ブラザーズ×××デイズ

koyasumi

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  2. 2

「ふわーあ」
「うお……!」
 日曜の朝――
 あくびしつつリビングのソファーから起き上がった麗人(れいと)に、戒人(かいと)はぎょっと目を見張った。
「……いたのか」
「なんだよ『いたのか』って。かわいい弟をゴキブリかなんかみてえに」
「かわいい弟なら、ちゃんと自分の部屋で寝ろ。輝人(きいと)のように」
「しょーがねーだろ、ゆうべ遅かったんだから」
「また夜遊びか」
「なんで夜遊びって決めつけんだよ」
「夜遊びじゃないのか」
「夜遊びだけどさ」
「………………」
「んな顔すんなよ。ところで、アレねーの?」
「アレ?」
「アレだよ、アレ」
 そう言って戒人は『それ』を口にくわえて火をつけるしぐさをしてみせる。
「……タバコか」
「そーだよ。この間の買い置きが……」
「買い置くな」
「なんでだよ。生活の知恵だろ」
「ない」
「は?」
「あれなら処分した。万が一にも輝人が興味を持って、おまえのようになっては問題があるからな」
「なんでだよ。普通だろ」
「普通ではない。すくなくとも我が家ではな」
「まあ、いいけどさー」
 麗人はあっさり引き下がり、
「しょうがねーなー。残りがすくねーんだけど」
 そう言いつつ、胸ポケットからタバコを取り出した。
「おい」
 戒人は口の端を引くつかせ、
「自分で持っているなら要求するな」
「言っただろ、すくねーって。はーあ」
 ため息をつきつつ、麗人は慣れた手つきで火をつける。
 戒人は苦り切った顔で、
「まったく。そんなものを吸うくらいなら、きちんと朝食でも取ればいいだろう」
「はーあ? 朝食じゃこんないい味出せねーだろー」
「………………」
「ん?」
「………………」
「おい」
「………………」
「なに無言で鼻ひくひくさせてんだよ。眼鏡が上下して不気味なんだよ」
「! こ、これは……」
「なんだよ、当てつけかよー。自分が禁煙したからってよー」
「ち、違う……」
 戒人は動揺を押し隠すように眼鏡にさわり、
「おまえがこれ見よがしに煙をふかすから……」
「あーん?」
「反応してしまうというか……自己防衛本能が働いて」
「何を防衛してんだよ」
「輝人だ」
「あ?」
「俺がタバコを吸っていたせいで、おまえもそうなってしまった……」
「まー、そうじゃねえとは言わねえけど」
「だからだ」
 戒人は声に力をこめ、
「輝人はおまえのような不良になってもらいたくはないからな」
「へー……」
 戒人は、
「あー、じゃあ、言ってやろうかなー。昔の兄貴がどれだけヤンチャしてたか」
「っっ!」
 戒人はとたんにあせり、
「ば、馬鹿! あのころの輝人は小さくて……」
「小さくて?」
「………………」
「小さいから兄貴のヤンチャぶりに気づいてなかった? だからそのままごまかそうって?」
「いいからよけいなことは言うなよ、絶対」
 戒人は苦り切った顔で、麗人のくわえていたたばこをつまみ取った。
「あっ、何すんだよー」
「こんなものを吸っていないで、朝なのだからちゃんと朝食を取れ。ほら、朝がゆができているぞ」
「えー、オレ、おかゆだめなんだよなー」
「いいから食べろ。朝がゆは起き立ての胃に優しく数多くの効能があると禅の教えにも……」
「知らねーよ、オレは坊さんでも病人でもねーんだよ」
「食べろ」
「ちょ、押しつけてくんな……!」
「口を開けろ」
「なんで兄貴に『あーん』されなきゃなんねんだよ、気持ち悪いな!」
 そこに、
「なんか日曜日の新聞っておもしろいのないよねー」
「輝人」
 新聞を手に入ってきたパジャマ姿の輝人に、戒人が厳しい目を向ける。
