SIS-II
世界は崩壊した。
西暦2050年。殺戮ウィルス。別名『END』の飛来により、全世界の経済、文明は崩壊。世界人口の半分が死滅した。
だが、それだけではなかった。
死滅した人間達は、その肉体を見たこともない化け物の姿に変え、人類に牙を剥いた。
なす術がなく、後退を余儀無くされた人類は、『END』を研究して、その対となる存在──生物活性ウィルス。別名『BAV』を生み出した。
──時は流れ、朽暦1年。
人類は壁に囲まれた場所で生活していた。
そんな彼等を守っているのは、BAVを身体に付与した超人集団。
『救助部隊』と呼ばれている彼等は、壁の外にいる人間達を救助していた。そんな彼等を、人々は英雄視する。
また元の世界に戻るまで、彼等は止まらない。
2人の青年も、希望に繋がる1歩を踏み出そうとしていた。
プロローグ
朽暦(きゅうれき)0001年。
見渡せば、荒廃した世界が続く。
崩れたビルに、無人と化した都市。
灰色の空の元には、草木が1つも生えていない大地が広がる。
しかし、1つだけ奇妙な物が存在している。
それは、高さ100メートルの壁で覆われた別世界。
外の朽ち果てた建物とは違い、そこには真新しい建造物が立ち並んでいる。
そして、その中枢には、巨大なタワーが聳(そび)えたっている。
その頂上で、何やら物思いに耽(ふけ)る1人の青年が、風を受けていた。
「やっぱり、何も飾られていない方が好きだな」
最近、彼は気が付いたらよくここに来て、空と地上を眺めている。一人になりたいわけではない。
何故か、この場所に導かれるように来ていたのだ。
青年は、随分(ずいぶん)と長くなった茶髪を、ゆらりと風に靡(なび)かせる。
海のように青かった空は、今では灰色の空へと成り果てた。
そして、地平線上に見える陸地には、ビルや建物が微かに見える。
だが、それらは崩れ落ち、過去に都会と呼ばれていた場所は、今では廃都と化している。
「……もう、1年か」
何故ここに来ていたのか、青年は今になっても分からない。
ただ一つ分かることは、この空や土、風や雲など、姿形がどんなに変わったとしても、あらゆる物が愛おしく見えてしまうということだ。
1年前──
西暦2050年。
死後転化ウィルス。
通称『END』が地球上に降り注がれ、世界のおよそ半分の人類がウィルス発症者となり、絶命した。
そして、最悪なことに、絶命した人間達は『ENDS』と呼ばれる化け物と化した。
ENDSは、人間と似ても似つかない容姿をしており、とてつもない身体能力と、硬い表皮を持ち合わせていた。
それゆえ、重火器等の通常兵器ではまるで歯が立たず、すぐに世界は混乱を極めた。
結果、発展途上国から先進国まで、|E N D《死後転化ウィルス》に屈する形となる。
日本も、過去に平和主義を謳(うた)い、軍事力を放棄していた事も相まって、ENDに抗う戦力は皆無。
壊滅的状態だった。
そして、その状態を変えようと立ち上がったのが、ある巨大組織。
疾病対策機関。通称『CDA』
彼らは唯一ENDに対抗できる|B A V《生物活性ウィルス》を開発し、それを人体に付与することで、超人的な力を得た。
|B A V《生物活性ウィルス》を得た彼らの戦果は素晴らしく、日本の東と西にある|C D A《疾病対策機関》に、人々を救助、収容する事で、最悪の事態は免れている。
救助された人々は、そんな彼らを『救助部隊』または『希望の部隊』と呼び、英雄視している。
中には彼らに従い、人々を助けようとする者達も現れた。
しかし、日本にはまだ沢山の人々が取り残されているのは事実。
