変わらない人へ向けて
「ふん、また来たのか。...いいよ。教えてやる。お前みたいな人はもう如何ともし難い。ドツボ、ってやつだ。偉そうに先人の言葉をかっぽじって、今を生きることに懸命な人を見下しては部屋の隅で誰にも聞こえないよう小言を言う、その癖自分には大甘だ。『私が何も知らないことを私は知っている』?誰かから盗ってきた、口先だけの言葉だろう。お前の大好きなショーペンハウアも言っていたんじゃないか、自分で考えろって。その言葉を考えずに鵜呑みして、人に押し付けるお前だってそうだ。なにもその言葉を理解しちゃいないじゃないか。
...いいか、よく聞けよ。お前はそうやって適当な言葉を組み合わせては世界の全てを知った風に語るが、お前はその世界のなんの役にも立っちゃいない。お前みたいに首が後ろ前逆についていない、前を向いて懸命に進める人が真に生きる人なんだ。そうだ、そうに違いない。厭世なんて、なんの役にも立ちやしない。よくお前が偉そうに語っている古い本に聞いてみるといい。原始なら殺されてる非力で後ろ向きなお前を、今生かしているトマスペインだの、ラファイエットだのは振り返ってうじうじしていなかったはずだ。いい加減気付くといい、お前の中には功名心だったり、私利私欲だったりがこびりついてしまっている。それを口先ではまるでないように取り立てて格好をつけて...手に入らないからそれを醜いもののように決めつけてしまっているわけだ。狐と葡萄の話にそっくりじゃないか?これがお前なんだよ、真理を知ったかぶっていても、こんな初歩的な、動物的な段階を抜け出せていない。...全くどうしようもない、本当にどうしようもないよ、お前は。」
...今日は雲一つない晴天だ。太陽が眩しくて、私はカーテンを閉めた。
変わらない人へ向けて