満月の蜜が滴り落ちた。女のようなにおいを漂わせ、人々を蠱惑する。


月を、目指そうと思った。
今までずっと鏡面の月に溺れていたのだ。
あれはきっと果実だ。
あの月を、舐めて齧って味わう冒涜を犯したい。
防波堤の上を歩けば君に辿り着くように、水平線の上を歩けば月に辿り着くと思った。


歩いた。
歩き続けた。
そして見えたのは巨大なハチの巣だった。
ハチはじっと僕を見た。そしてもう一匹のハチが来て、僕の両目を刺した。


水平線を辿って僕は帰った。
防波堤を辿っても君はいなかった。
あこがれ続けた無限性と、女のようなにおい_

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-03

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