ディコード

 何が違うのか、違和感があった。その日朝おきて、顔を洗う。自分の顔に対する嫌悪感があった。それはしかし、自分に対しての嫌悪感ではなかった、自分の見慣れた身体と、感覚と、心臓の鼓動、それとは違うモノだとおもった。だから僕は、それが夢だとしっていた。
(ねえ、交換っこしようよ)
 衝撃的な遊びだ、脳を取り換えるだなんて、サイボーグ技術の発達した現代、2xxx年でしか不可能な事だ。
(でも、戻ってこれない事もあるっていったよ)
(でもさ、いいじゃん、学校も退屈だし、家にだって居場所がないでしょう)
それは同意だ、でもそれ以外のところが違う。それ以外のところが違うという事が嫌悪感として現れて。私はそれから、生涯アトピーと付き合う事になる。元の体に戻る事にリスクが生まれたとしったのは、その朝から三日後の事だった。医者はこういう。白い部屋で、何も可も知った風にこういう。
「君たちは、別々の体に脳を入れ替えて、それでリスクが何もないと思わなかったのかい?」
 医者いわく、精神的な症状がでていて、元の体に戻す事によって、精神的にどんな障害が残るかわからないという事だった、それは私にとってはアトピーで、彼女にとっては、鬱的症状だった。
 ほんのあそびのつもりだった、私は誰かの気持ちになったふりをして、私と同じ気持ち、私と全く同じになる事を、人に強要していた。それは世間一般に、ありとあらゆる一般論的に、人はそれを、やさしさと呼ばない、そのことは、少女から大人になって、スーツを着て会社勤めをして初めてわかった。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-01

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