ワードゲーム

私は死にたいを覚えた。
夕暮れの帰り道を一人歩いてふと、幸せを感じる。これが私の望む日々だと体感できた。それだけでなぜか死を思った。そんなつもりは無い。この日々を台無しにはしたくなかった。あの頃はまだ。
日が落ちて辺りは電灯を頼りにして歩く時間帯、また私は、今度は孤独を感じた。通り過ぎた家の灯りから、誰かは知らないけど話し声が聞こえた。二人以上はいるのを聞き取れた。この会話が一人で歩く私に傷を付けていく。通り過ぎた風が傷口に妙に染みて、やけに肌寒く感じた。あの幸せを壊してやりたくは無い。あれは私の望むものじゃないから。
母親のメールが私をやるせなく苛立たせた。しっかり自立して、仕送りだってして。私一人でも平気だよ?どうしてそれが伝わらないのかわからなかった。伝えようともしなかった。
一月が雪融けみたいに自然に過ぎた。目の前にあって目を向ければ気付けた距離の出来事すら、今の私には遠い向こうのことだった。日々をやり過ごす。頑張らずとも明日は来て、どれだけ急かしても今日は簡単には終わってくれない。
明けない夜は無い。止まない雨もない。陽はまた登る。昨日の失敗が今日の道しるべ。前だけ向いて。振り返らずに。後悔せずに。背負わずに。ただ息を吸い。ただ息を吐く。元気を出して。頑張って。

言葉は裏切る。簡単にウソをつく。日が昇る時、それは労働時間の始まりの合図。雨が止んだとき、空は決して晴れたわけじゃない。また別人が代わりをこなして。失敗に目を見張られて、成功が近寄れない。後悔しかない。前なんて向けない。振り向く力がない。背負うしかない。呼吸なんてやめたい。
生きていたくて生きてるんじゃない。
なんて反抗心が毎日の私を覆う。好きな反逆が世間への抵抗としてぶつかり、和解は不可能で、互いに主張だけが頭上を通り過ぎていく。どうでもいい。
生きたくて生きてるんじゃない。
ただ死にたくないだけだ。

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好きな言葉はなんですか
それはあなたをどう変えましたか
どうか安らかに眠れますように。

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  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-06

Copyrighted
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