その為、救助した人々の中から有志を募り、新たな救助部隊を数多く編成する。そして、更なる救助活動を展開させるのが、今の日本の目標であり、希望でもある。
2人も、その希望に繋がる1歩をようやく踏み出した。
「──おい、シュウ」
鋭い声音だが、どこか暖かみのある声。
シュウと呼ばれた青年は、聞き慣れた声を後ろから掛けられ、ゆっくりと振り返る。
「あぁ、サイハか」
凛とした声で、シュウはサイハという青年に応える。
そこには黒髪の、シュウと同い年と見られるサイハが、気だるそうに立っていた。
「そろそろ俺達の出番だ」
「分かった。すぐ行くよ」
黒髪の青年。サイハは、シュウの体を見て唸る。
「それにしてもシュウ……お前、またたくましくなったよな」
茶髪の青年。シュウは、サイハに指摘された体を見て、苦笑いする。
確かに、サイハに指摘された体は筋肉質で、とてもたくましい。
「まあね。でも、着痩せしてるんだけどな」
「それでもかよ」
二人は軽く笑い合う。
少し間が空き、同時に頷くと、CDAが所有するトレーニングルームへと移動する。
訓練から1年。
サイハとシュウの2人は、1年間、みっちりと訓練を積み重ね、年に1度行われる卒業試験に参加した。
1年間だ。
長く感じる者もいれば、短く感じる者もいる。
2人は前者。
あまりにも長い時間だと感じた1年だった。
何故なら、2人を突き動かす物が、他の訓練兵とは比べ物にならないからだ。
~ 第1話 模擬戦闘試験 ~
── サイハ視点 ──
エレベーターに乗り、地下20階で降りる。
トレーニングルームと呼ばれるここは、膨大に広がっていた地下空間をそのまま改造し、作られた場所だ。
何でも、核爆弾を20回落としても大丈夫な作りらしい。
既に100人と少しの訓練兵が、そこには集まっていた。
見事にやりきった様な清々しい顔をしている者や、自信なさげに顔を落としている者。
様々な人間がそこにはいる。
先程、訓練兵から一般の兵士に上がるための卒業試験が開催された。
およそ5時間に及んだ試験は、1年の間に培(つちか)った戦闘技術、戦術頭脳、救急方法。
様々な観点から訓練兵の実力を見て、戦場で充分な戦績が残せるかを教官が判断する。
また、それらの分野を平均化して、救済階級(きゅうさいかいきゅう)というものが与えられる。
階級は一番下のF-から始まり、一番上ではSSSとなる。
そして、俺の目指すべき最低の階級はA-。救助部隊の入隊資格が得られるからだ。
何故ここまで階級にこだわるのか……それは、いわば出世だ。
救助部隊に入隊することが出来れば、自分のキャリアにも繋がるし、救済階級が高ければ高いほど、出世の幅が広がる。
自分の世界が変わるのだ。これは何としても救済階級をあげなくては……。
というのが、普通の考えだ。
訓練兵のおよそ8割の人数が今回の卒業試験に参加しており、非参加者の中にはもう1年訓練を受け、確実に合格を決めようとしている者達。
また、このまま世界が平和になるまで、無駄な訓練を呑気(のんき)に受け続けようとしている者達も、少なくとも存在する。
「んなことじゃつまんねェよ」
無論、俺とシュウは別だ。
1年前、誰よりも救済意欲を狩り立たされた俺達には、この卒業試験は成長の過程にすぎない。
出世等、眼中に無いのだ。
──あの日の決意は、揺らいでなんかいない。
数分待つと、トレーニングルームの中央に位置する高台に、教官が登った。
1年前と変わらず、目が異様に血走っており、呼吸も荒い。
酒と煙草のやりすぎだろうな。
訓練兵の間では『ハゲ教官』と呼ばれているらしいが、本名は『東堂(とうどう)』というらしい。
