待ち人
ひとりごとのような、あの言葉が
今になって妙に頭をよぎる
親父が失踪した
思い返せば
確かにあの日の親父は変だった
外は大雨だった
きっと親父は、
何もかもわからなくなったんだ
何もかも信じられなくなったんだ
いずれは帰ってくる、と
そう思ってた 願ってた
まもなく母が他界した
妹は知らない男の家に住むようになった
もう遠い昔の、幸せだったはずの子供時代を、
そのまま目の前に突きつけられる
親父は何を探しに行ったのだろうか
なあ 帰ってこいよ
点けっ放しのテレビから、懐かしい曲が流れてた
待ち人