詩集.想いをこの束にして (六束目)
詩集.想いをこの束にして(六束目)
愛の編 二十六
乾いた
喉を
潤すみたいに
あなたの
声が
心に沁みてきて
受話器の
向こうの
優しい
面影に
すがりつきたくなる
繰り返される
切なく
廻る
季節が
温かな
陽射しを
宿して
もうじき
震えていた
わたしの
窓を
叩く
どんな
顔をして
出迎えたら
いいかな
開け放ったら
そこに
あなたが
いてくれないかな
もう
一度だけ
綿毛みたいに
柔らかな
その
腕の中の
陽だまりに
包み込まれていたいな─
愛の編 二十七
君の
哀しみや
苦しさが
僕の
心の中に
積もればいいのに
もしも
こぼれ落ちるのなら
僕の眼が
代わればいいのに
抱きしめも
できない
もどかしさが
切ない想いと
一緒に
胸いっぱいに
溢れそうになるから
僕は
間違いなく
君を
愛している
いつの日か
その小さくて
温かな
心ごとを
そっと
包み込みに
行くよ
きっと
君を
護るために
今を
今日の日を
生きてる─
愛の編 二十八
寒椿の
ひとひらの
紅色が
不意に
懐かしく感じて
そっと
拾い上げてみた
微かな
甘い匂いが
何だか
切なくて
目を閉じたら
君の
面影が
浮かんだ
やっと
見つけた
声に
ならない
想いの
行き先に
僕は
甘え過ぎて
いたのかも知れない
蕾と同じに
開きかけた
この
想いに
もう
飾りはつけない
信じること
伝えること
見護ること
伝わること
心から
求め
包み込み
そして
愛すること
理(ことわ)りを
超えた
真実(ほんとう)の
優しさに
生まれて
初めて
触れた
ありきたりの
言葉は
もう
捨てるよ
全てを込め
君だけを愛してゆく─
愛の編 二十九
たまには
いいよね
ずる休みでも
昨日の
辛いことを
少しの間
忘れるために
いつも
前向きになんて
進めやしない
「精一杯」は
この
両の掌に
持てるだけだもの
誰かのために
生きてるんじゃないよ
そう
声をあげて
叫んでも
みたいけれど
黙る方が
楽だし
上手な
生き方だよね
心を
俯けて
そう
問うた言葉に
それが
優しさなんだ
そう
応えて笑った
あなたの
そんな
広い
腕の中に
もっと
寄りかかっていても
いいかな
時々
ずるいわたしを
包み込んでいて欲しいな─
愛の編 三十
たった
一握りだけど
確かな
希(のぞみ)を
いつも
持ち歩いてる
もしも
曇天の空を
見上げ
その眼に
涙を
浮かべているのなら
ためらうことなく
全部を
あげるよ
遠い昔
交わした
天人(そらびと)との
約束を
ずっと
憶えてる
広大に
散らばる
数多(あまた)の
細い
糸を
手繰り寄せ
明日を
寄り添う
かけがえのない
たった
一つの
命がある
譲りなさい
持ち合わせてる
全てを
そうしたら
永遠に
希望が
繋がるって
その
使命を
抱きしめて
今を
生きてきた
生かされてきたんだ
もう
ハンカチは
いらない
きっと
今日が
笑顔に
満ち溢れるよ
その掌の
指を
大きく
開いてごらん─
詩集.想いをこの束にして (六束目)