Fate/Zero 改変案 The throne

2019年作品

衛宮切嗣の回想場面から。たしかテレビ版の中ほどの南洋の諸島のエピソードの冒頭場面。アイリスフィールと出会う以前のまだ若い切嗣、尾翼から煙を出して降下してくる航空機を、長距離ライフルで狙っている。切嗣のモノローグ「彼女から今連絡が入った。人命を尊重するために、俺は彼女を今から狙撃する。一人の命よりも大勢の命の方が確実に重い。そのことを俺に教えてくれた女性を、たった今この手で撃ち殺す。運命とは皮肉なものだ。」狙撃する切嗣。航空機の内部が少し映る。妖魔の蜂が乗客全員を食いつくしていて、大半の乗客がミミックに変身している。ライフルで対抗している切嗣の恩師の女性、しかしもう後がない。その時女性とともに航空機が吹き飛ぶ。大爆発。切嗣、海面に落ちる航空機を後目に、ライフルを手に歩いて行く。モノローグの続き「僕は昔彼女に出会ったころ、とてもかよわい子供だった。今と同じような災厄があの島を見舞い、僕はただひとり助かった。僕はいつだってそのころ、己の無力を顧みず、みなの幸せを願っていた。自分の幸せよりもみんなの幸せ。その願いの強さが、己れの無力さを埋めてくれると信じていた。僕は強者になりたかった。絵本で読んだ砂漠の王、そのような者にもし僕がなれるとしたら。皆の幸せを願って皆を守り、この世の永世の平和を誓う。そのような者に憧れた。もし僕がそうなれるとしたら・・・・。」砂が吹き付ける海岸をひとり歩いていく切嗣の遠景。

OPクレジット。「Fate/Zero」のタイトル。

テレビ版の冒頭場面、切嗣が冬木市の古城?に招かれる場面から。城に入って行く切嗣。「お待ちしておりました。こちらです。お待ちかねでございますよ。」使用人が対する。「切嗣!」部屋に通されると、アイリスフィールが椅子から立ち上がって切嗣に駆け寄る。アイリス「私の先生は、私を待たせすぎです。」切嗣「仕方がないよ。仕事だからな。儀式には君は出席するのか?」アイリス「いいえ。召喚の間には私はホムンクルスなので、入れません。」切嗣「そうだな。舞弥と行くことになる。」アイリス「他の家の方は・・・・。」切嗣「それぞれに用意しているだろう。うまく魔導書を暗唱できるといいが。」アイリス「できますとも!切嗣はなんでもできる素晴らしい人なのです。私は切嗣になんでも教えられました。」切嗣「はは。」切嗣モノローグ「自分がそういう血筋であるとは思ったことはなかった。彼女と出会うまでは・・・・・。」場面転換、冒頭の綺礼たちの修道院の場面。ここはテレビ版と同じ。綺礼はこの聖杯戦争戦を裁定者として監視するように言われる。得意げな時臣。彼は聖杯の鍵となる聖杯の座につく者の人身御供を握っているからである。それは彼の妻の葵である。用はこのトーナメント戦に勝てばいいのだ。葵はこのことを知らされておらず、親戚の雁夜はこのことを知っている。そればかりか、時臣の子で雁夜の間桐家に養女に出された桜も、近い将来その人身御供にするべく、蟲で父親の臓硯に飼育に近いことをされている事も知っている。雁夜はそれを止めるべく聖杯戦争に参加すべく蟲を仕込まれたのだった。間桐家は時臣の遠坂家よりも市の実権は握っているが、魔術的には劣る家柄だ。それなので、蟲で魔力を補強するのを常としているのである。臓硯は雁夜に言ったものだった、「蟲が何よりも聖杯のありようには近いのだ。」、と。

さて、召喚の間で切嗣たちは呪文を唱えている。何かそれらしい作法が必要。横にいる舞弥は切嗣の仕事上のパートナーであるが、アイリスの面倒も普通に見るできた女性である。かつて切嗣に命を救われたので、横にいるのだった。切嗣「我々の札はアーサー王のセイバーだ。」舞弥「カード遊びでとは、ふざけた趣向ですね。」切嗣「言うな。誰か考えた者がいるのだ。」その時、一陣の風と光とともに、ホログラムのように騎士姿の女性が眼下から現れる。不審に思う切嗣「女性・・・?アーサー王は男性のはずだが・・・?」目を開けたセイバー、剣を切嗣ののどに突き付けて鋭く言う。「問おう。あなたが、我がマスターか?」切嗣「そうだ。君は円卓の騎士王か?」セイバー「いかにも。そして、あなたの意に従う者。」切嗣「いいだろう。剣をおさめてくれ。」セイバー無言で切嗣と契約をかわす。