一年前と変わった事と言えば、真相が一切の謎に包まれた、急激なハゲ化くらいだろう。
「ちゅううもおおくッ!」
そしてこの馬鹿みたいに大きな声だ。
毎度のことながら、俺を含め、訓練兵全員の鼓膜(こまく)をキリキリと震え上がらせる。
「これより、最終試験である、模擬戦闘試験。成績優秀者同士での決闘を行う。なお、今回は異例であり、成績優秀者が複数名いるため、2対2の決闘とする!」
そう、話には聞いていたが、今回は優秀な奴が多いらしい。その為、この模擬戦に勝利することが出来れば、『例の部隊』に所属出来るかもしれない。
これは何としてでも、勝利する必要がある。
「それでは、まず、No.88、前へ!」
「へい」
これは俺の番号だ。そして、俺のペアは……。
「次、No.100、前へ!」
「は、はい!」
凛とした声が辺りに響く。
俺のペアはシュウだ。
シュウは俺の元へと駆け寄ってくる。
「頑張ろうね、サイハ。宜しく!」
「あァ、宜しく頼む」
実は……事前にだが、自分のペアとなる相手は知らされていた。
それがシュウだった。
シュウは俺の親友であり、戦友だ。
改めて、シュウがペアで良かったと思う。
「No.88とNo.100、この2名をもって、チームAとする!」
俺達のチームは決まった。後は相手のチームだが……。
「どうせ俺だろ?」
上ずった声でしゃしゃり出てきたのは、訓練を受けていた時に、よく俺に話し掛けてきた田辺(たなべ)だった。
田辺は、今回の戦闘技術試験では3位を取っている。気は抜けない。
猿のような顔立ちに角刈りと、まさしく猿と呼んでいいのではないか、そう思える男だ。
「む……そうだが、呼ばれるまでまたんか! No.95!」
「すいませーん」
教官の指摘に対し、軽く応える田辺。
コイツの性格は、1年を通してよく分かった。他人を下にしか見ていないクソ野郎だ。
「次、No.45、前へ!」
「はい」
清涼な声を放ち、静かに前へ出てきたのは、よくシュウと戦闘訓練を行っていた清水だった。
清水は、今回の戦闘技術試験で2位という好成績を叩き出している猛者だ。気を抜いたら一瞬で負けてしまう。
顔は少々イカツイが、物静かな性格だ。だが、どこか熱いものを持っている奴だ。
「……って、まてよ」
ここで1つ疑問に思う。
相手チームの戦闘技術の高さに。
「No.95とNo.45、この2名をもって、チームBとする!」
ちなみに俺はというと……。
「よお、零乃。お前大丈夫なのかぁ? 何せ、戦闘技術の試験では50位だろ? ここにいちゃまずいんじゃねーか? 自分の身の為にも」
満面の笑みで田辺は声を掛けてくる。
思わず舌打ちが出てしまう。
田辺……本当に気に食わない奴だ。
すると、教官は咳払いをし、模擬戦闘について説明し始めた。
「これから模擬戦闘を行うにあたって、ルールを説明する。まずはそこにある、各々好きな武器を取り、戦ってくれ」
教官が指を差した方向には、黒い敷物が引かれてあるテーブルがあった。その上にはナイフやら剣、様々な武器が置かれてある。
ただ、刃物等の刃の部分は、切れないように細工が施されてある。
「武器の殺傷能力は限りなく無くしてあるが、戦闘不能と見られる相手に、継続して攻撃するようであれば、失格とする。
また、フィールド外に出た者も失格とする。
医療班がいる為BAVの能力は使用して構わんが、威力にだけは気を付けるように。
後はどんな手を使っても構わん。
相手チームを無力化したチームの勝利とする!」
『どんな手を使っても構わない』か。面白い事になりそうだ。
俺は1つの作戦を思い付き、それをシュウの耳元で告げる。シュウは不思議がっていたが、すぐに納得してくれた。
