狭い
雨の降る街で、君を待っている。この時間が僕は好きだ。君のことを愛している、という感じがするからだ。愛には輪郭がないが、今はこの傘で出来た小さな空間、水で出来た輪郭、が僕の愛であるように思えた。だってこの水の牢獄では君のこと以外を考えるのが許されない。雑音と寒さで頭がかき乱される。吐いた白い息には君が映る。君のこと以外何も見えなくなる。雨の中で、君のことだけを待っているのだ。ただ君のためだけに、君を待っているのだ。だから僕は君を愛している。君は僕を愛しているだろうか。君は来るだろうか?この雨の中、僕に会いに。利き腕にあたる雨が冷たい。疑念は水溶性だった。僕は君のことを信じているということも含めて君のことを愛しているということも含めて君のことを待っているのだ。打ちつける雨の音と降ろした腕時計の重さ。早く君に会いたい。
狭い