切嗣たちと同じく、遠坂家、間桐家、そしてケイネスのアーチボルト家、そして魔術講師であるケイネスの教え子のウェイバー、またまったくの部外者であるシリアルキラーの雨生龍之介にもそれぞれの英霊が召喚される。これらの英霊たちの戦いで勝ち残った者が、伝説の聖杯を手にできるのである。雨生のキャスターがまずタコの妖怪に変じてセイバーに倒されて脱落、その後ケイネスのランサーが脱落し、残ったのは切嗣たちと同じく魔導士の家系の者たちである。ただし、ウェイバーの英霊のライダーは、聖杯戦争の勝敗を重要視せず、セイバーたちを集めて王者の宴を催したりする。彼こそはアレクサンダー大王の英霊である。砂漠を幻視させて一同を煙に巻いたりするのだった。そしてそこでセイバーと出会う遠坂家の英霊のアーチャー、しかしこの時はまだその正体を見せず優男として接し、セイバーに「従者として今あるのは、つらくはないか?」と問いかける。セイバーは「王とは臣民に仕える身の上であるから、マスターである切嗣に従うのも同じこと。」と言う。ライダーは豪快に笑い、「窮屈な王づとめであったのだな、そちは。わしは違うぞ。どこまでも進軍し、どこまでも国家のために戦った。」と言う。宴はアサシンの出現で破られるが、切嗣らはセイバーの言葉に彼女の前世でのことを思うのだった。

やがて戦いは切嗣たちと遠坂家に絞られていく。ライダーは結局ウェイバーを守って戦ったのちに、元いた時空に戻されてしまう。時臣とアーチャーの仕業である。また雁夜も間桐家を背負って蟲で戦おうとしたが、力尽きて教会に逃げ込む。そこには時臣の死体が転がっていた。綺礼が裏切り、時臣を葵のために刺し殺したのである。時臣の死体を見て激しくなじる葵の首を、雁夜は「そんな言葉は聞きたくない」と言って締めてしまう。取り乱した葵に「あなたなんかより、私には時臣が大切なのはわかるでしょう?時臣はいつも私を守ってくれた。あなたはそうじゃなかった。」と言われて逆上したのである。葵を首を絞めて気絶させた雁夜を、綺礼はピストルで撃ち殺す。綺礼「君の気持ちはわかっていたよ。私はそうなれない人間だ。」そして葵を綺礼は修道院の一室に閉じ込めてしまう。葵「出して、出して、ここを開けて。私を時臣や子供たちのところへ返して。」病室の中で次第に気が狂っていく葵、それも綺礼の魔導の力だった。綺礼「あなたはもう、脱落していいんだ。聖杯の座には別の者をつける。あなたはもう自由だ、葵。」と綺礼は薄く笑うのだった。その綺礼に時臣の英霊のアーチャーが寄り添う。アーチャー「君とは気が合いそうだ。君のやり方には感服した。女を傷つけないのは素晴らしい。」綺礼「私に乗り換えるのか?」アーチャー「不服かね?」綺礼はアーチャーの令呪を授かるのだった。

戦いが続くにつれて次第に嫌気がさし、舞弥も失った切嗣は、戦いを放棄することを考えはじめる。セイバーはしかし納得しない。セイバー「戦いをやめるのですか。」切嗣「ああ。舞弥も死んだ。この戦いに意味なんてあるのか?ただ血で血を洗うことを続けた果てに、平和なんて訪れない。」セイバー「勝ち取る平和という意味があります。」切嗣「君はすぐそれだな。教会から破門を宣告されてもいい。フリーランスの仕事も続けられるかどうかわからない。だが今よりはいい。令呪をはずしてくれ。」セイバー「いやです。」切嗣「マスターの命令に従えないのか?」セイバー「命の保証はない、と言っておきます。」切嗣「君も元の時空に戻るといい。俺は君とはもうかかわらない。」セイバーと別れる切嗣。セイバー、仮面のような表情に涙が湧く。セイバー「私はまた・・・マスターを失った・・・・。」セイバーの回想。彼女は実はマスターであるアーサー王に仕える少女だった。尊敬するアーサー王が死に、その影武者として祭り上げられた少女だったのである。王はベールに閉ざされ、彼女の素顔を知る者はほとんどなく、人民のために働く影の王として生きていたのだった。

