SNR Chapter1 ~ 道標(みちしるべ) ~ Vol.4 「動き出した時間」
俺は大木さんから謎の手紙を受け取った開封し、手紙を読み始めようとしていた。しかし、それに気付いた藤田が俺のその行為に対して開口一番俺に物申してきた。
「ちょっと待とうよ。この手紙を読む前にやはり一度、事務所に持ち帰るべきじゃないのか? 俺達だけで判断する事もないだろう?」
冷静に藤田はそう言った。
その言動に対しては特に違和感も無くもっともな意見だと俺は思った。
「とりあえず~開けてみようよ~! それからで良いんじゃない~?」
とすかさず滝田さんも会話に混ざって来る。
確かに二人の意見は最もだが正直俺は迷っているのも事実。
俺は大木さんを探したい。これで何か手がかりがつかめるかもしれない。しかし、一方では何か危険を察知したのか俺の中で警鐘が鳴り響いている。
俺はジレンマと必死に戦った。そして散々悩んだ末に結論は出た。
「開けます。とりあえず報告は後回しでいいと思います。俺達でやるだけやりましょう!」
滝田さんは待ってましたとばかりに俺にペーパーナイフを要求し、そして見事な手つきで封筒を開いていった。そして懐からビニール手袋を出して両手につけた。それが探偵としての初歩中の初歩であるという事は俺は後に知る事になるのだが・・・俺は面くらった表情をしてしまう。
そして、中からは便箋が二枚と何かわけのわからない字で殴り書きされた古びたように見える紙が出てきた。
その手紙は次のように書かれていた。
「よう! どうだ元気しているか?っていってもそんなわけないか。この手紙を読んでいる頃には俺はこのアパートにいないだろう。何故かと言うと・・・俺はあるコンピュータープログラムを開発して会社から追われているからだ。それはいわゆるハッキングプログラムなわけだが・・・特殊なのが足跡が残らない仕組みになっている事だ。最初はこんなの会社からの命令で作っていた。
しかし、俺はこのプログラムにAI(人工知能)を組み込み自我を持たせることに成功した。そのプログラムは色々な情報を収集し自己成長していく。元々の俺のやっている仕事は裏のプログラム開発が専門だからな、会社は単にハッキングソフトを作らせようとしていたのだろう。しかし、そのソフトは暴走してしまった。不完全な自我を与えてしまったために、子供じみた行動をするよになったからだ。会社はこのAIを手なずけて自分たちに有利に出来るように組替えるつもりだ。
しかし、そうはさせない。自分で作った物だからな。だから俺は姿を隠す事にしたんだ。現在、俺はあるところに潜伏している。その居場所が書かれているのが汚いその紙だ。
ここに記しても良かったんだが読んでいるのが皇とは限らないからな。だからあえてそうさせてもらった。もしこれを読んでいるのが皇だったら、なんでこの手紙が自分の手にあるのか不思議がるだろう。
それはこのアパートで俺に接してくれたのが皇だけだったからだ。俺は普段から大きな音を出している。普通の奴なら見てみぬふりをするところをあいつは俺に文句を言いに来た。珍しい事だ。だから信用することにした。たったそれだけで?と思うかもしれないが俺にとってはそれは嬉しかった。今まで人と接する事もあまり無く、自分の技術だけが取り柄でここまで来てはみたものの・・・空しさを感じてた矢先の出来事だったからだ。一応、これで終わるが最後にこれを読んでいるのが皇であることを祈り、俺は筆を置く事とする。」
ここで文章は終わっていた。こんな風に思われているなんて考えてもなかったことだ。ただ単に煙たがられているだけだと思っていた。俺は一瞬、放心状態に陥っていたようだ。藤田に肩をゆすられて、ふいに我に返る。
そして次に別紙を見ることにした。なんとして手がかりを掴むんだという思いは募っていたものの、さっぱり意味がわからない。内容はこうだった。
「俺はアルファベットを好んでいる。仕事柄かもしれないが。ちなみに、アルファベットは全部で26(a~zまで)ある。しかし、その鍵となるのは最初に窓を開いた文字に他ならないが、それだけでは意味を成さないだろう。意味を成す時は合体した時だ。そして改めて26の文字を見つめた時に、文字の中に何個の規則性(同属性)が存在するのかを見極めろ。それがわかった時に俺の居場所はわかるだろう。」
1-4@2-3-5
何がなんだかわからない。
とりあえず考えてみる事にする。
何か文章に手がかりでもあるのだろうか?と考えている時、滝田さんの目がキラリと怪しく光ったように見えた。
「なんだ、そんなに難しくないみたいね。」-と滝田さんが言う。
「わかったんですか?なら教えてくださいよ。」-とふざけたように言う。
「だめよ。これくらい解けなきゃ。自分で考えること。まあ、あえて言うなら、ヒントはアルファベット、26、窓、合体、属性かな?」
どうする・・・さっぱりわからないぞ。
とりあえず俺は出来る限りの事をしようと思った。
そう思った俺の隣で藤田もわからないらしくウンウン唸っていた。
いつもは冷静っぽい藤田のこのような姿を見る事になろうとは。
それは世にも不思議な滑稽な姿のように俺は思えてならなかったんだ。
SNR Chapter1 ~ 道標(みちしるべ) ~ Vol.4 「動き出した時間」