鬱屈と残夢
鉄格子の隙間から絶えず注ぐ月光がわたしを眠りから引き剥がす。
すっかり傷んだ身体をコンクリートからゆっくり起こすとどうやら今日は十五夜だったらしい。
眠から目覚めたわたしは、すっかり寝ぼけてあの家にあったレースのカーテンをひこうとして、はっとする。
月は依然として黄色なままだった。
あの悪趣味なステンドグラスにそまる赤や青の月は、もうない。
枕元に置いてある白湯はもうすっかり冷めてしまった。
湯のみに月が浮かぶ。すくい上げることの出来ない月が。
嗚呼、この月が毒だったらいいのに。ぬるんだ白湯を吹いても月は消えない。
それどころか脳裏に焼きついたわたしの忌々しい記憶を呼び戻すようでいたたまれない。
鉄格子は動じることなくすんとそこに居座っていて、眩しいほどの月光は悪気がなさそうに、どこかツンとした様子で、壁を縞模様に照らしあげている。
白湯を口に運ぶ。
毒なんて入っていない。
どうやらわたしはまだまだ死ねないらしい。
鬱屈と残夢