多久さんの事件簿 霧ヶ峰に温泉旅行編③ 5

Shino Nishikawa

多久さんの事件簿【霧ヶ峰に温泉旅行編③】5
トウナは無我夢中で崖を登っていた。
「トウナさんっ。」
振り向くと、大ちゃんと伸がついてきていた。

「え‥。」
「僕達も行きますよ。」
「うん‥。」


「トウナ、多久達は来てない。腹黒い奴らだから。」
伸が言った。
「主役にふさわしくないですよね。」
大ちゃんも言った。

トウナは目がかなりいい。
その上、霊感もある。
大ちゃんは優しいだけだったが、伸には霊感があったので、トウナと伸の霊感、靴の跡をたよりに、山賊の場所を目指した。

ザザッ
3人は止まった。

「うわ‥なんだろ。」
トウナが顔をしかめた。

気味の悪い風が吹いた。

「わぁぁ。」
ハクが顔をだした。

「なーんだ。ハクさんか。」

「どうして‥ここに?」
「スポーツ選手とドッジボールなんて怖いからさ、朝からずっと山の中にいたんだよ。クーン親子とミンクもいるよ。」

「‥そういえばいなかったですよね。」
ハクの後ろを歩きながら、大ちゃんは伸に言った。

クーン親子とミンクは、大きな木の下で、どら焼きを食べていた。
「僕、大切な試合の時は、いつもこれなんです。」
ミンクは言った。

「はい。まだあるから。」
ミンクは3人にどら焼きを渡した。

ミンクはハクを、『ハク兄ちゃん』と呼び、クーン親子とミンク、ハクは、笑いながら、たわいのない会話をしていた。

「あのさ‥下で人が殺されたんだ。」
「えっ!人が?」
「そんな‥。」
「なんか‥知らない人だけどね。俺と伸ちゃんが、昨日話した人達だったから。」
みんな目をふせた。

「でも‥どうしてここに?」
「えっ、それは‥。」

「実は事件現場で見えたんです。木の上から人が見ているのを。」
「え‥。」
「じゃあ犯人を捜してるの?」
「うん。」

「ゲーム、って感じですよね。」
ミンクが言った。
「試合は舞台だって、お兄ちゃんが言ってるから。」
「そうだな、でもこれは、命がかかったゲームなんだ。」
「うん。」

「俺達はまだアイツらを探すけど、ここにいてもいいぞ。」
「あ‥もう行きますか。」
「早い方がいいだろ。」

「行くよ。」
クーンが言った。
「じゃ、俺も行くか。」
クーンのお父さんも言った。

「どうする?」
「行く。」
ミンクも答え、みんなで山賊を探すことになった。


その頃、旅館には、リポーターの仕事を始めた新島とカメラが来ていた。
「こちら、事件があった現場から、一番近い旅館です。」
「第一発見者のダミエルさんに話を伺いましょう。‥ダミエルさん、殺された夫妻はどのような状態でしたか?」
ダミエルはすすり泣きを始めた。
「僕が‥ブルーシートの上に座ろうと‥したら‥人の感触があり‥めくってみたら‥亡くなって‥いました。」
ロニーがダミエルの背中をさすった。

「そうですか‥こちらが、現場にいた男性達ですね?」
カメラは、ヤマ達を写した。

新島総は、岸道さんにインタビューをし、岸道さんは、僕達は何もしていないというような主旨の回答をした。

高選手は、ソファーに座ってうなだれていると、日比野が言った。
「‥前もこういうことありましたよね?ほら、五輪の時。」
高選手は、鼻で笑った。2人はレスリングで五輪に出た。

山賊達は殺人鬼のことも、仲間であれば、かばっていた。
そもそも山賊は、宮高組と呼ばれ、もちろん、映画監督の宮高キヨシさんとは関係ないが、そうでもないと、自分達は言い張っていた。

でも歴史は古く、五人組の延長だった。

マージンの同級生の女の子美幸も、宮高組の1人の女に殺された。
殺した女の名前を山田ワムという。

「あっ、マージン。今度、よかったら、お茶しない?」
「お茶?うーん、また、暇があったらね。」


「ねえ、いつ会える?」
「会う?会うって、ティーでしょ?」
「まあ、そうだけど。こっちは付き合うのが前提だから。」
「付き合うっ?!俺はぁー‥そっちまで考えてないけどな。」
「ふーん。つまんない。男と女って、そういうのがなければ意味ないじゃん。」
「そう?そんなことはないんじゃない?」

