夜と蛍石
確かそれは、ある夏のはじめのことでした。
日も落ちて、空の色が東からだんだんと暗く変わってゆく時、辺りには青い草の匂いが濃く満ちていました。
昼間に降った雨のおかげで、辺りの空気はうっすらと湿っていて、暑さも少し静まったようです。足元からは、ころころとカエルの鳴くのが聞こえていました。
私はその夜、どこか星でも見に行こうと、田んぼの近くの田舎道を、一人で歩いていたのです。
しばらく歩くと、空はさらに重たい色になってきて、辺りはいっそう暗くなりました。空に雲は出ておらず、月はすっかり痩せて、辺りを照らすものはありませんでした。
私は、持っていた小さな懐中電灯をぱちんとつけました。足元には、黄色い丸に照らされた地面が、ぼうっとうかびます。
目的地を決めていなかったので、しばらくの間、そうして田んぼの間の道をふらふらと歩くことになりましたが、夕闇の散歩も楽しいものでした。
そうして空に少しずつ星がでてきた頃です。私は、道の先に何か生き物がいるのを見つけました。
それは、タヌキやイタチに比べては大きい影でした。
(あれは犬だろうか。それにしては、どこかおかしいな)
私はちょっと離れた所で立ち止まって、そう考えました。けれど、どこがおかしいのか、いまいちはっきりと分からないのです。それで、もう少し近くのほうで見てみようと、こっそり近寄ってみることにしました。
近づいてみると、なるほどおかしいわけが分かってきました。四つ足の動物のような形をしたそれは、夜の暗闇の中で、ぼんやりと青く光っているようなのです。
光っているだけではありません。見た目もどうもちぐはぐでした。大きさは中型犬くらいでしたが、顔は犬というよりも、熊みたいに丸っこく、手足や胴はずんぐりと短くて、どうも不細工なのです。
私は、どこか熊の子どもにも似ているな、と思いました。けれどそれにしても、猫みたいに長い尻尾があるのは不自然です。それに、そもそも青く光る動物だなんて、聞いたこともありません。
私は、驚かせてはいけないと思い、懐中電灯は向けずにいましたが、子ぐま――その生き物が何なのかは分かりませんでしたが、私はひとまずこう呼ぶことにしました――は、丸くてまっ黒な目で、何か探し物でもしているように、辺りをきょろきょろと見回していました。
子ぐまはしばらくの間そうしていて、私がいることにも気づかないようでした。私は、子ぐまの仕草がなんだかとても可愛らしくなって、怪しいのも忘れて、つい
「やあ」
と声をかけました。
すると子ぐまは背中をびくっとさせ、瞬間、一メートルほど後ろに跳びはねました。
それに私も驚いてしまって、思わず声をあげてしまいましたが、子ぐまはその場から、それ以上逃げる様子はありません。
子ぐまは、青く光る毛の中のまっ黒の目で、私のことをじっと見ていました。怯えているのか、警戒しているのか、それとも怒っているのか、分かりませんでした。
私は、驚かせてしまって申し訳ないことをした、と思うと同時に、どうして逃げ去らないのだろう、と不思議になりました。そこで、周りにほかに人がいないのを見てから、半分は独り言のつもりで、こう尋ねたのです。
「子ぐまくん、君は迷子かい」
子ぐまは黙ったままで、首をこくりと動かしました。私は、おや、と思いました。その子ぐまの動きが、どうも私の質問に対して、頷いたように見えたのです。私は少し考えて、いや、きっと気のせいだ、と思いました。
けれども、私はだんだんと好奇心がわいてきて、まだ逃げるそぶりのない子ぐまに、今度はこう言いました。
「なあ、君は私の言っていることが分かるのかい」
子ぐまはまた頷きます。今度は確かに気のせいではなく、はっきりと首を縦に振りました。どうやら本当に、私の言葉が分かっているようでした。
