三次元の旅人。

ふらりふらり、スペースコロニー、揺れる肉体を空間に検知した。月衛星軌道上のコロニーだ。
人間がその地に立ち、はや数世紀が立っていた。しかし、浮遊体は自分の心と記憶を取り戻せない、どこか、いびつな、どこか、正常な部分がある、その符合する点を集めては、やはり違うと首をかしげる、浮遊体は死体だった。死体は生きながら死んでいた、昨日もそこに死体はあり、今日もそこに死体はある。ふらりふらり、揺れている、たった一つ思い出せた事はあった。それは自分の所属する肉体の部位である。人間だけが自我を持つわけではない。その死体をまさぐり、その位置を見つける者が現れるのを、死体の中のチップはしっている、彼の所在は現在左手首である。生体を検出するための、国により定められた識別番号がともに存在する、かつて生きていたしたいの所属する国はアジアの小国だ。死体がやがて生き返り、そして機械の部分を手に入れて長寿を得る事を、死体のチップはすでにしっている、そして諦めている、そこに時間は存在しない、ただチップは、その生体が滅び、また生れ変る時を待った。

三次元の旅人。

三次元の旅人。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-01-29

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