美幸とマージンは会うことになった。

「私、茶道習ってるんだ。」
「いいね。でもなんの役に立つの?」
「役に立つっ?別に、そういうんじゃないから。イイ女のたしなみなんで。」
「へぇぇ。じゃ、頑張って。」
「あっ、今度、お茶席があるから来ない?」
「うん。じゃ、女と行くかも。」
「なんでぇ?イケメン連れてきてよ。」

マージンは、1人でお茶席に行った。
「来てくれたんだ。」
「着物の帯、垂れてるんじゃない?」
「ああ、こういうものだから。」
美幸は余裕がある感じだった。

美幸の師匠である、山田ワムはマージンを捉え、息を軽く飲んだ。
山田ワムは、年齢詐称をしており、愛に飢えた女だった。

いつか、色男に抱かれることが、山田ワムの願いであり、夢だった。

山田ワムが、年齢詐称をしているわりに、先生になれたのは、
レズ行為を山田ワムのまた先生としたからだった。

山田ワムは、お茶席の後で、さりげなく、美幸に聞いた。
「ねえ、彼氏さん?」
「え‥?」
「さっき、男の人、来てたでしょ?」
「あぁ~‥。」
美幸は首をひねった。
美幸は山田ワムが苦手だった。

「別に、彼氏とかじゃないですよ。」
「ふーん、そなんだ。じゃ、狙っていい?」
『はぁ?』
「ごめんごめん。ちょっと冗談だから。」
美幸は苦笑いした。
「トーゼン、ですよね。」
「うん、うん。ちょっとからかっただけだから。」

美幸は、京都でのお茶席に呼ばれることになる。
美幸はとても喜んだ。
「ええ、ホントですか?」
「うん。ただ当日は泊まる部屋がなくて、ダブルベッドになっちゃうかもしれない。でも、大丈夫。私とだから。」
「よし!ってぇ、それはダブルベッドのことじゃないけど。」

当日。
「ええ?冗談じゃなかったんですか?」
「ああ、ごめんね。ホントにこの部屋しか空いてなくて。」

「嫌なら、他の先生と変わる?」
「うん。女同士でダブルなんてありえないから。」

山田ワムは、他の先生達に聞きにいったが、みんな断った。

「嘘でしょ?こんなの親としかしたことない。」

山田ワムは伏し目がちにした。

ブルル。美幸の携帯は揺れた。
電話は、マージンからだった。

「はい、もしもし。」
―大丈夫?なんか変わったことがあったみたいだけど。
「さっきのメール?ああ、気にしなくていいよ。」
―いやいや、今晩死ぬと思いますなんて、気にしなくていいわけないでしょ。
「ああ、やだぁ。ごめん、あれは嘘だから。」
―へぇ。じゃ、今はどこにいるの?
「京都。お茶席に出席するから。」
―そうなんだ。

山田ワムはコホコホと咳をせいた。

―あれ、誰かいる?
「うん。山田さん。先生なんだけどさ。一応‥。」
―じゃあ、僕が話しますよ。その人と。

「先生。ちょっと代わって。」
「えっ?私が?」
「うん。」

「あのぉ、もしもし。」
―あ~どうもどうも。
「え~っと‥お名前は?」
―ああ、僕は宮高マージンです。
「ああ、宮高さんね。美幸ちゃんのお友達?」
―そうなんです。あの~美幸さんのことなんですが、ちょっと、彼女は情緒不安定なものですから、よろしくお願いしますね。
「そうなんですか?」
はい。
「あの‥付き合ってるんじゃないなら、私とも‥。」
山田ワムは小声になった。

―は?
「だから、付き合ってないんでしょ?」
―いやいや、お付き合いをしております。

マージンは美幸のために嘘をついた。

「ああ、そうなんですか。では、仕方ありませんね。」

山田ワムは、悲痛の面持ちで、美幸に電話を代わった。

「ああ、マージン?ごめんね、電話そっちからなのにさ、長々と。」
―いいよ。そんなことは。
「それに彼女さん‥大丈夫?」
―ああ~平気平気。てか、今はいないよ。
「そっか。じゃ、グッナ~イ。」
美幸はチュッとした。
マージンも電話を切った。

