tumugi
世界には2種類のヒトがいる。
1つ目は人間から生まれ、人に生かされるもの。
2つ目は願いや恐れから成る蟲から生まれ、時に生かされるもの。
だが、それは神ではない。ただのヒトに過ぎない。いや、蟲ケラに過ぎなかった。
人からソレ、願いや恐れが消えたらヒトも自然に意味を失うのだ。
『私、認められたい。せめて普通の、ごく普通の人になりたい』
でも、彼女のその言葉には意味が無い。
それは叶うはずのないコトでしかなかったんだ。
『せっかくお前、人の形してるんだからさ。いいじゃん、人として生きれば』
人でないヒトは要らなかった。
それでも時と人は彼女達を作る。
だから、俺はそう言うしか。
いや、それしか言えなかった。
01
叶恵 なき は人ではなかった。
いや、詳しく言えば人間ではない。
彼女は成績優秀だったが、口数の少ない、所謂ぼっち少女だった。
そういう奴は一般的に、窓側で本でも読んでそうだが彼女は違う。教科書を開いては、じっと見つめてメロンパンをかじっていた。HR中でも授業中でもお構い無しに、ずっとそう。だが、周りはともかく、先生すら彼女を怒らなかった。まるでそこに居ないかのように。無視とかそういうのではない。知らないのだ、彼女がメロンパンを食べていることを。
彼女は当たり前のように居る。確かに存在するのに、誰一人として気付けない。だから彼女は先生に当てられることはほぼないし、途中で居なくなってもほぼ気が付かれない。まぁ、大切なのは『ほぼ』という所だ。
彼女からアピールすることができたら、周りは彼女を捉えるとこができた。大きな音を出したり、肩を叩いたり、そういうようなアピール。
だから俺は、出席確認の時に叶恵が出す、『はい』という大きな張り切った声と、叫び声のような『ここにいますよ』という声しか聞いた事がなかった。
だが、俺は彼女を捉えるとこができた。当たり前のように見えるようになった。初めからそうではなかったと思う。今となっては、それが『当たり前』過ぎて、彼女が俺にとって何だったのかなど分からないが、多分、ここに居る30何人と同じように捉えられてはいなかったのだと思う。
思い返してみると、叶恵とは同じ中学校だったような気がする。名簿で何度か見た事があるような記憶がある。気がするだけかもしれないが。卒業アルバムなど遠に捨てたんだ、中学の思い出など無いに等しい。だから、自分から答えは見つからないし、俺に友達など居ないから、聞くことなど出来るはずがない。聞く勇気などない。そんなちっぽけな人間が俺だった。
02
ままま
tumugi