SRN Chapter1 ~ 道標(みちしるべ) ~ Vol.2 「決断」

俺の連れてこられた場所は、俺の住んでいる市内の郊外にある雑居ビルの一室だった。

昨夜はあまりの急な出来事だったため、俺は疲れていたのだろうここにいつのまにやら一晩お世話になる事になったようで、今目を覚ました所だった。

そこは何か粉臭い一室で、煙草の臭いが充満していた。見た限り、人はいないようだった。しかし、事務所らしい所のようでパソコンや電話、書類棚が置いてあり綺麗に整理整頓されて並べてある。

なぜ俺はここにいるのだろうか・・・・・? 不意に俺は茫然と考えてしまう。

「そうだ! 何がなんだかわからないうちにここに来たんだ!」

ハッと我に帰った俺はもう一度頭の中を整理してみる。その傍らではイソイソと藤田・滝田の二人は何やら自分の机らしい所で書類整理をしているようだった。他にも数人まだ寝ている男性がいたようだった。

俺はその光景を見ながらボーっとしていると不意に奥のドアが開いた。

そして髭面のムサイ(!?)オヤジが俺の目の前に現れた。

「やっと起きたか~どうだ、よく眠れたか?」-ふてぶてしい態度だな。

「まあ、ぼちぼちですね」-投げやりな言葉を返す。

まったく何で俺がこんな目に・・・・周りの人間に声をかけて、オヤジは朝食の準備に取り掛かった。

「あの・・・聞きたい事があるんですが・・・」

俺の発言は聞こえていないのか無視されているのかはわからないが、他の人もオヤジもマイペースで準備に取りかかっている。

んん・・・油の良い臭いがしてきた。

俺の腹は空腹でそれにグ~~と応える。

ついに朝食ができた。俺はしぶしぶ全員で食卓を囲むことになった。全員無言で食事をしている。昨日は暗くてよくわからなかったが・・・

藤田と名乗った男性は、俺と同じくらいの身長の細身の体型で今にも壊れそうな体つきをしており、俗に言う美少年風な顔立ちをしている。髪は茶髪でなんか生意気そうな感じがした。話をしている時は楽しかったが・・・(俺が一方的にそう思っているだけかもしれないが。)

一方、滝田と名乗った女性は眼鏡が良く似合っており、黒髪を後ろで結わえてあった。この髪を解くとどれくらいの長さになるのか見当もつかないほどだ。化粧はほとんどしていないようで、ナチュラルな感じがしていた。(実際にはしているのだろうが。)しかし、眼鏡を取ったらかなりの美人だし、こんな形で出会っていなければナンパしている所だ。そんな邪な考えが頭に浮かぶ。

そしてあの髭面のオヤジは、いかにもという怪しい感じがした。顔は優しそうな感じがしているが、その眼光は鋭く感じられたし、ガタイもそれなりに良いようだ。見かけだけではわからない異様な雰囲気があり、あまり関わりあいにはあまりなりたくはないタイプだな。そう俺は直感した。

そしてほどよく朝食が終了し一段落ついたところで俺は質問を投げかけた。

「どういう事なのか説明してくれませんか?」-単刀直入に聞く。

「どういう事とはどういう事だ?」-その態度に俺は面を食らう。

「俺は何故ここにいるのか? 昨夜は何故あんな所にいたのか? わからない事だらけだよ。それに頭は痛いし、周りは知らない人ばかりだし・・・一体俺が何をしたって言うんだよ!!」

「君はある事件の被害者だ。災難だったな。」-冷淡な言動だ。なにかムカムカしてきたぞ!

「何が災難だ!もう少し言葉って物があるだろう!」-つい俺は無意識のうちにオヤジに殴りかかる!

