人体のほとんどは水らしい。
じゃあ人間は濁った水みたいなものだね。
泥水を啜って生きるひとはほんとうに生きているんだ。
今日も、濁水で充たされた重い箱が水風船を潰している。世のなかの水の流れが乱れて、煮えくりかえる水たまりがある。

例えば、滝、山のわきから流れる湧水(ゆうすい)はうつくしい。或いは、陽光に照らされてこぼれる朝露。溜まった緊張を吐き出すように運動するししおどし。噴水。ジョウロ。人は落ちる水が好きだ。

じゃあ私は、君が高いところから落ちてしまっても、うつくしいとは決して言えないような人間になろう。落ちる水はうつくしいし、君はだいたい水だ、けど君は落ちてもうつくしくはなれないんだ。(本当は…ね。)君じゃなかったら、ひょっとして絶景にほうけてしまうかもしれないけど。

今度、本当にうつくしいものを見に行こう。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-28

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