マスターを失ってまだこの時空にとどまる場合、英霊は「はぐれ英霊」に変化する。それはごくまれなのだが、英霊の力が強い場合と執着心が強い場合はそうなる。雁夜の英霊のバーサーカーもそのひとりで、雁夜が死んだ後もまだこの世界にとどまっていた。セイバーはそれと激しく対決する。しかしそれでは綺礼の英霊のアーチャーを倒すことができない。セイバーはマスターがいなくても、聖杯を手にすることができなくても、戦いを続けようとしていた。それは悪の英霊であると認識した、アーチャーが聖杯を再び手にするのを阻止するためである。戦いを見ていたアーチャーはセイバーに言う。「その英霊は君と因縁があるから、この世界にとどまっている。いわば磁石が引きよせあうようなもの。君はそれをはずすことはできない。元はと言えば、アーサー王が種をまいたことだ。そのバーサーカーは、サー・ランスロットだ。王妃ギネビアの心を動かした者。」セイバー「!なぜ知っている。」アーチャー「我は全にして個、個にして全なるもの。そしてまったき時空を統べる者。この戦いに意味はなかった。君たちを召喚したのは事実上この私なのだ。」アーチャーはそう言い、バーサーカーを打ち倒すと、セイバーを時空の剣の雨で攻撃する。攻撃しながらアーチャーは言う。「君がアーサー王の跡を継いだ後、ギネビアはランスロットに走った。君ではこと足りなかったのだ。そしてそうした彼女を、聖杯について何も知らなかった君は、永世平和のためにあの聖杯の玉座につけようとして失敗した。その失われた聖杯の根を復活させたのが、切嗣の連れていたホムンクルスだ。」セイバー「貴様は、アイリスフィールを!」アーチャー「ああ、再び玉座にあげる。再びすべての個は全になる。このギルガメシュである我が手によって。」セイバー「そんなことはさせない!」アーチャー「君をあの孤独と苦痛から拾い上げて、再び戦いの女神に仕立て上げたのはこの私なのだ。礼を言ってもらいたいね。君はなかなかいい働きをしたから、わが傍に置くことを特別に許そう。わが物になるがいい。」セイバーは抵抗するが、アーチャーの作る光の渦に巻き込まれる。セイバーはつかみあげられながら叫ぶ。「切嗣!」

歩いている切嗣。何かを感じて後ろを振り向く。はっとなる。町の方が黒雲に覆われていて、時空のゆがみが生じている。雷鳴もとどろいている。駆け出す切嗣。町の様子がおかしい。ミミックになっている市民がいる。ピストルで撃つ切嗣。切嗣「自分のことだけ考えていたからか!」己れへの叱咤を吐きだす。そのころ、玉座につながれているアイリスフィール。「切嗣、来て」とテレパシーで念じる。それを影で見ている綺礼。綺礼「それでいい。影のいけにえに影の王。すべては私にふさわしい。」葵でなくアイリスフィールがその座につけられたことで、綺礼は満足していた。実は時臣は切嗣たちがデキゲームで影贄となって聖杯を継ぐことを知らず、教会から排除されていたのである。綺礼はこのことに気づいて教会に近づき、時臣を殺害しても不問に付すと教会から言われて時臣を殺害したのだった。綺礼の思惑どおりに彼はアイリスフィールを手にできて、偽王の到来を待つばかりだった。捨てられた車を乗り継いだりして冬木市中心部まで来た切嗣も、やがてアイリスフィールの作った亜空間に飲み込まれる。霧の中で幻影のアイリスフィールが楽しそうに笑って、切嗣をいざなう。アイリス「切嗣、こっち。こっち。」切嗣「アイリス。」アイリス切嗣に抱き着いてもたれかかる。アイリス「ずっとここにいましょう・・・・、ここは安全だわ。」切嗣とは別の空間にいるセイバー。セイバー「ここは・・・・。どこだ・・・。」懐かしいセイバーの故郷の田舎の家。戦争で死んだ父と母と、そして庶民の姿のアーサーがいる。思わず笑みがこぼれるセイバー。幼い子供に戻っている。セイバー「ずっとここにいていいの?」年若いアーサー「そうとも。セイバーはよく戦ったのだから、ずっとここにいようね。」セイバー「うんっ!」頭をなぜられて、目を細めるセイバー。アーチャーの作った亜空間だった。夜、ほのかな灯りの灯るベッドで絵本をセイバーに読み聞かせるアーサー。「そして、王様と王女様は永遠に幸せに暮らしました。めでたし、めでたし。よかったね。」セイバー「わたち、王女様がいい。」アーサー「そうだね、セイバーは王女様だねぇ。」セイバー「うんっ。」その時アーサーの頭が、切嗣によって撃ち抜かれる。アーサーはみるみるうちに、ギネビアに変化してから、アイリスフィールに変わる。死体となって転がるアイリスフィール。死に際に両目から涙をこぼしながら言う。「なぜ?私はみんなの幸せを願ったのに・・・。」切嗣「そいつは幸せなんかじゃない。」切嗣はそう言い、亜空間に銃弾を見舞う。空間が壊され、みるみるうちに周囲が押し寄せてきているミミックたちの地獄絵図と化す。セイバーも元の姿にもどっている。