「君は熊の子かい? ずいぶん変わった姿をしているね。近くで見ると、まるで星雲か天の川みたいで、とても綺麗だ」
私がそう話しかけると、子ぐまは今度は口を開いて
「ええ、ありがとうございます。いつもは空に住んでいるものですから」
なんて喋ったので、私はまた驚いて、一瞬、口をぽかんとして何も言えずにいました。すると子ぐまは近寄って、私の方を心配そうに見つめてきました。
「あのう、人間さん、大丈夫ですか」
私は、目の前でそう言う子ぐまを見ながら、今晩はなんておかしな夜なんだろう、と思いました。
現実というにはあまりにおかしなことばかりでしたが、それにしても、夢の中というには、現実みたいにはっきりとしているのです。けれども、こんなにおかしなことにそれほど驚かないのでは、夢の中に違いない、とも思うのでした。
けれども私は、ひとまずここは楽しんでみよう、と考えました。なんたって、もしこれが夢の中であったとしても、こんなに面白い話は初めてでしたから。
私は、わざと独り言のようにして、こう言いました。
「どうもおかしな夢だなあ。喋って光る子ぐまなんて初めてだよ」
「驚かせてしまったのなら、ごめんなさい。人間さんが親切なお方に見えたので、つい、話しかけても大丈夫だろうと思ってしまったのです」
子ぐまの話し方は、どうも見た目に似合わない、丁寧なものでした。私は少し気をよくして言いました。
「空から来たっていうのは、本当のことなのかい」
「ええ、普段なら、ずっと空に浮かんだままでいられるのですが……」
子ぐまはそこで口ごもって、それから、なんともきまり悪そうに言いました。
「どうやら落ちた時に、星を一つ無くしてしまったみたいで、そのためにまた浮かぶことができなくなってしまったのです。それで、親切な人間さんにひとつお願いがあるのですが、どうか僕の星を一緒に探してはくれないでしょうか。もちろん、お礼はいたしますとも。星がないと、空へ帰れないのです」
「ああ、構わないよ」
私は子ぐまを気の毒に思って、迷わずそう答えました。
子ぐまは安心したようで、ほっと息をついて、ありがとうございます、と頭を下げました。
私は、育ちのいい熊なんて初めてだ、と思って、くすっと笑ってしまいました。
私は子ぐまの話を聞きながら、この生き物を、どこかで見たことがあるようだと考えていました。
「それで、君が落としたのはどんな星なんだい」
私がそう聞くと、子ぐまは言いました。
「ポラリス星っていうんです」
「ひょっとして、ポラリスというと、北極星のことかい」
私は驚きました。子ぐまは頷いて、話を続けます。
「ええ、そうとも呼びます。真っ白なやつで、僕のしっぽの先についていたのです。大ぐまの柄杓星やカシオペヤに比べれば、あまり明るくはないのですけれど。落ちる瞬間、真下に落ちていくのを見ましたから、きっとこの近くにあると思うのです」
私はそれでひとつ合点がいきました。
ポラリス――北極星のことを、こう呼ぶことがあるのですが――は、長いしっぽを持つ子ぐま座の、ちょうどそのしっぽの先のあたりにくるのです。それで私は、この子ぐまは確かに、夜空にいた子ぐま座らしい、と考えたのでした。
「それなら、空の上じゃあ君がいなくなって大変なんじゃないのかい。早く星を見つけたほうがいいね」
私がそう言うと、子ぐまは笑って答えました。
「ありがとうございます。人間さんはなんて優しいんでしょう」
そうして、私と子ぐまは並んで歩きだしました。
子ぐまは長いしっぽを立てて、地面の匂いをかぎながら歩いています。私は、なんだか犬でも散歩しているみたいだ、と思いました。
私は、ふと気になったことを訊ねてみました。
「子ぐまくん、君は何だって、空の上から落っこちてしまったんだい」
子ぐまは歩きながら、少し首をひねって考えて、それからこう言いました。