美幸は明るい気持ちになった。

深夜11時。部屋の明かりを消した。
掛け布団を2枚用意してもらったので、美幸は少し安心したが、
深夜12時頃、山田ワムは美幸の体をさわった。

「何やってるんですか!!」
美幸は怒った。マージンに電話したが、もう寝てしまっていた。
美幸は泣いた。

「ごめんごめん。あんまり大きい声を出したら、聞こえるから。」
「だって触ってきたでしょ?」
「ちがうの、ちょっと布団から出てて、あんまりだったもんだから。」

「もういいから。あんたのこと、ホント嫌い。」

「嫌いでもなんでもいいから、今日はもう寝よ?」

美幸は、はあはあ怒りながら、トイレに行った。

山田ワムは、毒をいれた、お茶をいれた。
「あの‥これ。落ち着くと思うから。」

「うっざ。自分が飲めば?」
「いや、私はいいよぉ。美幸ちゃんにだもん。」
「ふ~ん。そんなものに騙されるもんですか。」

そう言いつつ、美幸はお茶を飲み、ベッドに横になった。
「うえっ!うえっ!」と、大きな声で言い、少し、吐いて、死んだ。

「はい、騙されましたね。」
山田ワムは言った。

山田ワムはトイレに行った。
すると、美幸が持ってきたシャンプーが置いてあった。
そして血の気が引いてしまった。

「どうしよう!!!」

「美幸ちゃん、美幸ちゃん。」
美幸は起きなかった。

1時間ほど、ベッドに座って、ぼーっとした。
すると、どこかからか、「この気ちがい女!!」という声が聞こえた。

美幸の亡骸を見て、ワムはため息をついた。

ワムはそのまま寝てしまった。

「山田先生!!山田先生!!」
午前10時、多当先生が呼びにきた。

「はい‥。」
「起きたのね?美幸ちゃんは?」
「あの、まだ寝てます。」
「ええ?ちょっと入るわよ。」

「美幸ちゃん、美幸ちゃん。」

「嘘‥でしょぉ‥!!!!」

「山田さん、やったのね?!」
「違います、起きたら、こうなってたんです。」

「そんなことあるわけないでしょう!!
あなたと寝ていたんだから。」

「ええ‥。」

「ああ、藤崎先生、来たわね。美幸ちゃんが息してないの。でも、救急車を呼んでちょうだい。」
「ええっ!」
藤崎先生は、おろおろしながら部屋に入ってきた。

「そんな‥。」
「藤崎先生、救急車。」
「ダメ、私にはそんなこと‥。」
藤崎先生は倒れこんでしまった。

警察も来て、みんなに事情聴取をした。
「山田さん、美幸さんが亡くなったのは何時頃ですか。」
刑事は目をまっすぐ見て聞いた。
「わからない‥だって起きたらこうなっていたんだもの。」

刑事は悲しそうだった。

「でもね、もしも、あなたが毒を持っていたなら。」

ワムは目を見開いた。
毒を捨てるのを忘れていたのだ。

「荷物を調べますよ。」
「ダメ!!人の荷物だよ!!」
「ちょっ‥それじゃ、あなたが第一容疑者です。」
「ちがうよ!!待って、娘のものもあるんだから。」

ワムはトイレで毒を飲んだが、死ねなかった。

ワムは大泣きした。

ワムのことは、宮高組に伝わった。
宮高組は、ワムを、命をかけて守ると約束し、美幸の葬儀にもみんなで行った。

みんなで多当先生の家に押し掛け、ワムが無罪だと主張した。
多当先生は本当に悲しかったが、旦那さんが了承した。

ワムは多当先生の殺害を計画したが、うまくいかなかった。

ワムは2年ほど、茶道の世界から遠ざかったが、また復帰した。
多当先生はもう来ていなかったが、たまに教室に顔を出すと、
ワムをギョッとした表情で見た。

安らかな日々が続くと思った。

でも、ワムは生徒から嫌われ続け、ついに大人2人を殺してしまう。

お茶に強いお酒をいれたのだ。
2人は運転して帰り、交通事故で死んだ。

そしてまた、ワムを宮高組が守った。
守られるには200万ほどがかかる。

多久さんの事件簿 霧ヶ峰に温泉旅行編③ 5

多久さんの事件簿 霧ヶ峰に温泉旅行編③ 5

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