旧友

万年筆を手にすると
気持ちがふっと和らいでゆく

過ぎ去った日々を綴(つづ)ろうか
果てない未来を夢見ようか

小説を書こうと思い立ち
早十年もの歳月が経った

ほとんど生活破綻者だった私は
さらなる窮地に追いやられた

心の奥底にある
もっとも柔らかい部分を
病んでしまったのかもしれない

それでも
書くことをやめられない

この病いを道連れに
微塵も手応えのない作品を送ろうか
どうか楽しんでもらえますように

いつも私の手のひらには
旧友とでも呼べるような
静かに語り合える万年筆がある

旧友

旧友

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-21

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