「なんとも恥ずかしいお話なのですが……。地面のほうで、何かぴかぴか光っているのが見えたんです」
子ぐまは、ここに来るまでのことを話し始めました。彼の話によると、その光は、毎日夜になると見えていたというのです。
子ぐまは、それが何なのか気になって仕方がなかったのですが、他の星座――大ぐまやカシオペヤには、笑われてしまいました。皆は、あれもただの星だと言うのです。けれど、子ぐまにはそうは思えませんでした。その光は、彼らの周りにあったどんな星とも違って、ちかちかと、不思議な光り方をしていたからです。
それで、もっとよく見てみようと下を見ようとしたところ、バランスを崩して、ポラリス星が落っこちてしまったらしいのです。星を無くして浮かべなくなってしまった子ぐまは、そのまま真下に落ちてしまった、ということでした。
「――けれども落ちたところには、光るものは何もないじゃあありませんか。僕はそれで、星を無くしてしまったのもあって、重ねて悲しくなっていたんです」
子ぐまは、本当に悲しそうに言いました。
「人間さん、どうかこの辺りに、星以外に光るものをご存知ありませんか。それが何なのか、一目見てみたいのです」
今度は私が首をひねりました。というのも、子ぐまのいた場所から見える景色というのが分からないので、さっぱり想像がつかないのです。
もしかしたら、町の明かりのことかもしれない、と考えて、私は口をつぐみました。もしそうだとしても、ここは町からずいぶんと離れているので、子ぐまに見せてやるには無理そうだと思ったのです。
そうしてしばらく考え込んでから、私はひとつ思いついて言いました。
「君たちのいる場所から見えたものかは分からないけれど、いいものを見せてあげようか」
「本当ですか」
子ぐまの表情は、ぱっと嬉しそうになりました。
私は歩くルートを変えて、少し山の近くのほうへ行くことにしました。
ある道へ出ると、そこは林のすぐそばで、ガードレールの向こうは茂みばかりのように見えました。けれどもその中には、細いけれども水の澄んだ、小さな川が流れているのです。
この辺りが良いだろう、という所まで歩いてきて、私は懐中電灯の明かりを消しました。すると、目が明るさに慣れていたからでしょう、辺りはぱっと、真っ暗闇に包まれました。近くに外灯はなく、私の目には、足下で子ぐまの体が青く光るのだけが見えていました。
やがて少し経つと、私の目は暗闇に慣れてきて、周りの景色がぼんやりと見えてきました。
それが見えた瞬間、子ぐまにも同じものが見えたようで、隣から
「あっ」
という、小さな声が聞こえました。
それは、川の上を飛び回る、小さなたくさんの光でした。淡く黄色いその灯りは、ゆるやかに点滅しながら、あちこちをふらふらとさ迷うように、細い線を描いています。
暖かいようにも冷たいようにも感じられる、その不思議な光は、絶えず動き回っていて、水面をうっすらと照らしています。それはまるで、川を泳ぐ魚たちや、光るくらげのようにも見えました。
子ぐまは、その景色にすっかり心をうばわれたようで、しばらく何も言いませんでした。それから、どうにか聞き取れるくらいの小さな声で、ささやくように尋ねました。
「あの光は、何ですか」
「あれはホタルだよ」
私がそう言うと、子ぐまはまた黙りこんでしまいました。
「初めて見たかい」
そう聞くと、少し間をおいてから、子ぐまが答えました。
「ええ。僕が見た光とは違いますが、まるで生きているみたいな、不思議な光ですね」
子ぐまの顔は暗くて見えませんでしたが、その声がうっとりとしていたのが、なんだか微笑ましくなって言いました。
「あれはね、一つひとつが生きているんだよ。きっとホタルの一匹一匹が、君たちみたいに、体の中に星をもっているようなものだろうね」
子ぐまは感心した様子で、ひとつため息を吐きました。
