変身

分厚い眼鏡が世界を映す
よく似た人間たちがめまぐるしく回転している

僕だけがその中に存在していない
ここは僕の場所じゃないのかもしれない

本を読む振りが上手になった
今日はカフカの「変身」で顔を隠す

何度読んでも思うんだ
僕は虫

「カフカ、好きなの?」

聞き覚えのない声が 僕の空間に入り込む

ーーなんとなく読んでいるだけです
「あんまり意味わかんなかったけどさ」
「俺も読んだよ」

誰かと言葉を交わすことに慣れていなくて
そのあとの会話はまったく覚えていない

けれど明日はもう数冊くらい
いつもより多く本を持ってこようと

何故だか そんな気持ちになったんだ

変身

変身

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-21

Copyrighted
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