切嗣とセイバーのいる周囲は、ミミックたちの集団の中心である。アーチャー「もう壊れたか。残念だ、余興の時間はもう少しほしかったのだが。」切嗣「おまえがやっていたのか。」アーチャー「そうだ。おまえたちのいた空間は王の空間だ。この空間の維持が、神に与えられた聖杯の正体なのだ。私はその番人にすぎぬ。永世の平和とはそうしたものだ。」アーチャーの言うとおり、聖杯は人間をミミックに変えてエネルギーをその杯からくみ出す宇宙装置だった。座に操縦者のいけにえがつくことで、自動的にスイッチがセットされるのである。操縦者の営巣本能である周囲の空間維持への思念が、装置に活力をもたらし、人のエネルギーを吸いあげるのである。憤るセイバー「ざれごとを・・・。」アーチャー「この世に永世の平和などない。なぜそれを貴様らは素直に認めない?おまえたちの考えるものは、砂上の楼閣だ。砂漠の蜃気楼だ。この世にはありえないものを夢想している。だったら、素直に自分の好きな欲望の夢の中に埋没すればいい。私の人生はそうしたものだった。そしてそんな時に私は聖杯と出会った。」セイバー「惰弱におぼれるなど・・・・!」アーチャー「ほう、恥と思ったか?そうした女性を暴くのもまた一興。」切嗣、アーチャーの額を狙って撃つが、銃弾を跳ね返される。アーチャー「余興は終わりだ。私は帰る。おまえたちも戻るがいい。次の聖杯戦争まで、私はまた眠りにつく。聖杯はまた人々の気で満たされた。よい。すべてはこれでよい。」アーチャーはセイバーたちを捨てて天に昇っていく。セイバー決死の覚悟「切嗣、私がやる。」セイバー気をためて、アーチャーにものすごい勢いで剣で体当たりして突き刺す。串刺しにされるアーチャー「なにっ?」セイバーに不思議な力が宿っている。セイバー止まった絵で「確かに・・・・永世の平和などありえないかもしれない・・・・。しかしそれを夢見ることは・・・・いつかそうなると信じることは・・・無駄ではないはず・・・・。」アーチャー静かに笑って「・・・・・君が・・・我が妻であればよかった・・・・。」ぼろぼろと崩れていく。空間が一気に崩壊していく。そしてセイバーの姿も、切嗣の目の前から消えていく。

崩壊した冬木市。綺礼たちもぼろぼろになって地に立っている。大災害が起こったのだ。しかし人々はミミックの姿から解放されている。セイバーがアーチャーと本体とのリンクを絶ったからだ。切嗣はがれきの中から、赤子を拾い上げる。士郎ということになるだろうか。切嗣ラストのセリフ「舞弥、アイリスフィールの代わりに育てるよ。」彼方から光が差す。そしてED。

Fate/Zero 改変案 The throne

Fate/Zeroで書いてみました。自己満足的な部分が多いです。元の話とだいぶ後半が違います。好みがわかれる作品だと思います。テレビシリーズの話も好きだったです。先日Stay nightsの映画版第一作を見まして、でもこれはまだ続いているので、自分にわかるZeroで書いてみました。ナウシカ原作の影響もあると思います。

Fate/Zero 改変案 The throne

【完結作品】Fate/Zeroの改変案です。テレビシリーズのものです。後半少し変えてあります。セリフごちゃまぜで読みにくいと思います。

  • 小説
  • 短編
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-01-29

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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