「トイレに新聞を持って入るなと言っただろう」
「だって、一般教養を身につけるために新聞を読めって言ったのは戒兄ちゃんで……」
「トイレで読むなと言っている」
「あっ、輝ぃ、新聞貸して。オレもトイレに……」
「おい!」
「いいじゃん、いっぺんに二つのことができて。オレも一般教養を……」
「身についていないだろう、おまえは! ……まったく、明日から俺専用の新聞を取ろうか」
「もったいねーよ、テレビ欄しか見ねえのに」
「あと、スポーツとマンガね」
「それはおまえたちだ」
「あと、死亡欄も見ちゃうよな」
「あっ、おれも」
「それは……俺もだが」
 ――と、
「何これ」
 輝人の声がふいに曇る。
「ん?」
 戒人はけげんそうに、
「シリアルだ。おまえが朝はそれがいいと言っただろう」
「ずっけーのな、輝ぃには好きなもの食わせてさ」
「栄養的には問題ない。いいから、おまえは朝がゆを……」
「なんで牛乳かけたの!」
「えっ」
 輝人はぷっと頬をふくらませ、
「おれ、いまダイエットしてるんだからさ。牛乳なんてかけたらなんにもなんないじゃん」
 戒人、そして麗人もあぜんとなる。
「ダイエット……」
「そうだよ。牛乳何カロリーあると思ってるの?」
「そんな、ちょっと牛乳かけたくらい大したことねーじゃん」
「大したことあるよ。ダイエット中はちょっとでもカロリー抑えたいんだから」
「……あのな、輝人」
 戒人はため息混じりに眼鏡を押さえ、
「おまえは中学生だ」
「そうだよ」
「常識的に考えてダイエットの必要などない」
「えー、あるよー」
 輝人は唇をとがらせ、
「そういうのって早いうちから気を使っておかないとー」
「早すぎる」
「そんなことないってー。クラスでもダイエットしてるやつ結構いるしー」
「今どきの中学生は……」
 そこへ麗人が笑い声混じりに、
「ないない、ダイエットとかさー。それより輝ぃは背を伸ばすほうが先……」
 ドカッ!
「痛っ! てめっ、兄貴に向かって……」
「麗ちゃんが悪いんじゃん! 人のこと悪口言うから!」
「悪口じゃなくて事実だろー。事実、事実ー」
 ドカッ!
「てめっ……二度も兄貴を蹴って」
「ああもう、いいかげんにしろ、二人とも!」
 そのときだった。
「ん?」
 着信音が響き、麗人がスマホを手に取る。
「もしもしー。おー、どしたー」
 電話に出る麗人を前に、まだむすっとした顔をしたままの輝人。
 戒人はそんな末っ子の頭をぽんぽんと叩き、
「とにかく文句を言わずにこれを食べろ」
「牛乳かかってるし」
「よけて食べればいいだろう」
「えー」
 そのとき、
「マジでかー? まー、聞いてみるけどさー」
「?」
 困ったように頭をかく麗人を見て、戒人と輝人がけげんな顔になる。
「ふー」
 通話を切る麗人。
「誰からだ」
「前のバイトのときの知り合い。制作会社の」
「あー、テレビだっけ?」
「ネットとかいろいろさ。で、いまクイズの企画やってんだって、素人参加の」
「それがおまえに何の用だ」
「……出てほしいって」
「何?」
「そのクイズってのがさ……『イケメン兄弟スペシャル』ってーの?」
「イケメン……」
「兄弟……」
「なんか、出る予定だったやつらが急に出られなくなって? それで代わりに」
「……間に合わせということか」
「なー、ムカつくよなー。わかったわかった、兄貴がそう言ってたって断るから」
「待て」
「あ?」
「その……向こうも困っているのだろう。断っては関係にひびが入るというか」
「あー、いいのいいの、そんな仲いいってわけじゃねーし。それに結構大変だぜ、素人参加の番組ってさ」
「そうなの?」
「スタッフの態度もムカつくしさー。『こんなことも知らねえの?だから素人は』みたいな」
「それは大丈夫だろう。経験者のおまえがいる」
「だよね」
