多久さんの事件簿 和田コーチ殺害事件 2

Shino Nishikawa

多久さんの事件簿【和田コーチ殺害事件編】
「おーい、みんな集まれ。」
コーチが集合をかけた。
「はい。」

「実は、横浜チームのコーチの和田さんが突然亡くなったそうだ。お前達も、よく会っていただろう。」

多久は和田さんのことを思い出した。
「岩名君、ナイスプレー!」
そのことを思うと辛くなり、多久は少し泣いた。


実際、和田さんは、殺害された。
毒殺だ。
和田さんは、横浜チームの次期監督と噂されていた。

殺したのは、コーチより下の、アドバイザー、山門(やまと)さんである。
夜、今日は来る予定でない、山門さんが事務所に来て、お茶を入れていた。
横浜チームでは、選手やコーチが何人か不審死を遂げており、犯人が山門さんだと噂されていた。
和田さんは心を決めた。
「今日はどうしたの?」
「いえ、ちょっとボールを取りに来たんです。」

「ボールを?」
「ええ、先生、お茶をどうぞ。」
「ふん。‥山門先生はどうしてバスケを教えているんですか?」
「好きだからです。」
「そう、でもね、バスケが好きより、人を好きじゃなきゃ、ダメなんです。
昔、和弘君が亡くなったでしょう。何か知らないですか?」
「さぁ‥昔のことですので、ちょっと。」

和田さんは目を閉じ、お茶を飲んだ。

強く湯飲みを置き、激しい口調で言った。
「どうして私なんですか!あなたに今までいろいろ教えてあげたでしょう。」
「え‥。」
「ちょっと、帰る。」

和田さんは、体育館の外の階段で倒れこんだ。

「和田さん、和田さん。」
山門さんは和田さんの体をゆらしたが、和田さんは起きなかった。

山門さんは逃げた。

和田さんはその後、また起き、事務所に行き、息子に電話した。
「もしもし、今から迎えに来てくれるか?お父さん、もうダメかも。」
息子が来た時には、和田さんの意識はなかった。
「お父さん、救急車か。」
「あ‥。」
「そうだな。呼ぶぞ。」
和田さんは病院で息を引き取った。

寺田監督は、山門さんに聞いた。
「お通夜、行かないか。」
「いや‥ちょっと‥。」
「そうか。」

「お葬式。」
寺田監督は家まで迎えに来た。
「いえ、私は、この後、練習がありますから。」
「練習なんて休めばいいでしょう。」
「でも、生徒達待ってるし。」

寺田監督は目を伏せた。

山門さんはシラを切り続けた。

みんな目を伏せた。
警察でさえも。

多久さんの事件簿 和田コーチ殺害事件 2

多久さんの事件簿 和田コーチ殺害事件 2

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted