幼馴染と高校で再会して偶然同じクラスで席が近くなったら……これはもう恋に発展するでしょ? 四話
大きさよりも形
は、初めて女子に告られた。
悪い気はしない。相手は学校一の美少女だ。
何が悪霊だ。あの胡散臭い占い師め。
ツタンカーメンに二万円払わなくて良かった。
付き合ってはいない。
「付き合って欲しい」と言われたわけではない。「好き」と言われただけだった。返事はいらないと言われた。
女ってよくわからないな。まあいい。俺には結がいる。
結も噂は耳にしているのだろう。あれから結の機嫌が悪い。俺が声をかけても、プイと顔をそらす。
やきもち……か?
そりゃあ、面白くないよな。俺に女の子が言い寄ってきたら……。それも相手はあの小林亜里沙だ。
誰が見ても可愛いものは可愛い。イケメンはイケメンだ。女子が騒いでいる佐々木が、悔しいけど男から見てもイケメンなように、小林亜里沙は誰が見ても可愛い。とは思う。
だけど俺にしてみたら結のが可愛い。あの恥ずかしそうにちょっと怒った顔も。俺が声をかけると見せるあの顔。
俺は結のその顔見たさに、ちょくちょく声をかけるようになった。
でも、結は素っ気ない。
まあ、俺が悪いんだけど。
あの日、あの水泳大会の日。模範演技を終えた俺は結に声をかけた。結は恥ずかしそうな顔をしていた。俺の泳ぎを見て惚れ直したのだろうか。そんなことを思って調子に乗っていたのは確かだ。
だけど、俺と一緒にいたあいつが言ったひと言に。
俺は……。
あいつはただ何気に口にしただけだった。つい、口から出てしまった。それだけだ。でも、女子に聞こえるところで言うのはまずいだろ。
あいつのせいにするわけではないけど、まずいよ。まずい。
繰り返し言う。
あいつのせいでは断じてない。
「今の娘、胸でかっ!」
結も結と一緒にいた女の子もお世辞にも大きいとは言えない。ふたりはちょっと不服そうな顔を見合わせた。言った本人は何も気にしていない。
「でかけりゃいいってもンじゃないよな」
別にそいつや彼女たちを庇うつもりで言ったわけではない。素直な感想。俺は巨乳に興味はない。大きさよりも形だ。お椀型のちょっとツンと上を向いた美乳。それも手にすっぽり収まる小ぶりなおっぱいが好きだ。
彼女たちの不服そうな顔は変わらない。俺は右の手のひらを見つめながらもうひと言付け足した。
「俺はさ、こう、手のひらに収まるくらいがいいかな。ほら、こんな」
俺はつい。
そうだ。つい。目の前にあった俺の手にちょうどいい大きさ。
みんなの視線が俺の手に集まっていた。そいつが俺のとなりでごくりと喉をならした。
結の友達が零れ落ちそうなほど目を見開いて見つめた。
「あっ……」
俺が声を出したと同時に、俺の頬に激痛が走った。
俺はとっさに結の水着の胸から手を離し、頬に手を当てた。頬はじんじん言っている。
俺が悪い。そうだ、俺が──。
じん、じん、じん……。
幼馴染と高校で再会して偶然同じクラスで席が近くなったら……これはもう恋に発展するでしょ? 四話