歌のおはなし
この声はどこからするのだろう。
四角い窓から見える景色は、私の中へ入り込んでゆく。
すべてはいつの日か闇に帰すのだろうか。
闇はいつもそこにあって、いつも暖かい。
なぜだろう、怖かった。
暖かい永久の時間が、何か得体のしれぬ生きもののよう。
昨日の晩のことです。
私はふと自分の歌を聴きました。
その歌は、幼い時に野原で聴いたような、
星空のもとで聴いたような、
私は私でないような、それでいて、すべてである様な、
暖かく湿った歌なのです。
何オクターブもの空間が、
私を宙へ浮かばせて、私は水の膜につつまれる。
いくつもの指たちが、
私を優しく撫でさする。
私の声。
私の歌。
私は私につつまれる。
私はここにいたい。
そうして夢から覚めるのです。
小鳥の声と、陽の暖かさと、土の香りのなかで、
私は一人、世界と挨拶を交わすのだ。
浮かんだ光の先に聞こえるは、
私の歌。
歌のおはなし