蜜
満月の蜜が滴り落ちた。女のようなにおいを漂わせ、人々を蠱惑する。
月を、目指そうと思った。
今までずっと鏡面の月に溺れていたのだ。
あれはきっと果実だ。
あの月を、舐めて齧って味わう冒涜を犯したい。
防波堤の上を歩けば君に辿り着くように、水平線の上を歩けば月に辿り着くと思った。
歩いた。
歩き続けた。
そして見えたのは巨大なハチの巣だった。
ハチはじっと僕を見た。そしてもう一匹のハチが来て、僕の両目を刺した。
水平線を辿って僕は帰った。
防波堤を辿っても君はいなかった。
あこがれ続けた無限性と、女のようなにおい_
蜜