僕らはゾンビ対策官 青池穂色 β
この話は「小説家になろう」にも載せています(2018,2,9より)
起きて……起きて……
どこからかそんな声が聞こえた。しかし私は既にゾンビになっている。だからその声は人間だった頃に聞いた一種の思い出なのだろう
私がそう考え、無視していると突然体が揺れた
「え?」
私は目が覚めた。目を開けると目の前には佐伯がいた
「良かった。六時間経過したのよ」
佐伯は私の右手を掴みながらそう言った。しかしあまりに突然だったため、私は何が起きているのか理解出来なかった。しかし自分の体を見てみるとゾンビではなかった
もしかしたらゾンビに噛まれたという所から夢だったのではないか……と考えゾンビに噛まれた左腕を見た。けれどそこにはくっきりと歯形がついていた
「つまり私は生き残ったと?」
私は自信なくそう聞いた。すると佐伯は「そうよ」というと立ち上がった。そして私を監獄の外に連れ出した
「それじゃあ約束通り、このあと貴方がどうなるか教えてあげる。ついてきて」
佐伯はそう言いと歩き始めた。そして鉄で出来ている扉を開け、奥の部屋に入っていった。なので私も佐伯の後を追って移動した
「ここの扉はコレがないと通れないから素早くね」
佐伯はそう言うと手帳らしきものを取り出した。そして先程通り抜けた扉より頑丈そうな扉の前に移動した
「これは?」
「これ?あぁ、本館への扉だよ」
さんは手帳を開き、扉の横にある機械に押し付けた。すると『ピピッ!』という音がなると扉が自動で開いた
「素早く抜けてね」
佐伯はそう言うと扉を抜けた。なので私も扉を抜けた。すると私が通るとすぐに扉が閉まった
「佐伯中等、お疲れ様です」
突然佐伯と同じように銃を持っている男性が帽子を取り、そう言った
「七原さんに報告頼むよ」
「了解です」
佐伯がそう頼むと話しかけた男性は、帽子をかぶり走って行ってしまった
「あなた立場的には偉い人?」
私はそう聞いた。すると佐伯は首を横に振ってこう言った
「いえ、別に偉い立場の人間じゃないわ。ただ階級的には他の人より一つ上ってだけ」
佐伯はそう言うと立ち止まり、近くにある扉を開けた。なので私は佐伯と共にその部屋に入った……
「ここは?」
私はそう聞いたものの、この部屋を見たことがあるような気がした。それも一回ではなく何回も……
「ここは取調室よ。殺所にはゾンビだけではなく、ゾンビに関わる犯罪者も送られてくるからね。その時に使うための部屋なの」
「けど何でここに?」
確かに殺所に取調室がある理由は分かった。しかし何故私をこの部屋に案内したのか分からなかった。すると佐伯は私を近くにある椅子に座らせた。そしてこう言った
「単刀直入に言うけど、貴方にはゾンビ殲滅局の人間になって貰うわ」
「え?」
私はそれを聞くとついそう言ってしまった。私は少し前に佐伯からゾンビにならないと言われたばかりだった。なのでてっきり元の仕事…… 警察官の仕事に戻れるとばかり思っていた
「貴方は確かにゾンビに噛まれたけど、ゾンビにならなかったわ。けれど本当にゾンビにならないかどうかは分からないの」
「えっと?」
私は佐伯の言っている意味が理解できずそう言ってしまった。すると佐伯は私の正面にある椅子に座るとこう言った
「これは言ったかも知れないけど、過去に噛まれて無事だったのは四人。この四人はその後も人間でいられたけど、貴方が大丈夫かは分からない……」
「そう言うことね。つまり私がゾンビになったとき、いつでも殺せるようにするためってことね」
私がそう言うと佐伯は気まずさから目を反らした
確かに噛まれて無事たった四人はその後ゾンビになったりなどしていない。けれど四人だけではデータが足りず、確実に今後ゾンビ化しないという保証ができなかった
「だから貴方にはここで働いてほしいの。もちろん貴方のいた職場には此方から説明するから」
佐伯はそう言うと私に一冊の手帳を渡してきた。なのでその手帳を開くと、そこには『青池穂色 下等管理官』と書かれていた
「ふ~ん。因みに武器って持てるの?」
私は渡された手帳を閉じるとそう質問した
私は以前からゾンビ対策官が使っている剣や刀、槍といった殺傷能力の高い武器を使ってみたいと思っていた。なのでゾンビ対策官になるというのも悪くないと思っていた
「銃なら殺所では常時持つことになってるけど……」
佐伯はそう言うと私に銃を見せた。その銃には色々なものがついていてゴツかった
「違う違う、刀とか槍だよ」
私は興奮ぎみにそう言った。すると佐伯は腕を組み、何かを考え始めた。そして少しするとこう言った
「近接武器を持ちたいなら本部の対策課か警備課に行かないと……殺所は銃しか使ってないから……」
「対策課?警備課?」
私は警察官だったので、警察については知っていた。が、ゾンビ殲滅局については何があるか全く知らず、佐伯の言った『対策課、警備課』が何なのか分からなかった
「簡単に言うと、警備課は車に乗って町をパトロールしている人のこと。対策課はゾンビに関する捜査をする人のことよ」
「その二つのうち、どっちがゾンビと多く戦うの?」
私はそう質問した。もちろん私は警察のときからゾンビを沢山殺したかった。なのでゾンビ対策官になるなら、ゾンビを沢山殺せるほうに入りたかった
「それなら対策課ね。警備課は警察でいうと警ら隊みたいなものよ。それに対して対策課は捜査課みたいなものだし…… ただ対策課は仕事内容がハード過ぎて、やりたがる人がいないんだけどね」
佐伯はそう言うた苦笑いした。しかし私はそんな対策課に興味を持ち始めた。なので私は佐伯にこう質問した
「私はどこに配属させるの?出来れば対策課が良いんだけど!」
私は立ち上がると佐伯にそう言った。すると佐伯は少し引き気味にこう言った
「まず青池さんは私の指導下で基本的な技術を学ぶことになってます」
「じゃあそれが終われば……」
「なれます。なので落ち着いて!」
佐伯はそう言うと私の肩を掴んだ。私は少し興奮しすぎてしまったのではないかと思った。が、今の佐伯の言葉を聞いて私には目標が出来た
それは佐伯のもとで技術を学び、『対策課のゾンビ対策官』になること。その為なら私は何だってする
私は心の中で強くそう思った……
僕らはゾンビ対策官 青池穂色 β
佐伯蓮(さえきれん)
一等管理官
武器……サブマシンガン
拳銃