月の下でしゃぼん玉を飛ばしている
満月の下で、しゃぼん玉を吹いている。
私はうみ出して、しゃぼん玉たちはふわふわ飛んで、しんでいく、その繰り返しを月が照らしている。ざつに吹くとたくさんうまれてしんだ。ていねいにていねいにゆっくり吹くと、ひとつ、うまれてすぐしんだ。
しゃぼん玉は、飛ばされているのかもしれない。
だとすれば、あまりにもかなしく、淡々とした関係だ。私は懲りもせず吹き続けた。
月は永遠にここにいると思った。その無責任な無限性、夢幻性。
とめどない泡沫の生き死にの繰り返しの上で、月の光は、病弱な久遠の光は、あまりにもあたたかい。
…きっと月もゆっくり飛ばされてしんでしまう。
石鹸水からしゃぼん玉がうまれる。
水平線から月がうまれる。
一つとして同じものはなかったから、覚えられるものだけを愛せばいい。
月の下でしゃぼん玉を飛ばしている