「えっ……なに、兄貴も輝ぃも出たいの?」
「出たいというか……困っているなら協力するのもやぶさかではないと」
「おれ、出たーい。なんか、賞品とかあるんでしょ?」
「まー、一応、優勝すっとハワイ旅行? 今どきハワイだぜ、ハワイ」
「ハワイか……」
「えっ、行きてーの?」
「いや、その、結果としてそういうことになれば行くのも悪くはないと」
「ていうか、撮り、今日なんだぜ? 夕方から」
「問題ない、今日は何の予定も入っていないからな。輝人は?」
「おれもフリー」
「てか、オレはフリーじゃねーんだよ」
「えっ」
「なんだ、何の用事だ」
「デートだよ」
「デート?」
「えー、だって、この間別れたばっかじゃん。もう新しい女の子?」
「いや、そっちじゃないほうっていうか……」
「?」
「ほら、年上と付き合うときは若いほうとペア? お約束じゃん」
「おい」
「んーだよー」
「おまえ、いいかげんそういう付き合い方はやめろ。しかも、付き合う相手はみんなおまえと同レベルというか」
「つったって、兄貴みてーに固い女とクラシック聞きに行ってどうすんだよー」
「それが大人の交際というものだ」
「いや、ぜってー違ぇし」
「とにかくさー」
 輝人は不満そうに頬をふくらませて、
「麗ちゃんはデート行くからクイズ出ないってわけー」
「だって一ヶ月ぶりのデートだぜ? ほら、あっちとちゃんと別れるまでもめてたからさー」
「信じられんやつだな、身内ながら」
「麗ちゃん、サイテー」
「とにかくいまもう一人まで切っちゃうわけにはいかねえのさ。頼む!」
「……わかった」
「えっ、マジ? さっすが、長男!」
「輝人。クイズには俺たち二人で出よう」
「そうだね、戒兄ちゃん」
「二人で? まー、いいや、それでも。向こうにはおれがちゃんと……」
「いや、先方にはおれが直接伝えよう」
「え?」
「本来なら兄弟三人で来るはずでしたが次男は急なデートのために来られないと」
「おい……」
「二股かけてた子のキープのほうとのデートで来られませんって」
「おい、輝ぃ!」
「手土産は何がいいだろうな、輝人」
「なんだろうねー。でも、お土産もってけば向こうも怒ったりしないよねー」
「そうだな。デートで麗人が来れないと知っても一応は顔が立つと……」
「わかったよ!」
 麗人はたまらず、
「行けばいいんだろ! 行けば!」
「最初からそう言えばいいんだ」
「大丈夫だよ、どうせまたフラれるんだから」
「てめぇ、輝ぃ……!」
「そんなことより!」
 戒人はここぞとばかりに長男の強引さを見せ、
「そのクイズというのはどういう問題が出るんだ?」
「兄貴……マジで勝ち狙いに」
「当然だ。出るからには」
「噂では相当難しいらしいぜ」
「相当ってどれくらい?」
「ちょっと聞いた話だけどさ。クイーンのヴォーカル、フレディ・マーキュリーが初めて出したソロ・アルバムの名前は……」
「ミスター・バッド・ガイ」
「うおっ!?」
「戒兄ちゃん、すごい!」
「なんで、知ってんだよ……」
「一般常識だろう」
「じゃあ、同じくフレディ・マーキュリーの歌で映画『メトロポリス』のサウンド・トラックにも収録されている……」
「ラヴ・キルズ」
「おー!」
「どんだけ、フレディ好きだよ……」
「フッ」

「そーなんだよー。そーゆーわけでさー。ちょ、おい、待てよ! 次! 次こそは絶対行くからさ! なっ! じゃ、そゆことで」
 やれやれという顔で通話を切った麗人を見て、戒人は、
「またフラれたか」
「いや、けっこー平気だった。こっちが必死の芝居すんのに大変だったみたいな」
「ふう。いいかげん、ちゃんと人と付き合えるようになれ」
「それよりさ! こっちはせっかくのデートすっぽかしてんだから、結果出さねえとさ」
「フッ、手抜かりはない」
 ドサドサドサッ!