私はガードレールをひょいと越えて、草の茂みを川のほうへ降りてゆきました。雨が降ったせいで、辺りの草は水滴で濡れていて、ひざの下が濡れましたが、構いませんでした。
私は靴が水に浸からない、川のふちぎりぎりの所まで行きました。ホタルは変わらず、自分の周りを囲うようにふらふらと飛んでいます。
私は、両手をお椀のような形にして、その一つに狙いを定めました。そうしてホタルが飛んできた所へ、すばやく手を近づけ、それをぱくんと閉じると、小さな明かりは手の中へとおさまりました。
私はそのまま、また草をかきわけて、道へ戻って行きました。子ぐまは聞きました。
「いったい、何をしたんですか」
「この中を覗いてごらん」
そう言って手を差し出すと、子ぐまは寄ってきて、顔を近づかせました。私が親指をそっとずらして隙間を作ると、子ぐまは小さく歓声をあげました。
「どうだい」
「なんて小さな生き物なんでしょう」
子ぐまは覗き込んだままそう言って、その一匹のホタルに、しばらく心をうばわれたようにしていました。
それからゆっくり顔を上げると、彼は丁寧にお礼を言いました。
「素敵なものを見せてくださって、ありがとうございます」
「思い出にでもなってくれたなら、嬉しいよ」
私と子ぐまは嬉しくなって、お互いに笑いました。
私は川に戻って、捕まえたホタルをそっと帰しました。ホタルはふらふらと飛んでいって、また他の光と見分けがつかなくなりました。
そうして道に戻ろうとした時、川の少し下流のほうに、ひときわ白く輝く、不思議な光がひとつ見えました。
「何か光っているよ。あれは何だろうね」
私がつぶやくと、子ぐまはあっと声をあげました。
「あの光は、僕のポラリス星によく似ています。もしかしたら……」
子ぐまはそう言って、ガードレールを越えてこちら側へ来ようとしてきたので、私は子ぐまを止めました。
「君の短い足じゃあ、きっと危ないだろう。私が代わりに取って来るから、そこで待っていなよ」
子ぐまは少し困った顔をしたけれど、すぐに、ありがとうございます、と頭を下げました。靴を脱いで川の中を進むと、冷たい水が、それほど速くない流れで私の足を包みました。
幸いそれは、川のあまり浅くないところに沈んでいました。手にとってみると、三センチくらいの小石のようで、手に握っていても光っているのが分かるほど、眩しいものです。表面は、川の水と同じくらいに冷えていましたが、少し握っていると、すぐに人肌と同じくらいの温度になりました。
私は靴と小石を持つと、裸足で草を踏むのも気にせず、急いで道へ戻りました。そして光る小石を子ぐまに見せると、子ぐまはぱっと目を見開いて、それから、興奮した様子で叫びました。
「ああ、これは確かに僕のポラリス星です! ありがとうございます、人間さん!」
そう言って、子ぐまが嬉しそうに飛び跳ねるのを見て、私も嬉しくなって笑いました。それから、わざと真面目っぽく、冗談めかして子ぐまにこう言いました。
「じゃあこれを、子ぐま君のしっぽへお返しするとしよう」
「はい」
子ぐまは、少し照れくさそうに咳ばらいして、私の手のひらの小石を、しっぽで受け取りました。小石は、子ぐまの尾に包まれたと思うと、その先っぽに、すいと入り込みました。
その星は、しっぽに入った瞬間小さくなったように見えましたが、それでも、子ぐまの中で光るどの星よりも明るくて、まるでずっと前からそこへあったみたいに、しっぽの中で静かに燃えていました。
「とても綺麗だ。やっぱり、その星は君のものだね」
そう言うと、子ぐまは嬉しそうにはにかみました。
「ありがとうございます。人間さんのおかげです」
それから子ぐまは、思い出したように言いました。
「ああそうだ、約束の通り、お礼をしなきゃなりませんね」
「お礼なんて、そんなの構わないよ」
