多久さんの事件簿 霧ヶ峰に温泉旅行編⑥ 8

Shino Nishikawa

多久さんの事件簿【霧ヶ峰に温泉旅行編⑥】8
トウナが広場の様子をうかがっていると、アラツの3人が縛られて連れられてきた。
みんな、息を飲んだ。

『嘘でしょぉ‥。』
みんな息を殺したが、トウナが走って出て行ってしまった。
「トウナ。」

山賊達は驚き、トウナを見た。

トウナは抵抗なく、捕まり、アラツの3人と共に縛られた。

「どれどれ。」
中年男の山賊2人が、銃を持ち、こっちに来た。

「行くわ。」
伸は出て行った。

2人は伸に銃を向けた。
たき火を囲んでいる山族達。
お面の女が、山賊の剣のようなものをちらつかせている。

「他にはいないか。」
「いません。」
伸は答えたが、もう1人が銃で、茂みを探った。

大ちゃんが仕方なく、茂みから出た。
山賊は銃を向けた。

その隙に、ハク、ミンク、クーン親子は逃げた。

伸と大ちゃんも縛られてしまう。

「すみません、トイレ。」
トウナちゃんが言うと、山賊のおじいさんはうろたえた。
トウナは、山賊のおじいさんの知り合いの女性のお気に入り選手だったのだ。

「トイレはあそこだよ。」
おじいさんはトウナちゃんにトイレを教え、縄を外した。

「トイレだって。」
「いいの?」
山賊達は話した。
「仲間に入るのかな。」
「ええ、マジ?」
若い山賊達は、ニヤリと笑い、話した。

トイレは、トイレではなく、用を足す場所はそこと決められた場所だった。

トウナは用を足すと戻った。

アラツの3人は、無言でトウナ達をちらりと見た。
後ろ手に縛られていたが、前手に縛りなおされていた。

トウナ達3人もうつむき、アラツ3人の隣に座った。

たき火の煙は、もくもくと上がっていく。
「あー、誰か気づいて。」
ニーヤがつぶやいた。

「あの、アラツさんですよね?」
「ん?そうだよ。」
かぐちゃんが、二重をぼんやりさせてこちらを見た。

「どうしてですか?」
「え‥。ロケだって言われてぇ、ここまで来たんだけどぉ、嘘だったんだよね。」
「ってかそもそもぉ。レイちゃんなしのロケに来る、俺達が馬鹿。」
オーヤン君が言った。

「おい。」
男の山賊が猟銃を持ってきた。

「いつ仲間いれんの?」
男女の若い山賊達が話している。
「ハハハ、仲間、入んの?」

「ねえ、いつ仲間に入るー?」
若い女の山賊が6人に呼びかけた。

6人に猟銃を向けていた山賊の小林さんは、自分のしている事にマチガイを感じ、銃を下し、うつむいてしまっていた。

「俺、行くわ。」
ニーヤは言い、両手を縛られたまま、立ち上がり、走り出した。
「ちょ、どこ行くの?」
オーヤン君が聞くと、ニーヤは走りながらふりむいた。
「トイレ。」

オーヤン君は事を察知し、うつむき、座った。
「なんだって?」
「トイレだって。」
「俺達を置いて逃げる?普通。」
かぐちゃんは顔をしかめた。

「おい、1人は。」
山賊の中年男が来た。
「あれぇ、ニーヤ君は。」
女も後ろから、ニヤニヤと笑った。

「トイレ、だそうです。」
トウナが言った。
「じゃ、縄は。」
中年男が言うと、小林さんは心配そうに、後ろからトウナを見た。

「あ、自分が、外しました。」
オーヤン君は命をかけて答えると、中年男の熊井は銃をちらつかせたが、小林さんが『ダメ』と首をふり、やめさせた。

「はあ、はあ。」
ニーヤは走った。
途中、木にこすったりして、縄をほどいた。

がるる
「あっ。」
ニーヤは寝ていた子熊をふんでしまった。
親熊も上から顔を出したが、無視してくれた。
「え‥。」

「とりあえず逃げる。」
ニーヤは山を下り続けた。

カラッ。
途中、白い物を踏んだが、ニーヤは気づかなかった。
それは、昔、熊に食べられた、山賊の教祖である、宮野神雅(みやの かみまさ)の姪の骨だった。

夜10時。ニーヤは本当に小さな集落に出た。
「はああ。」
ニーヤは息をはあはあした。

1人の男性が、ニーヤを懐中電灯で照らした。
「え‥。」
「大丈夫ですか。」
「はい。でも、山の中で仲間が捕まっていて。」
「とにかく、俺の家に。」
その人は、蒔田さんという名前で、30才だった。

蒔田さんの家には両親もいた。
「ああ、ニーヤさん。」
両親は恐縮して、ニーヤと握手した。

お母さんは泣きだし、お父さんと行ってしまった。
「普段、両親は町で暮らしてます。」
「そうですか。」
ニーヤは小さな声で言い、緑茶を飲んだ。

「あの、仲間が捕まってて。」
「あ、そうでしたよね。すみません。警察に連絡しますか?」
「はい‥その前に、仲間に‥連絡します。」
「ああ‥。」

「はい。」
蒔田さんは電話を渡した。
「ありがとうございます。」
ニーヤは松に電話した。

松は、ニーヤ、かぐちゃん、オーヤン君が箱根に向かう電車から顔を出している夢を見ていた。

「ん~。」
松は寝ながらニヤニヤ笑った。
マーキンは寝ながら、ぶるぶる震えている。

プルルル
「ん~。」松はまだニヤニヤして寝ている。

「松、電話!」
マーキンが言った。
「うおっ。」
松は起きたが、「はい。」マーキンが電話に出た。

「ええ‥。」
マーキンは泣いた。
「誰。」
「俺。ニーヤ。」
「ああ‥。」
マーキンは泣き崩れたので、松が電話を代わった。
「もしもし。」
松は少し興奮気味だった。

「ああ‥。そっか、みんなは。」
松はさすがに少し泣いた。

「まだ‥。」
ニーヤの目から涙がこぼれた。

「ええ‥。それどこ。」
「霧ヶ峰。」
「そんな‥!」
霧ヶ峰は、松とニーヤが高校生の頃、2人で行った場所だった。
「警察に連絡した?」

「あ、はい。」
蒔田さんが、スマホから110番した。


「ちょっと、俺にも代わって。」
「うん。」
「馬鹿野郎!!」
マーキンは大声で言い、ニーヤは少し笑った。


「おい、お前達、あいつは。」
「わかんない。」
熊井が聞き、伸が首をふった。

「宮野神雅様のご到着です!!」
山賊が叫ぶと、宮野が両脇に巫女と若い男に火をもたせ、現れた。
「わあああ!!」
山賊達は大声で何かを叫んだ。
すると、逆側から、宮野神雅と同じ男が現れた。両脇には同じように男女をつけている。
「はあああ。」
山賊達は感嘆のため息をついた。

その男は宮野神雅の双子の弟、翡翠である。
山賊達は気づいているが、違うと思い込んだ。
神雅を神様と信じ込んでいた。

多久さんの事件簿 霧ヶ峰に温泉旅行編⑥ 8

多久さんの事件簿 霧ヶ峰に温泉旅行編⑥ 8

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