魔法使いと見た空3
「クレア・カルディコット・・・!」
国の端の小さな村に住んでいるアルでも、その名を知っていた。
昨夜、アルと同じくして15歳になったという、この国の姫。
戦争の影響で何者かに連れ去られ行方不明になったという噂を聞いたことがある。
少女の長い銀色の髪と、大きな緑色の目はクレア姫の特徴と同じだった。
「お前・・・この国の・・・?!」
クレアの表情が少しずつかたくなっていく。
「そうだ。」
その声色から、やはり名乗るべきじゃなかった、と後悔の念がみえる。
「1ヶ月前・・・城に敵国が攻めてきてな。私一人だけ生き延びてしまった。」
苦笑しながら、立ち上がり踵を返すクレア。
「何故・・・??1ヶ月前だって・・・!?城で一人だけ生き延びた??国王は?大臣は?!」
「・・・」
「城の防衛には国中から集められた優秀な魔法使いがあてられてるはずだろ!??」
「・・・ぅ」
後ろを向いたままのクレアの肩が、小さく、震えていた。
アルは続ける。納得いかなかった。1ヶ月前に落城したというなら、なぜまだ戦争は続いている?
「城がおとされたってどういうことだ!?何のためにこの村の人たちは連れていかれたんだ!? 何とかいえよ!!」
「・・ちがう!!」
「違う!?どういうことだよ!?」
「戦争など・・・初めからなかったのだ!!これは・・・私と・・・アレックス、君を隠すためのカモフラージュなんだ!」
「!?どういう・・・」
「君には世界をも滅ぼすことのできる魔法が備わっている。」
「!知ってるよ・・・父さんが俺に託したんだ・・・けど!俺はその方法を知らない!だからこうして今も戦争に駆り出されることもなく・・・!!」
「違うんだ!これは魔法戦争だぞ!?」
息を荒立てるクレア。地面に何かが零れ落ちた。
「そんな魔法が備わっているのならば何故君を訓練させてまで戦場に出さない!?」
「!」
クレアが振り返る。
アルをまっすぐ見つめるその眼には、涙がたまっていた。
「少し・・・話をしてもいいか・・・?」
ぱちぱちと、火が燃えていた。
折角用意したのに、このままでは燃え尽きてしまう。
「分かった。いや・・・頼む。話してくれ・・・!」
頭をさげる。
クレアは驚いた顔をした。
「でもその前に!」
アルはできるだけ明るい声を出す。
食料のほうを指でさして、笑って言った。
「飯、食べようぜ!」
to be continued
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