詩集.想いをこの束にして (三束目)
詩集.想いをこの束にして (三束目)
愛の編 十一
今日は
ちょっと
お洒落をしよう
季節の
ルージュを
変えるみたいに
心の色も
装いを
新しくして
誂(あつら)えたばかりの
空色の
スーツを着て
君の横で
待てば
やがて
やって来る
パレードが
僕らを
迎え入れてくれる
先頭で
踊る
泣き虫の
道化師は
実は
僕の旧い友達で
世界で一番の
「涙」の
遣い手なんだ
哀しみを
七色に
替えて
綺麗な橋に
渡してくれる
踏み出した瞬間
こぼれ落ちた
君の笑顔が
渡り切った
橋の
ずっと
高くから
降り注いだら
項垂(うなだ)れた
憂鬱たちも
空を見上げ
うっかり
微笑んでしまうだろう
そうしたら
今度は
僕らが
パレードを
引き連れよう
「希望」の
遣い手として
君が先頭に立つんだ─
愛の編 十二
知らなかったよ
そんなにも
淋しい
心で
いたなんて
寄り添った
すぐ横で
独りきりで
泣いてたなんて
ため息の
向こう側で
戯ぶ
悲しさは
僕も知ってる
だから
このまま
帰したくない
まだ僕は
青の季(とき)を
抱き締めて
あの日の君と
時々
話すんだ
止まない雨はないよ
そう言って
笑ってた
あの日の
君と
探しておいで
きっと近くで
雨空を見上げ
今を
笑ってる
君がいる
僕は
ここで
精一杯
この
腕を広げて
君の帰りを
いつまでも
待ってる─
愛の編 十三
風車見て
笑った
混ざり合う
色模様が
可笑しくて
からから
立てる音が
懐かしく
思えて
いつからだろう
玩具(おもちゃ)で
戯ばなくなった
俯いて
空も
見上げなくなると
哀しみを
独り
数えるようになった
優しい
眼差しから
目を背け
辛さに
慣れようと
無理に
笑ってもみせた
平気だよ
だいじょうぶ
いつでも
そう応えて
温かいね
あなたの掌は
いつも
ごめんね
ありがとうが
上手く言えない
でも
あなたの
青空を
わたしも
一緒に
見上げていて
いいかな─
愛の編 十四
塞ぎ込んでないで
今日は
街に出よう
ちょうどいい
雨空だから
泣き顔も
鉛色が
隠してくれる
もう直きに
僕の
パレットが届くんだ
あいにく
明るい色しか
乗せてないけど
そうだ
消えたりしない
お日様色にしよう
君の涙を
塗り替えたあと
もう一つだけ
教えてあげられる
ワルツを
踊りに行こう
4分の3の
拍子は
君が
俯いてきた時間
今度は
向き合って
掌を繋ごう
浮き足立って
心がリズムに
追いついて
君の微笑みと
重なり合ったら
僕も嬉しくなって
とっておきの
ステップを
見せてあげる
さあ
涙が乾いたら
僕の
足元に合わせて
朝(あした)に向けて
ゆっくり
ターンしよう─
愛の編 十五
嬉しいよ
覚えてくれてたんだね
苦しみや
哀しみの
列の先に
立つと云う
売り子の話を
耐え抜いた
その
掌にだけ
渡される
「幸せ」の
欠片(かけら)の
ことを
遠い昔に
生まれ
温かな海の
水面(みなも)から
そっと
顔を上げ
憧れてた
空人(そらびと)が
砕いて
贈り物に
してくれた
夜空に輝く
星の一つを
大人になる
願いを込め
預けてたけれど
やっと
戻してもらう
時が
来たんだ
煌(きらめ)いて
ときめきながら
君の
訪れを
ずっと
待っていた
安心したよ
憂うほど
負けない
君の心に
変わらずに
優しい
君の心に
今
僕の祈りも
その
掌に
一つ乗せてあげよう─
詩集.想いをこの束にして (三束目)