私はそう言いましたが、子ぐまはそれでも首を横にふりました。
「そんなわけにもいきません。このまま空に帰ったら、僕のほうが他の星座たちに怒られてしまいますから。ほらどうぞ、これを受け取ってください」
私は仕方なく、子ぐまのほうに手を差しだしました。子ぐまは長いしっぽで、耳の後ろの辺りをさぐると、そこから何か小さなものを取り出して、私の手のひらに置きました。
それは小石のようでしたが、さっきのポラリスとはずいぶん違った見た目をしていました。ポラリスよりもいくらか小さくて、私の手の上で、ぼんやりと淡く青色に光っているのです。触った感じは、ポラリス星とよく似ていましたが、握ってみても温かくはならずに、ひんやりと冷たい温度を保っていました。
懐中電灯で照らしてみると、それはまるで川の水のようにうすい青緑色の、半透明のガラスのように見えました。
それは、いつかどこかで見た、青く澄んだ色の蛍石を思い出させました。私はしばらくの間、その小石にじっと見とれてしまいました。
「すべすべして、とても綺麗だ。こんな素敵なもの、もらってしまっていいのかい」
「それは僕の中の、いちばん暗い星です。こんなもので申し訳ないのですが、人間さんに差し上げます」
「ありがとう。大事にするよ」
そうお礼を言うと、子ぐまはとても嬉しそうに、にっこりと笑いました。それから、名残惜しそうに言いました。
「僕はそろそろ行かなくちゃなりません。人間さん、本当にありがとうございました」
「うん。星座仲間に、よろしく頼むよ」
私がそう言って握手しようと、星を持っていないほうの左手を差し出すと、子ぐまはしっぽで応えました。それを握ったところで、私は驚きました。それというのも、子ぐまのしっぽが、ずいぶんと熱かったからです。
「君、前からこんなに熱かったのかい」
「無くした星を見つけて、僕の全身の星が、空に帰ろうとしてるんです。ほら、空で光っている星は、皆燃えているでしょう。さっきまでの僕の星は、みんな眠っていただけなのです」
そう話しているうちに、子ぐまの体は、少しずつ地面から浮いてきてしまっていました。
子ぐまも私も名残惜しく、手としっぽをつないでいましたが、それももう保てないくらいに、子ぐまは空へ帰って行きます。最後にしっぽが手を離れた時、私は言いました。
「子ぐまくん、私は君に会えてよかったよ」
「ええ、僕もです。またいつか会えたら……」
そこから先は、もう聞こえませんでした。ただ、子ぐまが最後まで嬉しそうな顔をしていたのだけが、目にやきついていました。
ふと気がつくと、私はもとの道に立っていました。子ぐまと出会った、あの田舎道です。
ついさっき子ぐまが帰っていったのが、夢なのかどうか、私には分かりませんでした。ただ右手には、淡く青色に光る、小さな星が握られていました。
私は家に帰ると、子ぐまからもらった星を、手のひらほどの小さな箱に入れて、それを大事に引き出しに仕舞いました。その後もそれを時々取り出しては眺めて、あの夜のことを思い出すのでした。何度覗いても、あの綺麗な星の色は、褪せることがありませんでした。
そのまましばらくは覚えていたのですが、何年か経つと、星のことをすっかり忘れてしまいました。
けれどもあるとき、ふっとあの夜のことを思い出して、また眺めてみようと考えつきました。けれども、子ぐまの星の入った箱は、いくら探しても、もう見つかりませんでした。
私はその時、もしかすると、夜空がこいしくなった星が、子ぐまのもとへ帰ったのかもしれない、と思いました。けれども、あの不思議な星が本当にあったのかさえ、もう分からないのです。
けれど私は、あの礼儀正しい子ぐまのことは、決して幻や思い違いだとは思えないのでした。
今でも晴れた夜には、小さく真っ白なポラリス星が、堂々と北に輝いているのが見えるのです。
おしまい
夜と蛍石