しかし、オヤジはそれをヒラリとかわす。そして俺の腕を取り俺の後ろに回す。軽い痛みが俺の体を包み、耐え切れず声にならない悲鳴を上げた。

「おおっと~これは失礼。なにせ反射的に体が動くもんでね。人も殴った事がないのにこんなオイタはだめだぞ。ボウズ。」-腕をポイッと放しながら言う。

俺はとっさにオヤジを睨み付ける。もう一度殴りかかろうかとさえ思った。

「そんな怖い顔すんなって~。試しただけだろう?」-俺はオヤジを睨み続けていた。

「試す?なんのためにだよ!」-ハァハァと息を切らせながら反論する。

「おまえは探偵になるんだろう? こんな事でキレてたらこの先思いやられるな!どうなんだ?」

「どうして俺が探偵になろうとしているってわかったんだ?」-素朴な疑問だ。

「各探偵事務所にはなぁ、探偵試験に合格したヤツの名簿が毎年送られて来るんだよ。それだけで知っているわけじゃないが、探偵になるんだろう?」

「好きでそうなろうと思っているわけじゃないさ!」-すかさず返答する。

そして有無も言わさずオヤジは殴りかかってきた。その瞬間、俺の頭の中は真っ白くなった。何時間経ったのだろうか、気が付くともう夕方だった。俺の額にはアイスノンがり、ひんやりとした感覚が心地良かった。俺が意識を取り戻したことに気が付くとオヤジは俺に近づいて来た。

「悪い。大人気なかった。お前があんな言葉言ったからだぞ!俺はこれでもこの仕事(探偵)にプライドかけてやっているんだ!そんな言葉言われたら黙ってられるかってんだ!」-オヤジは熱く語った。

「すいません。俺も言葉がすぎました。でもそれは俺の本心ですから。」

とその時、ドアが開いて元気な声で「ただ今帰りました~」と言う声とともに藤田・滝田の二人は帰ってきた。

そして夜の夕食後、事件の真相を聞かされることになる。

俺の隣人の大木はジオノイド社であるコンピュータープログラムを作っていた。ジオノイド社はITベンチャー企業で企業の買収・合併で大きくなった新興の企業。
大木はそこでプログラムを完成させたが、完成したと同時にそのプログラムごと姿を何故かくらませてしまった。
俺の聞いた音はそれを探していた社員が部屋を荒らしていた音だという。荒らしている最中に何か変な物でも触ったのだろうか。
そこに俺が挨拶(文句を言いに)来たので慌てた社員は、雇っていた探偵に連絡し俺を拉致し、その会社が経営する学校に軟禁したということだ。
藤田は俺のアパートをはっていて探偵に捕まり俺と同じくなったらしい。

事の真相を聞いた俺は怒りを隠せないでいた。

「それじゃ、俺はただのとばっちりじゃないか!冗談じゃないぜ!」と我を忘れて激怒した。

「まあ真相そういうことだ。どうだお前もこれから探偵になる身。俺達と大木を探さないか?」-とオヤジがニヤニヤしながら言う。

「わかったよ。何でもやってやるさ。大木を一発殴らなきゃこの怒り収まらない!俺は一人でもやるぜ!」

「よ~し。話は決まったな。そうだ、そう言えば自己紹介はまだだったな。俺の名前は源 幸三(ミナモト コウゾウ)だ。この『源探偵事務所』の所長だ。そして、もう知っているかとは思うが・・・こいつらが藤田と滝田だ。まあよろしく頼むわ。」-ニヤニヤ笑いながら話す。なんか嫌な感じだ。

「改めて宜しく。」-藤田さんはキザっぽく言う。

「宜しくね~。頑張ろうね~。」-滝田さんって天然か?

そうこれが俺の初めての事件だった。

まあなんとか言いくるめられたような気もするがなんとかなるだろう。

これからが困難なんだが。

とりあえず、今日はゆっくり休もう。

明日は早いんだからな。

SRN Chapter1 ~ 道標(みちしるべ) ~ Vol.2 「決断」

SRN Chapter1 ~ 道標(みちしるべ) ~ Vol.2 「決断」

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-10

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