この勝負、必ず勝たせてもらうぞ。
早速、俺とシュウは、自分の装備を選ぶ事にした。
俺は小型のナイフを選んだ。非力でも扱い易く、尚且つ攻撃も早く繰り出せる。
シュウは刀にしたようだ。シュウであれば、刀であろうと、俺のナイフよりも素早く攻撃を繰り出せるだろう。
そして、シュウはテーブルに引かれていた黒い敷物をひっぺがし、自分の体に纏(まと)わせ始めた。
「サイハ! これ、中々かっこいいと思わない!?」
シュウは目を輝かせながらはしゃぐ。
白い訓練用の服を、黒い敷物が覆い隠す。
確かに、まるでマントを羽織っているようで、中々かっこいい。
「各々、準備は良いか?」
教官が声を上げる。どうやら、相手チームの準備が終わったようだ。ここからでも見える。
田辺は短刀。清水は刀か。
俺はすかさず手を上げる。1つ忘れていた事があった。
「どうした? 88番」
「ちょっとトイレ」
一瞬で場が沈黙したのが分かる。
だが、仕方がない。生理現象なのだから。
「……分かった。行ってこい」
そう言われると、俺は急いで駆け出した。
ーーー
位置は記憶した。
残り2分。
腕に付いている特殊道具(ガジェット)の時間を確認する。
特殊道具(ガジェット)とは、CDAの技術者が開発した、ユニークな道具のことである。
これらは非常に便利だ。
特に、この腕輪型のガジェットは普及率も高い。
AIとリンクしているこのガジェットは、道に迷ったりした時等は、親切にもホログラムを展開して、音声解説もしてくれる。
作ってくれた技術者に感謝だ。
戻って来ると、フィールドの準備が整っており、全員が中に集まっていた。
円形のフィールドを、青色の光の壁が囲んでいる。恐らく、あれから出たら失格ということだろうな。
フィールドは半径50メートル……広すぎず狭すぎずか。
俺もフィールド内に入り、シュウの隣に立つ。
相手チームを見る。すると、田辺がニヤケ顔でこちらをみている。アイツの狙いは確実に俺だろうな。
「それでは、チームA、チームBをもって、模擬戦闘試験を行う! 各々全力で戦うように!」
教官が合図をしようと手を上げる。
両チームに緊張が走る。
フィールド外の訓練兵達も、皆、固唾(かたつば)をのんで見守っている。
「始め!」
教官が手を下ろす。
その合図と同時に、清水が肉薄(にくはく)してきた。
狙いはシュウだ。
──突如、清水の回りを蒸気が覆う。
かと思えば、その蒸気を凪ぎ払い、清水は前傾姿勢で突っ込んできた。
清水は身体能力を強化したのか、先ほどよりも動きが倍近く早い。
清水のBAVの能力は、自身の身体能力を強化する事だ。
BAVは、まだ謎が多いとされる力であるが、その力は、大きく分けて3つある。
1つ目は、自身の身体能力を大幅に強化する『身体強化型BAV』。
2つ目は、炎や水、雷や風、重力等を発生させたりするなど、まるで魔法のような能力が扱える『異能型BAV』。
3つ目は、自身の体を生成、変形させたり、重度の傷を負っても治療することが出来る『増殖型BAV』。
いずれもまだ謎が多いが、これらが主なBAVの力と言われている。
清水はシュウの元にたどり着くと、即座に抜刀──鋭い斬撃を浴びせる。
それにはシュウも抜刀で応じ、火花が弾ける中、つばぜり合いが起こる。
シュウが清水の刀を押し返すと、清水はすかさず横に刀を振るう。
──が、シュウはそれを簡単に弾く。
1合、2合、3合……。
激しい打ち合いが始まる。
しかし、最初は攻勢に転じた清水も、シュウが前に踏み出すと後退し、防戦一方になる。
シュウは今回の戦闘技術試験での成績は、郡を抜いての1位だ。
