあれ、葵?

葵:(いつのまにか席にいる)そうなんだ、辛かったね。え、そんなことないよ、よく頑張ってる。僕の前では強がらなくて良いよ。泣きたいときはいつでもきて。大丈夫、こうすれば誰にも見えない……

冬馬:(店内につき小声)あーーーおーーーいーーーー!!! (せきばらい)葵、ちょっといいか?

葵:あ、ごめん、先輩に呼ばれちゃった。うん、すぐ戻ってくるから。そうだ、この時計持っててくれる?

冬馬:ホストの常套(じょうとう)手段を使うな! どこで覚えたそんなの!

葵:え? 冬馬が酔っ払うと色々仕事のこと話すじゃん? あれ全部メモって勉強した。

冬馬:え、まじ? 俺、彼女の前ではホストの話しない主義なのに、酔うとしゃべっちゃうんだ、しらなかった。 ……ってそうじゃなくて! 勝手に接客するな! だいたい、なんでホストになりたいんだ!

葵:だって、冬馬いつも、女の人からもらったプレゼントとか手紙とか持って帰ってくるじゃない? ホストの雑誌にも載ったりしてさ、ファンクラブまであるっていうから……ずるいなあって

冬馬:それは……しかたないだろ、仕事なんだから。本命はお前だけだ……って言っても安っぽいか。ごめん、気が付かなくて、俺、お前のことそんなに不安にさせてたんだな。

葵:……本当にずるいよ! 僕だって女の子にチヤホヤされたい! 

冬馬:ちょっとまて、どうしてそうなる! ……葵、一つ確認するが、お前、俺のこと好きじゃなかったのか?

葵:え、好きだよ? あたりまえじゃん彼氏なんだから。もう、そんなこと言わせないでよ! 恥ずかしいから!

冬馬:……はは、かわいいやつ。ってそうじゃなくて! じゃあなんで!?

葵:なんでってなんで? 恋人は冬馬だけだよ、でも、それとは別にモテたいって願望は誰でもあるじゃない?

冬馬:……うん、まあ

葵:なのに、冬馬だけモテて、僕はモテないなんて、そんなのおかしいよ! だから、僕だってホストになりたい!

冬馬:ちょっとまて混乱したきたぞ。男にモテたいじゃなくて?

葵:え? 冬馬以外の男になんて興味ないよ。「女の子」にモテたいの!

冬馬:……いや、もういいや、葵がそうしたいなら、それはもういい。でも、ごめんな、ここは男性ホストに癒されたい女性がくる場所で……って、葵?

葵:(いつの間にか席にいる)なんだよやきもちか、かわいいやつ。安心しろ、俺はお前だけだよ。それとも俺じゃだめか? 赤くなるなよ、可愛すぎて抱きしめたくなるだろ……。

冬馬:(店内のため小声)あーーーおーーーーいーーーー!!!! (せきばらい)葵、ちょっといいか?

葵:あ、ごめんね、先輩に呼ばれたからいかないと。ほら、この時計、預かってて。

冬馬:時計を複数持つな! 高等テクを使うな! 

葵:え、だって冬馬そうやってるって……

冬馬:俺はホスト! お前は女の子! そして俺の彼女!

葵:そうだけど! 僕だってホストになりたいのに。疲れている女の子を癒したいのに!

冬馬:……はあ、わかったよ。そんなにやりたいなら知り合いの男装カフェ紹介してやるから、それで我慢しろ。

葵:え、そんなのあるの?

冬馬:……お前、女性を癒すイコールホストクラブだと思ってるだろ? あるよ、男装した女の子が女の子を接客するカフェ。だからここで勝手に接客するな。客にも他のホストにも迷惑だから。 いいな!?

葵:うん、わかった! やっぱり冬馬ってやさしい! イケメン! 好き!

冬馬:……そ、そうか? なんか久しぶりに葵にそう言われた気がする。ごめんな、最近仕事ばっかりでかまってやれなくて。そうだ、今日は仕事早く終われそうだから焼き肉でも行くか?

葵:あ、ごめん、今日は無理―!

冬馬:そ、そっか、まあ急だったしな。じゃあ今度……

葵:お客さんからアフターの予約入ってるから。

冬馬:は?

葵:あ、ピンドン入ったって、行って来る!!

冬馬:俺より売れるんじゃねーー!!!!

僕はホストだ (1:1)

僕はホストだ (1:1)

葵ちゃんシリーズ 上演時間10分

  • 小説
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  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-06

CC BY-NC-ND
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