待ち人

ひとりごとのような、あの言葉が
今になって妙に頭をよぎる

親父が失踪した

思い返せば
確かにあの日の親父は変だった
外は大雨だった

きっと親父は、
何もかもわからなくなったんだ
何もかも信じられなくなったんだ

いずれは帰ってくる、と
そう思ってた 願ってた

まもなく母が他界した
妹は知らない男の家に住むようになった

もう遠い昔の、幸せだったはずの子供時代を、
そのまま目の前に突きつけられる

親父は何を探しに行ったのだろうか

なあ 帰ってこいよ

点けっ放しのテレビから、懐かしい曲が流れてた

待ち人

待ち人

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted