変身
分厚い眼鏡が世界を映す
よく似た人間たちがめまぐるしく回転している
僕だけがその中に存在していない
ここは僕の場所じゃないのかもしれない
本を読む振りが上手になった
今日はカフカの「変身」で顔を隠す
何度読んでも思うんだ
僕は虫
「カフカ、好きなの?」
聞き覚えのない声が 僕の空間に入り込む
ーーなんとなく読んでいるだけです
「あんまり意味わかんなかったけどさ」
「俺も読んだよ」
誰かと言葉を交わすことに慣れていなくて
そのあとの会話はまったく覚えていない
けれど明日はもう数冊くらい
いつもより多く本を持ってこようと
何故だか そんな気持ちになったんだ
変身