夜道遊歩

暗闇を目指したものと暗闇に惹かれたもの。
その行く末は.......

夜道歩き

いつからか、私は歩いていた。
この暗いそして長く狭い夜道
を。
最初は戸惑った、がしかし徐々
に暗闇にも慣れ、いつしか歩く
だけではつまらぬと歩きながら
出来る遊びを考えていた。
だが、遊びとはそうそう見つか
るわけでもなく、ただただつま
らぬ歩みをいつしか楽しんでい
た。
最初はあまり道を見てはいなか
ったが、左右上下をまるで幼子
の最初の光景のように何度も繰
り返し食い入るように眺めた。
次第に見えてくる。
道の光景が。
住宅の塀が見えてきたしかし、
徐々に塀が無くなり、木々が鬱
蒼と茂りそして何も無くなる。
暗い、とても暗い。
不安と恐怖が入り混じったため
息をつきながらも私はまだ歩み
を止めぬ。
何故歩みを止めぬのか。
それは幾度となく考えたが答え
はまだ無い。
きっと答えは私の中にある。
そう信じながら歩んでいく。
先の見えない暗い道を、狭い道
を。
不安と恐怖に駆られながら。
ゆかねばならぬと使命感に駆ら
れながら。

人影

そこには、人影があった。
刹那その人影は私だと感じた。

薄暗い街灯の下でゆらゆらと揺
れていたが、やがて歩き出す。

人影を見失うまいと必死に追い
かけて見るが、それはまるで道
に吸い込まれてゆくように消え
た。
気味が悪くなるも消えていった
それが気を引いて離さない。
次第にそれを追うようにその道
を駆けてゆく。
薄暗く人の気配もない寒いその
道を駆けてゆく。

あまりに唐突ではあったが、ふ
と上を見上げてみるとそこには
満点の闇が広がっていた。
私はやがてその闇に惹かれてい
った。
あまりに恐ろしくそして綺麗な
その闇に私はただ惹かれていっ
たのだ。
いくら手を伸ばそうとも届かぬ
が、その闇にはそうをしてでも
惹かれゆく魅力があった。
何故と問われても答えは見つか
らない魅力が。

私は考えるため立ち止まる。
あの人影ももしやこの闇に惹か
れていったのやも知れないと。
それにしても人影はどこに消え
ていったのだろうか。
そんな事を考えながらしばらく
闇を眺めていたが、遂に考えは
行き場を無くし人影のことへと
戻っていった。
私はただこの闇が人影であった
らと突拍子もない事を思いそし
て目を閉じた。

夜道遊歩

夜道遊歩

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-04

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  1. 夜道歩き
  2. 人影