戦闘技術試験とは、BAVを用いての、対人戦闘スキルを見る試験のことだ。
シュウのBAVの能力は、今のところ不明だ。
何でも、BAVを身体に付与した時、訓練兵全員が能力を扱えたのに対し、シュウは能力が発現すらしなかったと言う。
つまり、シュウは能力が扱えない状態で、戦闘技術試験1位という結果を残している。
シュウの対人スキルには、BAVを扱った清水ですら太刀打ち出来ない程だ。
残り1分か。
「お前の相手はこっちだぁ!」
奇声が聞こえたかと思い、そちらを見ると、何やらバスケットボール程の火球が、高速で俺に向かって飛んできた。
「くそ!」
瞬時に横へ飛び回避する。
目標を見失った火球はそのまま直進していき、壁に着弾。
火球は凄まじい勢いで爆発した。
あれに当たっていたら、軽い火傷ではすまなかっただろうな。
「おいおい~。後ちょっとのとこで避けるなよな……」
残念そうに肩を揺らす田辺。
だが、もうその手には新たな火球が生み出されている。
田辺のBAVの能力は異能型。特に炎を生成することに特化している。
俺は田辺に背を向け、走る。
俺が走った瞬間。先ほど立っていた場所に、紅蓮(ぐれん)の花が咲いた。
とても温かいとは言えない。猛烈な熱波が俺を包み込んだ。
あまりの熱さに顔が歪む。
俺は戦闘が苦手だ。
俺のBAVの能力は重力操作。
自身から5メートル離れた所までの重力を、上下左右へ自在に操る事が出来る。
力の大きさ、また、力を及ぼす場所、面積も操れる。
その気になれば、壁に大穴だって開けられる。
だが、重力を操作するには時間が掛かる。それも、離れれば離れるほど……だ。
俺から1メートル離れた場所の重力を操作するのにも、最速で5秒は掛かる。
つまり、俺のBAVの能力は戦闘に不向き。
先ほど田辺が言っていた通り、俺は今回の戦闘技術試験では50位だった。
50位だ。田辺や清水のような成績上位者とは次元が違う。
まあ、シュウはさらに次元が違うのだが。
「おいおい零乃ぉ。いつまで逃げ回ってんだよ~。
早く俺にやられろよ~。お前をやれねーと、清水の助太刀いけねーだろ?」
すぐ真後ろから、上ずった声が聞こえてくる。
田辺達の作戦は、まず、戦闘能力が高い清水がシュウを押さえる。その間に、田辺が俺を倒し、最後に、シュウを2人で叩くつもりなのだろう。
田辺達の作戦は分かっていた。何故なら、その作戦が一番シンプルであり、効率的だからだ。
そして、俺達の作戦は──
「だから、時間稼ぎしたって無駄だっての。早く俺にやられろ! お前の作戦は丸見えなんだよ!」
俺が粘る間に、シュウが清水を倒す。そして、最後に田辺を叩く。俺達の作戦を、田辺はそう踏んだようだ。
とうとう、フィールドの端へと追い詰められた。
田辺はニヤケ顔で俺に近付いて来る。
「やっと追い詰めたぜ。零乃ぉ。
てっきりお前の事だから、何かしでかして来るんじゃないかと思ったが……それは杞憂(きゆう)だったようだなぁ!」
ジリジリと近付いて来る田辺。
その表情は、まるで勝ち誇ったような得意顔だ。
「……はっ」
「何がおかしい?」
しまった。
笑いが堪えきれなかった。
田辺の顔がひきつる。
確かに、俺達の作戦は時間稼ぎが目的だった。
しかし……。
「1つ教えてやるよ。田辺」
「な、なんだ?」
俺がゆっくりと前に歩き始めると、田辺は遂に、後退りし始める。
わざとらしい笑みで、田辺へと向き直る。
「お前の杞憂とやら、どうやら勘違いのようだな」
「ど、どういう──」
カウント0。
突然爆発音が鳴り響く。
かと思えば、照明が全て消え、トレーニングルーム全体が暗黒に包まれる。
さあ、ラストスパートだ。
SIS-II