「うおっ!」
「買ってきた」
「買ってきた?」
「クイズの本をだ」
「今どき売ってんだな、こんなに」
「準備にぬかりはない」
「まー、でも、これでハワイも目の前ってか? まー、オレはそこまで行きたいわけじゃないけどたまには……」
「ハッ!」
「っ……なんだよ、兄貴」
「水着はどこにしまってあったか」
「待て待て待て」
「何を待つ? 準備はぬかりなく……」
「そこはまだぬかりあってもいいんだよ。優勝してハワイでそっから水着だろ」
「しかし、ぬかりが……」
「だから、まずはクイズなんだよ!」
「わー、何このたくさんの本?」
「あっ、輝ぃ。兄貴がクイズの本買ってきてさー」
「今どきあるんだね、クイズの本。あっ、麗ちゃん、はい」
「サンキュー」
 プシュッ。
「おい」
「あ?」
「なんだ、それは」
「えっ、兄貴、早くも老眼が……」
「始まるか! おまえがいま輝人から渡されて飲もうとしているそれはなんだと聞いている」
「発酵させた麦汁?」
「ビールと言え、ビールと!」
「んだよ、いいだろー。風呂上がりの一杯はバキバキに効くっつーかさー」
「効かせるな! なんだその風呂上がりの一杯は!」
「正確には一本だけどさ。缶だから」
「缶か否かという話をしているのではない! なぜだと聞いている!」
「だから風呂上がりの一本は……」
「なぜ風呂に入っている!」
「だって一応人前に出んだぜー、汚いカッコしてけねーじゃん。どんな出会いがあるかわかんねんだしー」
「まだ出会いを求めてるのか、おまえは。とにかく、頭を使う前に酒など……」
「でも、あれじゃない? 頭がやわらかくなっていいんじゃない」
「む……」
「そーそー、輝ぃの言う通り。それより兄貴さー」
「む?」
「聞いとくけど、その格好で行くわけ?」
「なんだ? なにか問題が……」
「いや、まー、兄貴がそれでいいならいいけどさ」
「なんだ! 何かおかしいところがあるのか? 俺を人前に出せないようなそんな……」
「人前に出せないってわけじゃねえけど、もうすこしなんかさー」
「なんかとはなんだ」
「たとえば眼鏡? とかもうちょっと……」
「わかった」
「あ?」
「普段は必要がないからおまえのように服に無駄に金を使ったりはしないが、こういうときに備えて俺にも……」
「あっ、おい。……行っちゃったよ」
 麗人はあきれたように輝人に向かって苦笑する。
「なんか異常にやる気じゃね、兄貴」
「ハワイに行きたいんだよ、仲良く兄弟三人で」
「えー、マジでー? 男三人で行ってどうすんだよー」
「いいじゃん、たまには。それよりさ、ちょっと練習しない?」
「練習?」
「そうそう、クイズの」
「なら、兄貴の買ってきた本がこんなに」
「じゃなくてー。ほら、あるじゃん、早押しとか」
「あー、そっちの練習な」
「そーそー、やろやろ」
 バシンッ!
「痛っ」
 いきなり頭を叩かれた輝人はあぜんと、
「な……何すんの?」
「ほら、練習? 早押しの」
「押してないじゃん、叩いたじゃん! それに叩いたのおれの頭じゃん!」
「だって早押しボタンなんかねえだろ、一般家庭に。それにちょうど叩きやすい低い位置に頭があったからさー」
 ドカッ!
