ある失恋の話
翻せば執着とも呼ぶ
言語化不能の圧倒的な断裂をもって彼女との交際は破綻したと言ってもいい。
僕は喪失を覚えてやっと、彼女のことが憎らしかったのだと気付いた。
自分勝手に振舞い無邪気を装う無知で愚鈍な女を教育することにある程度の優越感を抱いていたとしても、彼女が被教育者としての実感を持っていなかったとすればその試みは果たして上手くいくものではなかったのだ。
羞恥に無頓着でいられることだけを武器に彼女は僕を苦しめ、殺害しようと試みた。僕の精神はそれによってずたずたに引き裂かれ、酷い傷を負う羽目になった。
こうした論理を愚鈍な彼女は理解出来ないのだ。認識の外にある現象は存在しないのと同義である。彼女はその愚かさ故に自分の罪を認知せず、ありもしない他人の罪を誤認した。
彼女が存在しない因果関係によって僕を断罪し、風化しない障害として定義しているのも全てはその知能の低さによるものだ。
彼女の対人スキルには著しい欠陥があり、常に自分を被害者という最優位に置こうとする歪みがある。
ああ、僕は君が憎らしい。叶うならば君を忘れたい。
ある失恋の話