山門
果てしなき雲、
水平線の上で、舞い上がる。
じっちゃんの口癖を、
思い出す。
深き森の彼方から、
近付く者。
青白く濡れているアスファルト。
唸り声が、我が家を突き抜け、
登る太陽の光の残骸。
背を縮めた耳鳴りを
誰も理解出来ない。
こぼれ落ちる泉は、
山門の石段を削り落とし、
再びここで、君が見上げていた夏の雲を
思い出す。
動物園から、叫び声が、
僕の記憶の線を切り刻む。
金色の銅像が留めた時間が
僕の記憶のシミを焼き尽くす。
忘れないで。
あの日の道順を。
仁王門の上から見つめている過去が、
疎水の辿り着く場所で君を待っている。
山門