SNR Chapter1 ~ 道標(みちしるべ) ~ Vol.1 「出会い」
俺の名前は「皇 一馬」(スメラギ カズマ)だ。
高校卒業して何もすることがなかったので、生活費を稼ぐためにアルバイトをしながら何の目的も無く適当に探偵試験を受けたら何故か受かってしまった。確かに、昔からこの世界に興味はあったがこんなに簡単で良いのかと思ってはいる所ではあるんだ。
運動は特に得意と思っていたわけではないが射撃には自信があった。よく射撃ゲームで遊んでいたからな。(某漫画の主人公の特技みたいなものだ。)
そんなわけで仕方なく研修を受けることになるんだが・・・その通知が来る前に俺はある事件と遭遇する羽目になるんだ。何の因果か分からないがこれが俺の進路を決めることになろうとは夢にも思っていなかった・・・。
20××年4月25日。
何気なく喉が渇いたので俺は自動販売機にジュースを買いに行こうとアパートの階段を降りていこうとしていた。そんな時に階下から聞き慣れた音(騒音)が聞こえてきた。まあ、機械音のような物かな。
「なんだ、またヤツか。」と思った。(この時間だったかな?)
「ヤツ」とは俺のアパートの1階に住んでいる「大木(オオキ)」だ。下の名前は知らない。某有名企業で働いているらしいが、表札に名前が書いているのでかろうじて名字はわかる程度で、面識はあまり無いと言っても良い。(こんな出来事がなければ。)
実は以前からも同じような事で口論になった事もしばしば。いわば日常茶飯事で、いつしか俺の日課になっている。
しかし、いつもの音とは何かが違う。そんな気がして恒例の挨拶(文句)を言いに行こうとしてドアの前に立ってドアを叩く準備&叫ぼうとした。その時、後ろから鈍い衝撃が頭部に伝わってきた。
俺は意識を失った。(何か良い匂いがしたような・・・・)
何分たっただろうか気がつくと周囲が暗い。
激しい頭痛もさることながら、俺の頭からは血が流れていた。頭に手をやった時に何かベットリとしか液状の物がついたので何となく想像はできた。
「んん・・・何が起こったんだ? 何で俺はこんなところに? というかここはどこなのだろうか?」
冷静に今の状況を判断してみた。(頭が痛い・・・。)
「そうだ! 俺は大木に言いたいことがあったんだ!でも・・・・ここはいったい・・・・・」(独り言だな。)
「ここは、学校だよ・・・・」-という声がしたように思えた。
「おわっ!」(何だこの存在感の無いようなか細い声は?)
「なんだ。いるならいるといってくれよ!」-俺はふざけた様に言う。
「僕も今さっき気ずいたところなんだ。」-彼は淡々と台詞を言うように話す。
それにしても何でここが学校だってわかったんだ?
俺は周囲が暗いながらも周りを見回してみる。月明かりが鉄格子から漏れていて少しは視認できるようになってきたようだ。やっと目が慣れたんだな。
目を凝らして良く見ると跳び箱や石灰、マットやカラーコーンがあった。
なるほど、それで彼もわかったんだな。でも何で俺達こんな所に?
疑問は尽きないがとりあえず、ここに何の因果かわからないが二人が出会ったのは何かの縁だ。(俺は世の中には偶然なんてなくて必然だけあると思っている)とりあえず名乗ってみよう。一期一会は大事だからな。
「俺の名前は 皇 一馬(スメラギ カズマ)だ。 おたくは?」
「僕は 藤田 公一(フジタ コウイチ)だよ。なるほど、君だったのか。」
「なるほど? 一体何の事だ?」
彼は黙ってしまった。
彼は俺を観察しているように感じられた。その鋭い視線は、今までの存在感のなさを払拭させるような鋭さだった。冷たささえ感じる程だ。
彼がずっと黙ったままでいるので、俺は彼に色々と話を振った。(気まずいからな。)
だが、彼はほとんど喋らないで(相槌程度はするが)俺の方を眺めてばかり。二人とも(俺だけのような気がするが。)話し疲れてか沈黙が続いた。ふと月明かりさらに増した所でドアが見えたので目を移してみた。
ドアは重厚な作りになっており、とても人の力だけではぶち破れそうにない感じがした。一応、ノブをいじってみたが、やはり鍵が掛かっている。
改めて俺は誰が?何のために?俺が何をした?等くだらない考え頭に浮かんでしまっていた。
その時遠くから少しずつではあるが足音が聞こえてきた。
カツン、カツンとだんだん近ずくにつれて音は大きくなってくる。そしてカチャカチャと少し音が鳴り、あの重厚なドアが音を立てて開いた。
「良かった!無事だったんだ~!心配したんだぞ~!」(なんだ、この気の抜けた様な声は?)
そこには安堵の溜息をつく一人の女性がそこにいた。(外見は暗くて見えないが。)
「すみません。 滝田(タキタ)さん。」-藤田は申し訳なさそうに言う。
「もう~! 君は見習いだからどんどんやらせてみようって言ったのは所長なのにいつも後始末は私なんだから~!」-不平をぶつぶつ呟く。
そして彼女は小一時間、藤田に色々と説教めいた事を言い続けていた。
「お~い、誰か忘れてませんか~?」(小声で言ってみた。)
「あれ?君は?誰?」-ようやく俺の存在に気ずいたようだ。
「どこかで見たな~? ああ~! 君は皇君でしょ~? セジュール宮本の201号室に住んでいる~。」
「なんで知っているんですか? 俺って有名人なんですか?」-俺は不思議に思って質問する。
「まあ、あそこで今事件が起きているからね。調べてる最中だったから知っていたの~。って、あ・・・・」
「滝田さん!それは言っちゃだめですよ!」-藤田が制止しようとした時にはもう手遅れだった。
「もしかしてまたやっちゃった~?」-藤田はその様子を見て呆れていたようだった。
その反面、滝田と呼ばれる女性はうなだれて落ち込んでいるようだった。
「あの、どういうことなんですか?」-俺は何がなにやらわからないので質問する。
「う~ん。話しても良いのかな~。」-唸りながら悩んでいるようだ。
「実はね・・・。」
そしてやっと悩んだ末に言葉を発しようとした瞬間
ジリリリリリリリーーーーと火災警報機が闇夜の学校に鳴り響いた。
「あらら、戻って来てしまったみたいね~。説明はここを出てからでいい~?」-俺はしぶしぶ了承する。状況が状況だけに仕方ない。
そして俺達はこの学校らしき所を後にした。
俺と藤田は息を切らしながら走るも、滝田だけは爽快にステップを踏みながら悠々と走っている。余裕さえ見える。
そして、俺はある場所へと連れて来られた。
そう、これが始まりだったんだ。
俺の人生の全てを変えた・・・。
SNR Chapter1 ~ 道標(みちしるべ) ~ Vol.1 「出会い」