自撮り

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自撮り:スマホで自分を撮影し、ネットで公開する事。

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『人が訪ねてくる』
思って数秒後、遮光カーテンの閉じられた暗く狭い1Kに、チャイムが鳴り響いた。

新聞か宗教の勧誘だろうか。
布団に顔を潜り込ませ、居留守を決め込む事にする。

金属が擦れる音。
バネが弾け、ロックが外れる。
ドアの隙間を埋めるゴムの剥がれる鈍い音がし、外気が入り込む。

足音、息づかい。
中を窺っている気配がする。

体を起こし、カーテンを開けて採光すると、そこには良く見知った人が立っていた。

「おは!来ちゃった」

この人には鍵を渡してあったのだった。

夢見が悪く、不安を覚え、唐突に様子を見に来たくなったのだと言う。新幹線で120分かかる距離。

布団を畳み空間を作る。折りたたみ式の簡易テーブルをセットする。お湯を沸かしてコーヒーを淹れる。寝癖も直さぬまま、二人でしばし談笑する。

朝の犬の散歩は家族に任せて来たのだという。犬は歳を取ってきて、散歩で同じ場所ばかりぐるぐる回るらしい。

犬と私、心配の種が2つもあって、この人も大変だなと思う。
毎月の動物病院の費用は大丈夫だろうか。引っ越す時に「犬用に。」と一定額を渡しておいてはいたが。
今の私に、犬用に渡す金銭的余裕はない。申し訳なさで消えてしまいたくなる。

会社は続けている態で話を続けた。
言わずとも察してくれたようで、向こうもそれに合わせてくれた。
見抜きながらも合わせてくれた事に、こちらが気づいた事も、向こうは当然わかっており。
指摘しない気づかいに感謝する気持ちも、漏れなく伝わったようだった。

夕飯を奢ってもらい、少なくなっていた冷蔵庫のストックの補充まで付き合って貰い、駅まで見送ってお別れした。

一人、アパートに戻る。
ポストを開けると、国保と年金と住民税と家賃と電気代と水道代とガス代の未納分の督促状に紛れて、さっき別れた人からの手紙と1万円分のQUOカードが入っていた。

部屋に戻り、手紙を読んでひとしきり泣いたあと、スマホを手に取り、SNOWを起動した。

画面に顔が写る。鏡とは左右逆の動きをするので、表情を作るのに骨が折れる。

なにこれウケるw
自撮りした写真に、人物が特定できない程度に加工を施し、Twitterにアップする。

反応はすぐに来た。
いいね、いいね、いいね…
何がいいんだか

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Twitterの、日常の一コマ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-03-03

Copyrighted
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