果実
君のことを考えるために電気を消した。
詩を読むのは、リストカットと同じで、
詩を詠むのは、オーバードーズと同じだ、
死を読んでいる、死を詠んでいる。
二人で言葉の森に入って、傷つきながらそれぞれの愛の詩を切り取った。森を抜けて、地図を見ていると、君が名前を呼んで、「好きだよ。」と。そのとき私は心臓を地面に叩きつけられたような、魂を現実に叩きつけられたような、そんな感じがして苦しくて、ああ、君のおかげで今日も死なずに済む、と思ったのだ。
魂は、ひものついた風船で、中には希死念慮のガスが入ってる。(死への憧れは人類共通だ。)
それを、普通は手放さない。ふわふわ浮くもの、子供のうちはかわいいものだ、まあ、大人だってそう。でも風船が大きく膨らみすぎたり握る力が摩耗したりすると、「つい」、「うっかり」、手を離してしまうことがある。自殺。
不気味に膨らんだまっ赤な風船、の、ひものつけ根に、ぼろぼろの体で泣きながら縋って、家族、親友という重しを乗せて、いってしまわないようにと歯を食いしばっているイメージを何度も見た。
きっと私は死なない。
果実