「痛ぇ!」
「ちょうど蹴りやすい位置に足があったからさー」
「なんだ、輝ぃ。やる気か」
「先にやってきたのはそっちでしょ」
「何ぃ……」
「なんだよ……」
 距離を取ってにらみ合う二人。
 と、そのときだった。
「おっ」
 着信音が響き、麗人がスマホを取り出す。
「あー、こっちから電話しようと思ってた。今日の入り時間だけど……」
 そこまで言って、麗人の言葉が止まる。
「……へー、そうなんだ。ん、いや、別に。わかったわかった。じゃなー」
 通話を切った麗人に、輝人が顔を近づける。
「制作会社の人?」
「んー、まー」
「で、おれたち、いつごろ行けばいいの?」
「……なくなったってゆーか」
「えっ」
「行かなくてよくなった」
「どうゆうこと?」
「なんかさー、代わりの素人が見つかったってーの? スポンサー関係の」
「あー、スポンサーには勝てないもんねー」
「だよなー」
「で、なに? もうおれたちには来るなって」
「来るなとは言ってねえけど……」
「どーするの?」
「えっ」
「だから……戒兄ちゃんのこと」
「あー、どうすっかなー」
「戒兄ちゃん、異常にやる気じゃん」
「だよなー」
「ちゃんとうまく言ってよ、麗ちゃん」
「ちょい待てよ。なんでオレが言うことになってんだよ」
「だって、こういう場合は麗ちゃんでしょ。麗ちゃんが持ってきた話なんだし」
「けど、オレはもともとそんなやる気じゃなかったしさー」
「戒兄ちゃんがショック受けないようにうまいこと言ってよね。次男として」
「いや、こういう場合はかわいい末っ子のほうがいいだろ」
「押しつけるのー? 兄のくせにー」
「いやいや、逆に弟が兄のことを想って……」
「何を騒いでいる」
「うおっ!」
「うわっ!」
 同時にのけぞる麗人と輝人。
「ええっ!?」
 ふり返った二人は共に驚愕の声をあげた。
「えーと……」
「戒兄……ちゃん?」
「フッ」
 自室で着替えてきたらしい戒人は心持ち得意げに胸を張った。
 その服装は――
「あ、兄貴、サングラスなんて持ってたんだ……」
「問題ない。ちゃんと度入りだ」
「どうしたの、その真っ赤っかのスーツ……」
「同じような服ばかり買っていては変化がないと思ってな。日ごろ着ないような服も後学のためにと」
 そして、二人同時に戒人の頭に視線が行く。
「………………」
 オールバック。
「兄貴……」
「なんかヤクザみたい」
「何?」
「!」
 またも同時にどきっとなる二人だったが、
「ふむ、すこし地味かとも思ったが、おまえたちの反応を見る限りそうでもないようだな」
「地味って……」
「そういう次元の問題じゃ……」
 二人は顔を近づけひそひそと、
「どうするよ、輝ぃ」
「どうするって、だから麗ちゃん言ってよ」
「なんでオレが言うことになってんだよ」
「そういうことになってたでしょ」
「何をこそこそ話している、二人とも」
「!」
 二人はあたふたと、
「えーと、その……」
「ほら、麗ちゃん!」
 輝人に前に押し出された麗人は、
「だから、その……あ、兄貴も飲まねえ!?」
「はあ?」
「だってその、ほら、景気づけ? みたいなさ」
「馬鹿を言うな」
 そう言いつつもあまり怒っていない様子で、
「まあ、浮かれる気持ちもわからなくないがな」
「だろー」
「ほら、真っ赤な戒兄ちゃんにカンパーイ」
「カンパーイ」
「おい、本気にするな。俺まで飲むわけには……」
「いやその、飲んでもいいってことになったんだよ」
「何?」
「………………」
 沈黙する二人。
 やがて輝人がおそるおそる、
「クイズね……出なくていいことになったんだって」
「は?」
「向こうで代わりが見つかったらしーんだよ。そんなのがいるなら、わざわざこっちに連絡すんなっつーんだよな」
「だよねー」
「おう、だよなー」
 戒人は、
「………………」
 真顔で沈黙したあと、
「……よかったじゃないか」
「えっ」
「代わりが見つかったんだろう。先方もほっとしたろうな」
「それは……そうなんだけど」
「でも、いいの、戒兄ちゃん?」
「いいも何も、俺はただ協力しようと思っていただけだ。それ以上も以下もない」
「いやまあ、兄貴がいいならいいんだけど」
「いいも何もないと言っているだろう」
「そ、そっかー」
「戒兄ちゃん、大人ー」
「フッ、当然だ。このくらいのことで……このくらいの……」
 ドターーーン!
「兄貴!?」
「戒兄ちゃん!?」
「こ、ここっ、この……このくらいのっ……こと……こと……こととととと……!」
「ってダメージ受けまくってんじゃねーか!」
「しっかりしてーっ!」
「兄貴ーっ!」
「戒兄ちゃーーん!」

ブラザーズ×××デイズ

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  • 小説
  • 短編
  • コメディ
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